「死者の声を拾って事件性があるかどうか判断するのが使命」 静岡県警の検視官に密着! 

 およそ4800人。2024年1年間で静岡県警が調べた死因などがわからない遺体の数です。なぜ命を落としたのか? その理由を調べる静岡県警・捜査一課の検視官に密着しました。

●静岡県警捜査一課 本田洋一郎検視官(46):
「刑事部捜査第1課検視官の警部・本田洋一郎といいます」

 2025年4月から検視官になった本田(ほんだ)さん。県警に9人いる検視官で一番の若手です。

● 捜査一課・綾部巧也検視係長(43):
「本当に多い時は(移動が)700キロとかになるときもありますね」

 警部補の綾部巧也さんは検視係4年目。検視官を運転や現場で支えます。夏でもこの装備。車には火災での遺体も想定した一酸化炭素を測る機材、遠心分離機、薬物検査の機材などが積み込まれています。撮影を始めておよそ20分。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
「富士警察署管内に向かっています。自宅で亡くなっている方が発見されたという事なので、あとは伊東署管内とか、熱海署管内ですね」

 実は県内の変死体の数は増加傾向にあります。2024年は10年前よりおよそ750体増えました。一方、検視官の体制は変わらず一人当たりの負担も増しています。

● 捜査一課・綾部巧也 検視係長(43):
「ご自宅で、女性が亡くなられていたという状態です」「今ちょっと何件か、他の別件が入ってきておりますので」

川﨑豊記者:
「次の事案が入りました。富士の事案が終わった後にさらに次の事案に向かいます、早えぇ」

 取材からおよそ4時間。車は熱海市内へ。

● 捜査一課・本田洋一郎 検視官(46)(電話):
「とりあえず今移動中の中で追加で3件入ってますんで。えーと三島、清水、沼津ですかね」

 これで5件の遺体が見つかりました

 そもそも検視とは何なのか。捜査一課の植松さんは検視の仕事を5年務めてきました。

●捜査一課 植松真樹 次席:
「検視官っていうのは、まず現場に臨場して、一つ一つのご遺体を見ながら、その遺体が犯罪が起因するかどうか、これを確認するのが一番の大きな目的です」

 検視は病院で医師に病死と判断されるもの以外、屋外での死亡や自宅で一人で亡くなった際も行われます。

● 捜査一課 植松真樹 次席:
「ご遺体はしゃべる事ができませんので、そのご遺体の様子から、いかに私らが死者を声を拾って、事件性があるかどうか判断するといったところが、やはり私たちに課せられた使命だと思います」

 大勢の観光客が訪れる熱海。男性はひっそりと亡くなっていました。

● 捜査一課・本田洋一郎 検視官(46)(電話):
「年齢層は高め。今の所は事件性はないのではないかと」

 この日は各地で30℃を超える真夏日に。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
Q三島はどんな感じですか?
「三島は…ご自宅ですね、ご自宅で倒れられている」「暑さが直接関係しているかはわからないが、体にはだいぶ負担がかかってくるのかなと」

 変死体の数は、6月や10月は少なく、真夏の7・8月や真冬の12月・1月が多い傾向があります。この日は事案の少ない6月でしたが…

●捜査一課 原田英明 検視統括係長:
「今東部が6件、西部が7件取扱いがあります」「今日は比較的多い印象を受けます」

 東部を担当した2人の移動距離はすでに200キロを超えていました。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
「とりあえず清水が終わったんですけど」「あと裾野が入りまして」

さらに1人の遺体が見つかりました。本田さんは車を降りる暇もありません。

● 捜査一課・綾部巧也検視係長(43):
 Q昼ご飯は?
「昼ごはんはまだ食べてないんですけど、はい」

 取材班はここで交代

●白鳥衛記者:
「出発からおよそ12時間が経過しました。次は自宅で亡くなっている方がいるということで、静岡市清水区から裾野署管内へ向かいます」

 ここで予期しない出来事が。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
「ちょっと次の裾野の現場が、若干ちょっと手間取るというか時間かかりそうな感じなもんですから」

 合流できたのは2時間ほどたってからでした。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
「お医者さんの意見を聞いた上で先生の協力のもと検査を行って、事件性がないだろうと」

 事件性の判断を迅速にするため、医師に来てもらうこともあるのです。

●捜査一課・本田洋一郎 検視官(46):
Q何分ぐらい休憩取りました?
「10分ぐらいですかね」

 日付が変わってから新たな変死体発見の連絡はありませんでした。今回2人が担当した検視は最終的に9件。事件性が疑われるものはなかったものの移動距離はおよそ360キロに及びました。

● 捜査一課 綾部巧也 検視係長(43):
「私らが最後の砦だと思っていますのでその点やりがいを感じてやっています」

● 捜査一課 本田洋一郎 検視官(46):
「目的を考えれば、つらいのは当たり前ですので、今後も犯罪事件死を逃すことがないように、職務にあたっていけたらと思います」

「死者の声を拾って事件性があるかどうか判断するのが使命」 静岡県警の検視官に密着!