異なる業種からの転職運転手たちがバス業会を支え市民の足を守る

地域住民の足として各地を走る路線バス。全国で運転手が不足する中、浜松市の会社の採用事情を取材しました。
ここは浜松市に本社を置く遠州鉄道が運営している遠鉄バスの研修センター。
遠州鉄道運輸事業部 石川真顧問
「(事故の際)自転車の動きをしっかり確認できていませんでしたね。ということで動静不注視の責任を取られて、けがの程度と合わせて刑事責任を負いますよ」
行われていたのは、バスの運転手を対象とした交通安全に関する研修です。
参加していたのはベテラン運転手?ではありません。
中島裕志さん、56歳。
中島さんはことし6月に航空自衛隊を定年で退職し、遠州鉄道に就職。
この日は遠鉄バスの新人運転手として研修を受けていました。
中島裕志さん
「今までは見えないところで、皆さんを何かあった時には助けたいと思って自衛隊をやっていましたが、今度は見える形でもっと皆さんをどうサービスしていけるかなというのでチャレンジしたいなと思い応募しました」
遠鉄バスでは4、50代の運転手が6割以上を占めていて、中島さんのように異なる業種からの転職がほとんどだといいます。
遠州鉄道管理課 中野修吾課長
「独り立ちするには、個人によって差がありますけど、半年から1年は時間が必要なんですね。なかなか需要に追いついていかないという現実はあります」
毎月運転体験会
人材不足が今も続いているという遠鉄バス。
その原因はコロナ禍にありました。
乗客が減ったことで路線バスの急速な減便が進み、比例するように運転手の数も半数近く減少。
そのしわ寄せが来ている状況です。
企業は今、人材確保のためにあの手この手で工夫を凝らしています。
遠州鉄道管理課 中野修吾課長
「毎月運転体験会を実施していて、バスを敷地内で自ら運転をしてみて、自分でもできそうかなって思った方が、そこで面接の希望される方は面接をしてというような流れで今やっています」

橋本紗江さん
その体験会で入社を決めた人も。
橋本紗江さん、22歳。
高校卒業後は浜松市内の工場で働いていました。
「(体験会で)教えていただいた教官の方から、「センスがいい」って言ってもらえて、ちょっと自信がついて。(これまで人と)接することがなかった業種だったので、人と接するということに惹かれていたというのもありますね」
国土交通省によると、2023年度のバス運転手は全国でおよそ11万人。
そのうち女性の割合はわずか1.6%に留まっています。
遠鉄バスでは411人中女性ドライバーが30人。
全国的にも多い数字です。
橋本さんは早ければ9月中にも路線バスの運転手として独り立ちするといいます。
橋本紗江さん
「まずは運転を完璧にして、お客さんに対応するときは笑顔を忘れずにということが目標ですね」
異業種からバスの運転手へ。
その決意がバス業界を支えます。
