「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

 静岡県各地で発生した突風被害。牧之原市の隣、吉田町も被災地の1つです。

古賀りなアナウンサー:「突風被害にあったというお宅にお邪魔させていただいています。こちら玄関前の柱なんですが、瓦が突き刺さっている。厚さ2cmくらいはあるでしょうか。かなり奥まで刺さっています。もしこれが人に当たっていたらと考えると本当に恐ろしいです」

古賀りなアナウンサー
古賀りなアナウンサー

 玄関前の柱に突き刺さった瓦。当時の風の強さを物語っています。こちらでは、母屋や倉庫の瓦も飛ばされ、建物そのものが斜めに傾いてしまいました。

小塩国博さん(6日)
Q:これは今後どうする?
A.「これは潰す予定でいる。危ないしね。もう斜めってこっちに傾いているから」

「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

 さらに家の裏側には…。

小塩国博さん:「電柱がそこに倒れている。うちのブロック塀の向こう側に立っていた電柱。それが根っこから折れちゃった」

 敷地の外に立っていた電柱が突風によってなぎ倒され、敷地内に。幸い、家屋には当たらなかったものの、ブロック塀を倒すなど、大きな被害が出ました。

小塩国博さん:「もう怖いしかないよ。怖い。とにかく身の安全。自分と女房の。それだけだね」

 甚大な被害をもたらした「突風」。農業にも大きな打撃を与えました。

「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

「諦めるしか…」農家から悲痛な声

古賀アナ:「突風による被害が確認されたのは住宅だけではありません。こちらの農園ではビニールハウスが大きく歪んでしまっています」

 住宅だけでなく、農業用の施設にも被害が出た今回の突風。牧之原市ではビニールハウス326棟、吉田町でも住宅以外の建物が53棟被害に遭っています。こちらは、吉田町でコメや野菜を栽培している「どんぐり農園」。突風の影響で、ビニールハウスに大きな被害が出ました。

「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「ここにビニールハウスの壁があった。(骨組みが)全部向こうに吹っ飛んでいる。ちょっと現実感が無くて見た時に「えっ」っていう。普通に信じられない感じ」

 ビニールハウスは突風に押され、基礎部分にあった鉄骨の柱も、ぐにゃりと曲がっています。こちらで栽培されていたのは11月に収穫予定だったネギ。そのほとんどが倒されていました。

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「結構順調に育っていて、割と大事に育ててきた。もう諦めるしかない。諦めるつもり」
Q:途中段階でどうにかできることはない?
A.「できると思うが、この現場で作業できるかっていうところ。少なくとも、向こう側の中に入って作業するのは現実的ではない。ちょっと悔しい」

 損害額はネギだけでも100万円にのぼり、ビニールハウスの撤去や新設には3000万円以上かかるといいます。

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「まだ決めかねているが、とりあえず撤去しないと危ないので、まずは撤去して新しいハウスを立て直すしかないと思っている」

「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

 突風により壊滅的な被害を受けたビニールハウス。ただ、台風の襲来を前に、事前に対策を講じていたものがありました。

どんぐり農園 眞崎英彦代表
Q:ビニールハウスの横のこちらでは何を育てていた?
A.「お米を育てていました」

 被害を受けたビニールハウスの隣にあったのは、稲刈りが終わった田んぼ。実は…

 もともとは、台風が直撃した5日に稲刈りを行う予定でしたが、予定を早め、水曜日に稲刈りを行っていました。番組ではその様子を取材させてもらっていたのです。まさに収穫日和と言わんばかりの快晴だったこの日。猛暑一歩手前の暑さの中、作業が行われました。(菊川牧之原:最高気温34.3℃ 午前11時30分)

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 次々とでてくる収穫したばかりの籾。今年の出来は。

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「おコメとしては結構良くできたと思います。去年が本当に取れなくて、そのイメージがすごく付いてて、今年刈ってみてまだもみの段階なんですけど思ったり取れてて何かこう安心してるっていうのが、安心してますね」

 この数日後に発生した突風被害。

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「もし刈れてなかったらもっとダメージがあったかもしれない。ちょっと早いかなと思ったが刈って良かった」

 稲刈りを終えた田んぼにはビニールハウスなどの残骸が。まだ稲刈りを終えていない隣接する田んぼにも、瓦礫が飛んできていることから、事前に稲刈りをしたことで、コメへの被害を免れる結果となりました。

どんぐり農園 眞崎英彦代表:「(ネギやビニールハウスが)ダメだったら、他の作物で取り返していかなきゃいけないので、コメだけでもなんとかなったので本当に良かった」

「もう諦めるしかない」…ビニールハウスの鉄骨の柱がぐにゃり 台風15号で農業に大きな被害 静岡・吉田町

3年前建てたばかり…5棟のビニールハウスが全壊

 甚大な被害を受けた農家は他にも。

中村農園 中村敦代表:「今年は無理だなという感じ」

 こう話すのは、おととしイチゴの栽培を始めたばかりだという中村農園の中村敦さん。次のシーズンに向け、イチゴの苗を育てている最中に突風がビニールハウスを襲いました。

中村農園 中村敦代表:「建物はもう無理。この状態では危ないし、やるのであれば1回全部きれいに片付けてから新たに新設するしかない」

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 3年前に建てた5棟のビニールハウスは突風の影響で全壊。イチゴにも被害が出ました。

中村農園 中村敦代表:「全滅ですね。どうすることもできない。水の装置や水道関係、電気も停電中で、その辺がぐちゃぐちゃなっているのですぐには復旧できない」

 損害額はイチゴだけでもおよそ1300万円。ビニールハウスや設備の新調、いちごの苗の購入など来シーズンに向けてかかる費用は1億円を超える見込みだといいます。

中村農園 中村敦代表:「来シーズンに間に合うのか、ちょっとわからない。続けられるのかどうかもわからない」

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 これからの見通しが全く立たない中、この日急遽行われたのは冷凍いちごの販売。停電の影響で冷凍庫が使えないため、溶けてしまう前にとSNSで呼びかけを行っていました。

 販売所にはSNSを見た多くお客さんの姿が。

吉田町民:「5袋買わせていただいて、実家とお客様に渡そうと思う。できること少ないが、同じ吉田町ということで何かできればと思って来た」

吉田町民:「何をしていいか分からないので、販売の情報を聞いたので、何かやれることだけでもやろうと思って来た。とにかく頑張ってほしいしか今は言えないです」

 用意された、およそ100袋は1時間も経たずに売り切れました。

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中村農園 中村敦代表:「結構多くの人が買いに来てくれたので、本当にうれしい。飲み物だったりおにぎりだったり、持ってきてくれたり、ありがとうという感謝の気持ちだけですね。本当に」

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