一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

静岡県 鈴木康友知事:「2位になったことは残念だなと」

 “日本一の茶どころ”をうたう静岡県が、またも首位陥落。去年、荒茶の生産量で鹿児島に抜かれた静岡茶。今年の一番茶でも、1位を明け渡す結果に…。(一番茶生産量 2024年静岡1万t 鹿児島8450t 2025年 静岡8120t 鹿児島8440t 1991年の統計開始以来初の2位)

静岡県 鈴木康友知事:「構造転換を図って、稼ぐ茶業、強い茶業を目指す」

 県は静岡茶復活のため、“リブランディングプロジェクト”を始動。未来志向での取り組みを始めています。

一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

静岡茶を広めるため「紅茶」に加工

堀優奈アナウンサー:「県内有数の茶どころ、静岡市清水区の両河内地区。この静かな里山に会社を構えるのがグリーンエイト。こちらでは静岡茶を広めるため、あることに力を入れているといいます」

堀優奈アナウンサー
堀優奈アナウンサー

 創業20年、老舗も多い業界では新興企業です。およそ7ヘクタールの広大な茶畑を持ち、生産から製茶まで自社で手掛けています。製茶方法に、こだわりが…。

グリーンエイト 北條広樹代表(45):「看板商品が紅茶。それが(他との)一番大きな違い。毎年4t~5tの間、そのぐらいは紅茶を作る。うちの規模の工場で紅茶を作っているところは他には聞かない」

グリーンエイト 北條広樹代表(右)
グリーンエイト 北條広樹代表(右)

 北條さんは30歳の時に脱サラし、家業を継ぐため茶業界へ。静岡茶を広めるためにも、選んだのが「紅茶」でした。実は、緑茶も紅茶も、使っている茶葉も、製造ラインも同じ。「グリーンエイト」では、一番茶は主に「緑茶」に、二番茶は全て「紅茶」へと加工しています。

グリーンエイト 北條広樹代表(45):「僕らも昔は急須でお湯を冷ましてというアプローチでやってきたが、それだともう広がらないなと。もう勝手に断定しました。より簡単においしく淹れられる紅茶、そこに力を入れて」

一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

オリジナルの紅茶ブランド

 目指したのは、飲みやすく、親しみやすいお茶。そこで誕生したのが、オリジナルの紅茶ブランド「ニガクナイ紅茶」です。

グリーンエイト 北條広樹代表(45):「苦くないこと。そこにフォーカスしている。渋いと苦いは、お茶業界では違うと言われているが、お客さんにとっては一緒で苦い。そういう側面を紅茶には入れたくなかった」

 茶葉の品種と発酵時間を調整して作られる、「ニガクナイ紅茶」。工場に併設されている、カフェテラスでいただくことに…。

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堀アナ「ではいただきます。とってもまろやか。後味はすっきりしているが、コクもしっかり感じられて、ほのかな甘みも感じる。名前の通り、ニガクナイです」

 紅茶は売れ行きも好調で、今ではなんと緑茶の4倍に。「いま静岡の茶業に必要なこと」について、北條さんは…。

グリーンエイト 北條広樹代表(45):「生産量が1位陥落、2位になったことは仕方がないので、自分たちが本来やりたいことは何かという原点に戻って、愚直にお客さんに伝えていくしかない。ただ質を追求しすぎても、職人の世界みたいになってしまって、お客さんが不在になってしまう。業界の内部的な品質よりもお客さんを含めた品質。それがすごく大事だと思っている」

グリーンエイト 北條広樹代表(右)
グリーンエイト 北條広樹代表(右)

お茶を通じて消費者と向き合う店

「お茶を通じて、いかに消費者と向き合うのか」。実践している店が、静岡市にありました。

笹村朱里アナウンサー
笹村朱里アナウンサー

笹村朱里アナウンサー:「さて、静岡市街地にやってきました。すぐ近くには新静岡セノバがあるところなんですが、こちらにはおしゃれな暖簾がかかったお店があります。これは茶染めですかね」

 静岡市葵区鷹匠にある「GOODTIMINGTEA(グッドタイミングティー)」。オープン2年目の日本茶カフェです。出迎えてくれたのは、33歳のオーナー・和田健さん。生まれた時から、お茶とは切っても切れない関係が…。

和田健さん(左)
和田健さん(左)

GOODTIMINGTEA 和田健オーナー(33):「実家が製茶問屋と呼ばれる、お茶の問屋」

 和田さんの実家は88年続く、老舗の製茶問屋。20代前半、家業を手伝っていて、「自分の店を作りたい」という思いが芽生えます。

GOODTIMINGTEA 和田健オーナー(33):「製茶問屋での仕事はお茶屋とお茶屋をつなぐ仕事だが、どうしても他の業種の方たちとつながるきっかけが無くて、その頃「ハグコーヒー」というお店にプライベートで通っていて、そこでいろいろな方々とつながることができて、それがすごく面白いなと思った。そういう場をお茶を通して作れたらいいなと思って始めた」

和田健さん
和田健さん

 県内に9店舗を構える人気カフェ、「ハグコーヒー」。和田さんは7年間、「ハグコーヒー」で修業し、2年前に自分の店を、オープンしました。ただ、開業前には製茶問屋の社長でもある父親との“衝突”が…。

GOODTIMINGTEA:和田健オーナー(33):「父親としては、製茶問屋に入って一部門でカフェをやったらいいと。僕としてはお店として自走できないと、僕自身もそうだし、お茶として必要な存在にならなければと思っていたので、一緒にご飯を食べてたんですけど、飛び出して家に帰った」

 “親心”からの反対だったそうです。

 それでも、いざ店を始めれば、頼もしい味方に。店で扱うお茶の大半は、実家の製茶問屋から仕入れています。

GOODTIMINGTEA 和田健オーナー(33):「(お茶は)若干固いイメージがあると思っていたので、なるべく敷居を低くして、かつ品質は自信を持ってお届けしたいという思いでやっている」

一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

和田さん「お待たせしました。こちら静岡茶のさえみどりとほうじ茶と抹茶を使ったあんこ玉になります」
笹村アナ「お茶が本当に香り高い」

 川根本町で作られる鮮やかな緑色が特長の「さえみどり」を、お茶を練りこんだオリジナルのあんこ玉と一緒に。

一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

試食すると…。

笹村アナ「上品な味わい。甘みとうま味が強い。あとすごくまろやかな感じがする」
笹村アナ「すごい中まで緑です。(あんこ玉食べる)ん!抹茶が濃い、白あんが使われているからこそ、しっかり抹茶のおいしさが際立っている」
和田さん「お茶と相性のいいような和菓子を選んでいるつもり」
笹村アナ「確かに、お茶をもう一口飲みたくなってしまう」

一番茶生産量が初めて“首位陥落” 首位奪還にあの手この手 鈴木知事「構造転換を図り強い茶業を目指す」 静岡県

GOODTIMINGTEA 和田健オーナー(33):「製茶問屋だと作っているお茶を飲んでくれているお客さんの顔を見ることが出来なかったので、実際に見て聞けるのがすごくうれしい」

 製茶問屋から独立し、お客と直接向き合うようになって気付いたことは…。

GOODTIMINGTEA 和田健オーナー(33):「収穫量がどうのこうのは、実際にお茶を飲んでくれる方にとって関係ない。あくまでお茶屋やお茶業界の都合。僕たちみたいな消費者に接するお茶屋がもっと飲んでもらえる機会を増やしたり、飲んでもらったときに喜んでもらえるような努力が必要」