市民「めちゃピンチ」…なぜ? 浜松市が30年ぶり水道料金値上げ 水道水ができる現場をのぞいてみた

伊地健治アナウンサー:「いただきます!…うまい!おいしいですね!」
10月から浜松市で値上げとなった水道料金。いったいなぜ、今値上げなのか? さっそく浜松市の担当部署を直撃することに。対応してくれたのは浜松市上下水道総務課の大城さん。
浜松市上下水道総務課:大城秀寛課長
Q.10月からの水道料金値上げどのくらい
A.「平均改定率が17.9%となります」
一般の家庭で1か月20立方メートル使用した場合、これまで2156円だったものが、2504円に(来年3月までの減免期間は2294円)。また、飲食の自営業者が1か月100立方メートル使用した場合、1万7578円だったものが、2万0390円に値上がり(来年3月までの減免期間は1万9195円)。
市民「ピンチ」「水道代も来たかっていう感じ」
この値上げ、浜松市民はどう捉えてるんでしょうか?
30代男性(会社員兼個人事業主)
Q.水道料金値上げについて
A.「めちゃめちゃ家計のピンチです。公共料金まで上がっちゃったら…。子どもが大きいんですけど、そっちに回すお金まで減らさないといけないのかなっていう感じです」
Q.お子さんはおいくつ
A.「上が高校3年生です。かなりピンチですね。」
30代女性(会社員・主婦)
Q.水道料金値上げについて
A.「物価が全ていろいろなところで高くなっているので、水道代も来たかっていう感じ。正直言うと嫌だなって。これからの季節だと、毎日お風呂(の水)貯めたいなって思うと、そういうところも」
フィリピンから来た女性(派遣社員)
Q.浜松に住んでどれくらい?
A.「17年」
Q.水道料金値上げについて
A.「(生活が)苦しくなるかも。今時給が段々減っているので、いっぱいもらえないと、生活できないかもしれない。」
70代(飲食業)
Q.どんなお店
A.「アジアンキッチン」
Q.水道料金値上げについて
A.「ちょっと困ります。食器洗い器から全部、水を流しっぱなしに近いので。いま一つ景気がよくない時に、そういうのばっかり上がっちゃうと大変です」
市内最大の浄水施設「大原浄水場」
伊地アナ:「浜松市で最大の浄水施設である大原浄水場です。浜松市は、なぜ水道料金を値上げするのか、その理由を、ここで探ってみたいと思います」
浄水場の中を案内してくれるのは浄水課の梅田さんと、五十川さん。大原浄水場は、今から50年以上前の1968年に供用を開始。敷地面積はおよそ16万平方メートル。浜松市中部地域に住む、およそ32万人が使う水を、日々まかなっています。
伊地アナ:「ここからは、立入禁止区域なんですね?」
浜松市浄水課 梅田晃課長:「水を作っている施設になるものですから、セキュリティーには非常に配慮してまして、監視カメラと、赤外線センサーで監視しております」
市民の命の水を管理する浄水場。水道水は、どのようにして作られているのでしょうか。
伊地アナ「これは何ですか?」
梅田課長「着水井(ちゃくすいせい)といいまして、浄水場に着いた水の勢いを鎮めるところになります」
伊地アナ「すごい景色がいいわ、浜松の街が見渡せます。中を見ると…おー!こんな風になってるんですね!水が入ってます」
こちらの施設は着水井といい、天竜川から運ばれてきた水が、最初に到着するところ。水の勢いを弱め、次の場所に流れていく水量を調節する役割があります。続いての工程は…
伊地アナ「ここも何か、大きな施設ですね。何か水の中で大きなスノコみたいなものが回っていますね。すごいつぶつぶが浮いていて、すごい汚れてる水なんじゃないかって…」
梅田課長「凝集剤の力で、汚れを吸着させて、フロック(かたまり)を作る」
こちらは、フロック形成池と呼ばれる施設。フロックとは、汚れを集めた大きなかたまりのことをいいます。着水井から来る川の水に、雑菌を消毒する薬と、
水に含まれる砂や泥を集めるための凝集剤を入れ、ゆっくりとかき混ぜます。こうすることで、汚れを集めた大きなかたまり、フロックができるんです。
伊地アナ「また違ったプールが出てきました。ここは…?」
梅田課長「今見たフロック(汚れのかたまり)をこちらで沈めて汚れを取り除きます」
こちらはフロック形成地の隣にある“沈殿池”と呼ばれる施設。ここで、先程できた砂や泥など汚れを集めた大きなかたまり、フロックを底に沈め、キレイな水と分離します。
伊地アナ「ここは何の施設ですか。」
梅田課長「こちらは、ろ過池といいまして、沈殿池で取りきれなかった汚れを、最後に取り除く池になります」
こちらが、浄水処理最後の工程。この施設はろ過池といい、水をろ過専用の砂に通し、目に見えない小さな汚れを取り除きます。これで水道水の出来上がりです。

出来立ての水道水は
梅田課長「こちらで、ろ過池から出た、出来立てのお水が飲めます」
伊地アナ「え!?で、後ろにろ過池の建物があるんですよね、ってことは、これ直接(ろ過池から)ここに(水が)来てるんですか?」
梅田課長「そうです」
伊地アナ「えー!?」
大原浄水場でつい先ほど作ったばかり、いわば出来立ての水道水です。さっそく頂きました。
伊地アナ「いただきます!…うまい!おいしいですね!」
着水井から浄水処理が終わるまでにかかる期間は、およそ半日。こうした行程をへて、水道水になるんです。
伊地アナ:「ひねれば出てくるお水ですけどね。公園でもひねれば同じ水が出てくるわけですけど、どれだけありがたいのか。本当にこれからちょっと、ありがたいなっていう気持ちを持っていただきたいと思います」

水道料金値上げの背景は水道管や浄水場の老朽化と耐震化の遅れ
そして敷地内をさらに歩いて行くと、こんなものを発見。
伊地アナ「展示されているものがあります。これ何ですか?」
梅田さん「そちらは配水管になります。」
伊地アナ「わあ、大きい!」
大原浄水場から、市内へ水道水を送るのに使用する配水管、その見本が展示されていました。直径は1.2メートル!
梅田課長「あと途中でいろいろ分岐して、最後に家庭に入るときはこの太さ」
伊地アナ「えっ!こんな細いんですか?」
梅田課長「13ミリですね」

水道料金値上げの背景にあるのは、こうした水道管や浄水場自体の老朽化と、耐震化の遅れです。去年おきた能登半島地震では、水道管や浄水場の老朽化が進み、耐震化は進んでいなかったため、およそ14万戸で断水が発生。静岡県内でも、浜松市、そして静岡市で昨年、老朽化が原因とみられる、水道管からの漏水が発生しているんです。
浜松市上下水道部 原崎智久次長兼水道工事課長
Q.昨年、市内でおきた漏水について
A.「敷設して60年ほど経過した管なんです。これが完全に上の方が割れてしまって、道路が一面冠水状態になったという事例があります」
Q.老朽化している水道管があるとこういったことが起こり得る
A.「そうですね」
浜松市では、断水の原因となる、菅と管の接続部分が簡単に外れない、耐震性を備えた水道管への更新を進めているものの、40年を超え使われている水道管の割合はいまだ30%近く。老朽化した水道管の割合は年々上昇しているのが現状です。
また、今回取材した、大原浄水場も供用開始から50年以上がたち、老朽化や耐震化への対応を迫られています。
浜松市上下水道総務課 大城課長
Q.水道料金値上げの理由
A.「水道施設の耐震化とか、老朽化への対策が必要になっているということと、あと、水道料金収入が減少しているというところがございます」
水道管や浄水場の老朽化・耐震化への対応にお金が必要な一方で、少子高齢化や、節水意識の向上、節水機器の普及で、水道使用量が減少し、収益は減少傾向。
結果、浜松市の水道事業は4年前から赤字に。このまま赤字が続けば、来年度には、運営に必要な資金が枯渇する恐れがあるといいます。水道料金値上げの背景には、そうした事情があったんです。
しかし、この値上げに対し、市議会に慎重な審議と改定の延期を求める陳情を提出した、市民団体は…
浜松市の水道民営化を考える市民ネットワーク 池谷たか子さん:「今もう何でもいろいろね。値上がりが本当にひどいので、水道料金も?っていう感じで。道路とか直すのと同じように、税金である程度水道管を直す。そういうのはやってほしいなと思うんですよ」
浜松市上下水道総務課 大城課長:「値上げをしないでほしいというご意見も確かにあるんですけれども、その一方で、地震に対する不安、もし地震が起こった時に水道が止まってしまったりとか、あと老朽化によって漏水がして影響を受けてしまうとか、そういう不安を持ってる方もかなりいらっしゃるのかなと思います。多くの市民の方には値上げについて、ご理解をいただけるかなと考えているところでございます」
