創業70年。肉なし焼きそばと黄金饅頭に宿る、自家製の良心 静岡市「松竹」
静岡市葵区巴町。北街道沿いに佇む「松竹」は、昭和29年(1954年)の創業から2025年でちょうど70年を迎える老舗だ。3代目が暖簾を守る店内は、どこか懐かしさを感じさせるレトロな空間。ここでは、70年間変わらない「昔ながらの味」が、訪れる人々の心を解きほぐしてくれる。
まず味わうべきは、地元で愛され続ける名物ソース焼きそばだ。一見するとシンプル極まりないこの一皿だが、その麺は自家製。一般的な焼きそばに比べて「すごく細い」のが特徴だが、驚くべきは、その細さに反してしっかりとしたコシがあることだ。他ではなかなか出会えない独特の食感が、箸を止めさせない。
具材は、潔くラードとキャベツのみ。肉は一切入らない。これは「お肉が手に入らなかった時代」の名残であり、肉の代わりにラードを使うことで、独特のコクと深みを出しているのだ。味の決め手はウスターソース。そして、頂上にちょこんと乗ったナルトが、この店のルーツを語る。初代が店を始めた焼津時代からのアクセントだという。もっちりとした自家製細麺に、ほんのり酸味の効いたソースとラードのコクが絡む味わいは、素朴ながらも何度でも食べたくなる魔力を持っている。
町中華の王道を行くなら、「醤油ラーメン」も外せない。スープは鶏ガラ、豚のゲンコツ、香味野菜で引いた、至ってシンプルなもの。かえしにはチャーシューを煮た醤油ダレを使い、毎日でも食べられるさっぱりとした味に仕上げている。こちらで泳ぐ麺も、もちろん自家製のストレート細麺だ。
サイドメニューの「餃子」もまた、職人の手仕事が光る一品。皮は「もちもちの薄い生地」になるよう自家製されており、中にはひき肉、キャベツ、ニンニク、ショウガ、ニラが詰まっている。薄皮から溢れる肉汁と野菜の旨味、そしてガツンと効いた薬味が食欲を加速させる。
さらに、最大火力で短時間でパラパラに仕上げる「チャーハン」も見逃せない。具材はチャーシュー、卵、ネギのみ。シンプルな具材だからこそ、米一粒一粒の香ばしさと旨味が際立つ、まさに王道のチャーハンだ。
そして、食事の締めくくりには、今しか味わえない「黄金饅頭」を。いわゆる今川焼きだが、松竹では北海道産小豆を使った自家製あんこのみで勝負する。上品な甘さと香ばしさが、中華の後の口を優しく満たしてくれる素朴な逸品だ。
「ずっと変わらぬ味を出し続けるのがテーマ」と語る3代目。70年の歴史と自家製の誇りが詰まった松竹の料理は、世代を超えて愛される、静岡の宝である。
松竹
静岡市葵区巴町20
電話番号:054-246-9498
定休日: 月曜日・第3火曜日
営業時間:11:00-14:30 L.O.14:00
16:30-19:00 L.O.18:30
日・祝日 11:00-18:30
※商品がなくなり次第終了
Pあり

