全線復旧に向け復旧作業が始まる 3年前の台風で大きな被害を受けた静岡・大井川鉄道
一部区間の運休が続く大井川鉄道で、全線開通に向けた復旧作業が始まりました。
●大井川鉄道鉄道部 鴨田善英部長:
「今年度・来年度は、土砂の撤去を中心にやることになっている」
全線復旧に向け、ようやくの一歩です。3年前の台風で、大きな被害を受けた大井川鉄道。12月から、復旧工事が始まっています。
大井川鉄道の大井川本線は、川根温泉笹間渡(かわねおんせん・ささまど)駅と、千頭(せんず)駅の間、19.5キロで運休が続いています。
●石上雄基ディレクター:
「復旧工事の現場は車では行くことができないということで、これからこちらの軌陸車という車両に乗って移動します」
「軌陸車(きりくしゃ)」とは、道路もレールの上も走行できる、特殊な工事用車両。進行方向を変えるときは、人が押して車両を回転させます。復旧工事の作業員も、「軌陸車」で、現場に向かいます。
出発からおよそ5分。鉄橋を渡って、トンネルを抜けた先に、復旧工事の現場が―
●石上ディレクター:
「川根温泉笹間渡駅から1kmほど北上した場所です。現在こちらでは線路に流れ込んだ土砂を撤去する工事が行われています」
●大井川鉄道鉄道部 鴨田善英部長:
「この下が水路になっていましたが、ここも土砂で埋まっているので、ここを水路にするための工事も含めて進めている」
被災区間に流れ込んだ土砂は、合わせて、およそ3300立方メートル。25メートルプール、およそ9杯分に相当します。12月4日に始まった復旧工事では、すでにおよそ100立方メートルの土砂を撤去。ただ、今後の作業で“ハードル”となるのが…。
●大井川鉄道鉄道部 鴨田善英部長:
「本来であれば軌道沿いに側道があって、そういう所から撤去すれば早いが、軌陸車に土砂を入れて往復しているので、だいぶ効率が悪く時間がかかる」
もう一つの“ハードル”が、資金の確保です。およそ21億円とされる復旧費用のうち、大井川鉄道の負担分は、およそ8億円。そのうちの一部を県と島田市、川根本町が肩代わりすることが決まり、ようやく全線復旧へと、工事の動きが本格化したのです。
●大井川鉄道 鳥塚亮社長:
「遠くに光が見えてきた」
トンネルの出口が見えてきたとはいえ、線路の補修費など、3億6000万円は大井川鉄道が負担しなければなりません。再び“稼ぐ力”を高めるためにも、鍵となるのが「全線復旧」なのです。
●川根本町民(男性):
Q:工事が始まったことについて
「ありがたい」
●川根本町民(女性):
「すごくうれしい、やっと始まった」
●川根本町民(男性):
「ここ(千頭駅)までSLが来ていると来ていないとでは、にぎやかさが全然違うので、なるべく早くここまで全線開通してほしいと思う」
2027年春には、すべての土砂を撤去し、段階的に開通区間を拡大。4年後の2029年春に、全線復旧する計画です。
●大井川鉄道 鳥塚亮社長:
「一歩ずつ前進していくきっかけ、いよいよ始まったというところ。『全線開通したら乗りに行きますね』という方が非常に多いが、全線開通する前に乗りにきていただかないと、経営的に厳しいものですから、そのあたり、皆さんによろしくお願いしたいと思います」

