駅前で出会う“遠州野菜の底力”。掛川の一軒は、食べるほどに体が整う 「やさいバス食堂」

 JR掛川駅北口から徒歩1分。SKしんきんプラザ1階に店を構えるやさいバス食堂。2023年6月にオープンしたこの店は、飲食・物販・コワーキングを組み合わせた複合的な取り組みの一角を担う存在だ。店内には物販コーナーも併設され、遠州で育った野菜や調味料、菓子などが並ぶ。つまりここは「食べて終わり」ではない。食べた先にある“日常”までを提案する場所である。提供される料理は、地元野菜を軸にしたヘルシー志向。だが、その言葉から想像する淡さとは少し違う。味わいはしっかりと輪郭を持ち、素材の個性を真正面から引き出してくる。
 まず目を引くのが「あいがけカレー」。「ベジコルマ」と「ヒヨコマサラ」、性格の異なる2種を一度に味わえる。ベジコルマは、カシューナッツのコクが舌に広がり、トマトの酸味が後からそっと追いかけてくる。スパイスは主張しすぎず、香りのレイヤーとして重なる設計。全体はあくまでまろやかにまとめられている。対するヒヨコマサラは、ぐっと輪郭が立つ。ひよこ豆の食感、玉ネギの甘み、そこへトマトの酸味と青唐辛子の鋭い辛味が重なる。後味にかけて熱がじわりと残る、はっきりとした辛さだ。一皿の中で、穏やかさと刺激が行き来する。この緩急こそが、このカレーの醍醐味といえる。

あいがけカレー(1400円)
あいがけカレー(1400円)

 3月から登場した「蒸し鶏と彩り野菜のせいろ蒸し」は、視覚から食欲を誘う一品だ。せいろの蓋を開けた瞬間、ふわりと立ちのぼる蒸気。そこに並ぶのは、鶏モモ肉と旬の根菜、そして葉物野菜。蒸すことで水分が保たれ、野菜はみずみずしさを失わない。色味も鮮やかで、火を通したとは思えないほどの生気を帯びている。蒸すという調理の潔さが、素材の力をそのまま引き出している。

蒸し鶏と彩り野菜のせいろ蒸し(1500円)
蒸し鶏と彩り野菜のせいろ蒸し(1500円)

 店の思想がもっとも表れているのが「やさいバスプレート」だろう。店頭で販売されている野菜を“少しずつ試してほしい”という意図から生まれたメニューだ。例えば、バターナッツかぼちゃのソテー。火を入れることでナッツのような香ばしさが立ち上がり、ねっとりとした甘みが口に残る。掛川産サラダカブ「もものすけ」は酢漬けに。薄切りにされたその身は、柿を思わせる甘さを持ち、確かにどこか果実のような印象を残す。

やさいバスプレート(1500円)
やさいバスプレート(1500円)

 野菜だけでは終わらない。静岡で獲れたシラスや桜エビの釜揚げを使った定食も用意されている。どちらも塩味が付いており、余計な手を加えずそのまま味わうスタイル。素材の持つ旨みを、まっすぐに受け取る一皿だ。

静岡しらすと桜えびごはん(1500円)
静岡しらすと桜えびごはん(1500円)

 野菜を“健康的”という言葉だけで終わらせず、味として成立させる。やさいバス食堂は、単なる食事の場ではなく、遠州の食文化を体感する入り口だ。

駅前で出会う“遠州野菜の底力”。掛川の一軒は、食べるほどに体が整う 「やさいバス食堂」

やさいバス食堂
掛川市駅前4-4SKしんきんプラザ1階
電話番号:0537-26-9992
定休日:月曜日・年末年始
営業時間:火・水・木・日 10:00~17:00
金・土 10:00~21:00
提携Pあり