深夜に行列のワケは…農園で異様な光景 糖度20度超「幻のトウモロコシ」解禁 静岡・森町

農園に異様な光景 午前4時に長蛇の列

 まだ夜の気配が残る午前4時過ぎ。静岡県森町の農園には、すでに長い列ができていました。

 取材時点で並んでいたのは70人以上。防寒用の上着を羽織る人や、折りたたみ椅子に座って静かに順番を待つ人。その光景は、まるで人気イベントの開場前のようです。

 藤枝市から訪れた60代の男性は、「午後7時半ごろから並びました。他の人より早く食べられるのがうれしいですね」と少しはにかみながら話します。さらに先頭近くには、前日の午後5時から並んだという女性の姿もありました。一体皆さんのお目当ては何なのでしょうか…。

午前4時過ぎに長蛇の列
午前4時過ぎに長蛇の列

お目当ては“幻”と呼ばれるトウモロコシ

 人々が目指していたのは、森町の鈴木農園で栽培されている「甘々娘(かんかんむすめ)」。発芽率が低く、生産量も限られることから「幻のトウモロコシ」とも呼ばれる人気品種です。その最大の特徴は、驚くほどの甘さ。今年はなんと、初日から糖度20度超え。メロンやマンゴーに匹敵するレベルとも言われています。

 収穫は午前4時半ごろから。夜明け前、最も糖分が蓄えられるタイミングを見計らい、一本一本丁寧に収穫されていきます。鈴木農園の鈴木弥社長は今年の出来栄えについて、「例年よりも寒暖差が大きかった影響で、最初から糖度が高い。例年以上に素晴らしい仕上がりです」と語ります。

幻のトウモロコシ「甘々娘」
幻のトウモロコシ「甘々娘」

行列で販売は前倒しに

 本来は午前6時から始まる予定だった販売。しかし、長蛇の列を受けて15分前倒しでスタートしました。

「いくよ!令和8年スタート!」威勢のいい掛け声とともに、待ちわびた人たちが一斉に動き出します。この日収穫されたのは2万5000本以上。袋いっぱいに詰めて持ち帰る人の姿も見られました。購入したばかりの「甘々娘」を、その場でかじる人も。

 三重県から訪れたという30代の男性は、「めっちゃ甘くてびっくりしました。ここまで来た価値ありますね」。

時間前倒しで販売開始
時間前倒しで販売開始

“並んでも食べたい”理由

 「甘々娘」の魅力は甘さだけではありません。水分が多く、採れたてであれば生でも食べられるほどの新鮮さが特徴です。さらに農園おすすめの食べ方は、とてもシンプル。皮をむいたトウモロコシを軽く水にくぐらせ、ラップで包んで電子レンジで約3分。それだけで、甘みがぎゅっと詰まった贅沢な味わいに仕上がります。ほのかに漂う甘い香りと、みずみずしい粒の食感。一粒かむたびに、初夏の訪れを感じさせてくれます。

 深夜からでも並びたい。その理由は、単なる人気だけではありません。限られた期間しか味わえない旬の魅力、そして「ここでしか手に入らない」という特別感。人々は、その一瞬の味のために時間をかけて並びます。今年の「甘々娘」は、7月下旬ごろまで楽しめる見込み。森町の朝に生まれる“特別な甘さ”が、今年も多くの人を引きつけています。