「人災だった」28人死亡の熱海土石流から5年 母を失った息子の戦い続く…責任認めぬ行政に募る不信感「本当に腹立たしい」違法盛り土の責任の所在は 裁判続くも復興なお道半ば

 28人が亡くなった熱海土石流災害からきょうで5年です。現地では追悼式が行われ、参列者、遺族らが犠牲者を悼みました。

「黙とう」

 静岡県熱海市の追悼式会場では、最初の通報があった午前10時28分に合わせ被災者らが犠牲者を悼み、黙とうを捧げました。

 5年前、熱海市伊豆山で違法な盛り土が崩れて大規模な土石流が発生し災害関連死を含めて28人が亡くなり今も12世帯、25人が避難生活を送っています。

 追悼式では犠牲者の遺族らが、花を手向け手を合わせていました。

 あの日から5年。遺族の悲しみが癒えることはありません。

●娘を亡くした 小磯洋子さん(76)
「5年だから、1年だから10年だからっていうそういう節目は遺族にはないので、ずっとこのまま死ぬまでこうなんだろうなとは思っています。」

 この災害を巡っては、遺族らが土地所有者や行政を相手に裁判を起こしていますが、責任の所在は明らかになっていません。また、静岡県警が関係者を事情聴取するなどして捜査を続けています。

7月3日午前10時28分 「黙祷」
7月3日午前10時28分 「黙祷」

 土石流に巻き込まれ、母親の鈴木チヨセさんを亡くした息子・仁史さん。自宅が被害をうけ、現在は三島市に住んでいます。

 当時、自宅にいたチヨセさんと仁史さん。様子を見るために、仁史さんが1人で外へ出た後、自宅を土石流が襲いました。

●鈴木仁史さん:
「結局そこで母がひとりになって。瓦礫の中に閉じ込められるような感じになってしまったので、もう最初から母を連れ出すなり、引き返すなりできていれば、そもそもあんな死に方をさせなくてよかったと思って。そのことはすごく残念には思っています。」

 5年経ってもなお、かつて住んだ伊豆山に 「戻りたい気持ち」は変わらないと言いますがー

●鈴木仁史さん:
「熱海に、伊豆山に戻りたいという気持ちを持って暮らしてはいるんですけど、なかなかちょっと家の再建のめども立っていない状態なので、帰りたいという気持ちは持っています」

 熱海市の斉藤栄市長も6月29日の記者会見で「復興は道半ば」とし、被災者の声を聞きながら復旧整備を行うとしています。

 一方で、土石流の原因となった逢初川上流の盛り土に対する行政への責任追及は、現在も続いています。

 発生から2か月後、遺族や被災者らは、県と市、土地の所有者らに対して損害賠償を求める裁判を起こしています。この裁判では、県に対しては、違法な盛り土を適切に管理していなかった責任を、市に対しては適切な避難情報を発令していなかった責任を追及しています。

 この裁判を傍聴した仁史さん。土石流の原因となった土地の所有者らが、違法な盛り土を造成した事への怒りと共に感じたのは、県や市に対する失望でした。

●鈴木仁史さん:
「実際に県なり市なりの職員が証言しているところを傍聴することによって、何か口裏合わせをして、もう自分たちに責任はないみたいなことを言っている姿を見て、本当に腹立たしいですね」

 裁判で市の元職員は「盛り土が安定していたことなどから、住民に危害が及ぶ認識がなかった」と主張。

 当時の県の担当者も「盛り土が規制対象の面積を超えた明確な根拠がなく、県に指導の権限はなかった」と証言しています。

 今年3月には、遺族として仁史さんも証言台に立ち訴えました。

●鈴木仁史さん:
「人災だったと一番訴えたかった」

 責任を認めない県や市に対して募る不信感。

●鈴木仁史さん:
「自らの非を認めて、責任をとっていただきたいなと」

 きょう7月3日、熱海市が開いた追悼式にも出席しませんでした。

●鈴木仁史さん:
「熱海市にも土石流の責任はあるだろうと私は思っているので。そういう人たちが開く慰霊式についてちょっと違うんじゃないかなと」

 裁判は、今年度中に判決が言い渡される見通しです。

 母親であるチヨセさんの無念を晴らすための闘いは、5年たった今も続いています。

熱海土石流で母親を亡くした鈴木仁史さん
熱海土石流で母親を亡くした鈴木仁史さん