経費1273万円削減へ 伊豆市議会が市長選と市議選の同時実施を検討 実現のカギ握る「議会自主解散」 全市民を対象にアンケート実施中

伊豆市議会では、ある議会改革に取り組んでいます。それは、市長選と市議選の投票日を一緒にしようという取り組みです。実現すれば、経費削減など大きなメリットがあるということですが、そんなことが可能なのでしょうか?(取材・文=三浦徹)

伊豆市議会の議会改革推進特別委員会では、去年から、市長選挙と市議会議員選挙を同時に行おうという取り組みについて協議しています。委員会の委員長を務める小長谷市議に聞いてみました。

●伊豆市 小長谷順二市議:
「現在、市長選は4月、市議選は同じ年の10月に行われています。伊豆市は4町が2004年に合併してできた新しい市なので、本来なら選挙が同時に行われてもおかしくありません。しかし合併した際に、『合併前の各町の決算認定を最後まで見届ける必要があった』という理由で、合併特例法を適用し、旧町議会議員が10月まで任期を延長。これにより、市長選と市議選の時期がずれてしまいました」

確かに、伊豆市と同じように「平成の大合併」で誕生した伊豆の国市や御前崎市、牧之原市などは、市長選と市議選が同じ日程で行われています。しかし、合併から20年以上がたち、なぜ今になって同時選挙を実施しようとするのでしょうか?

●伊豆市 小長谷順二市議:
「以前から、同時選挙を求める市民の声があり、特別委員会でいろいろ調べてきました。2024年に私が議会改革推進特別委員会の委員長になったのをきっかけに、委員会に提案させていただいたところ、『検討しましょう』ということになりました。やる、やらないは別にして、とにかく検討はしましょうということです。メリットやデメリットを調べて、市民の声も聞きましょうと。現在、財政効率化や事務負担軽減の必要性が高まる中で、改めて向き合うべき課題だと思います」

伊豆市長選挙(2024年4月)
伊豆市長選挙(2024年4月)

同時選挙で1273万円の経費削減

同時選挙の最大のメリットは、経費削減だということです。投票立会人の報酬や職員の時間外勤務手当、郵便料などを大幅に抑えることができます。委員会の試算では、1273万円の経費削減が見込まれます。これは伊豆市にとって大きな金額です。

委員会によれば、そのほかにもいくつかメリットが考えられるということです。

・市民の関心が高まり、投票率の向上が期待される
・投票に行く回数が減り、市民の負担が減る
・選挙事務が一つにまとめられ、選挙事務の負担が軽減される

一方のデメリットについては、後述します。

今回の問題のきっかけの一つになったのが、2024年に行われた市長選です。元市議が4月の市長選に出馬。落選したあと、10月の市議選で再び市議に返り咲くということがありました。法律的に問題はありませんが、市民からは批判する声があったということです。

経費が削減でき、市民の負担も減る。素晴らしいことに思えますが、実現は可能なのでしょうか?

●伊豆市 小長谷順二市議:
「同時選挙を行うには、市長と市議の任期を合わせる必要があります。任期を合わせる手法としては、市長が辞職する、市長の不信任決議を受けて市長が議会を解散する、リコールなどが考えられますが、いずれも現実的ではありません。議会の決断で進められる『議会の自主解散』が、現実的な手法だと考えられます」

つまり、市長選と同時に選挙ができるタイミングで、市議会が自主解散するということです。伊豆市の場合、次回の市長選と同時選挙を行うためには、2028年3月定例会での解散が想定されています。

ここで、議会を自主解散することによるデメリットが出てきます。

・解散から新議会発足まで議会機能が停止する
・議員の4年間の任期を全うできない
・解散期日が不明確で、新人候補が不利になる

また、複数の選挙が行われるため、選挙時に投票用紙の誤記入の可能性があるというのもデメリットです。

伊豆市 小長谷順二市議
伊豆市 小長谷順二市議

同時選挙実施のため市議会が自主解散

同時選挙を実施するため、市議会が自主解散する。そんなことは可能なのでしょうか?

●伊豆市 小長谷順二市議:
「議会の解散に関する特例法により、議会が決断すれば実施は可能です。ただし、ハードルは低くありません。成立要件は議員の4分の3以上が出席し、そのうち5分の4以上の同意が必要です。伊豆市議会で14人の議員全員が出席した場合、12人の同意が必要になります」

実際に兵庫県加東市や岐阜県海津市、三重県伊賀市などで、同時選挙を実施する目的で自主解散をしたということです。

伊豆市の場合、議員3人の同意が得られないと成立しないことになります。成立の見通しは?

●伊豆市 小長谷順二市議:
「現状で賛成している議員は多いですが、12人の同意が得られるかというと、正直微妙なところです。議員の中には『4年の任期をまっとうしたい』『7か月分の議員報酬がもらえなくなる』など、いろいろな考えの人がいます。次回の選挙には出ないで引退するという人もいると思うので、成立するかどうかは不透明です」

2024年4月に伊豆市長選が行われた 市議選は同じ年の10月
2024年4月に伊豆市長選が行われた 市議選は同じ年の10月

市民の意見は?

市議会では、5月から市内各地で意見交換会を開き、市民の意見をヒアリングしました。その際の参加者へのアンケートでは、大多数が同時選挙に賛成だったということです。意見交換をしたところ、「市民にとってはメリットしかない」という意見が多かったということです。

●伊豆市 小長谷順二市議:
「議員にはいろいろな考えの人もいるし、立場もそれぞれ違います。ただ、市民の多くが望んでいるという事実があれば、自分の考えは別にして、議員としては反対できないのではないでしょうか。最終的に12人以上が同意することを期待しています」

伊豆市では8月から全市民を対象に、「市議会議員選挙と市長選挙の同時実施に関する市民アンケート」を実施しています。回答期限は10月30日までで、結果は12月に発表されます。

また、そのアンケートを重要な判断材料として、2027年5月ごろをめどに、各議員が賛否と議員意見書を公表するということです。

伊豆市では全市民を対象にアンケートを実施中
伊豆市では全市民を対象にアンケートを実施中