海から見るだけなのに…「ちきゅう鑑賞クルーズ」が人気のワケ 「ちきゅうに乗ってみたい」との乗客の声も 清水港で年内に一般公開あるか?
静岡市の清水港では、港内を一周する遊覧船が定期的に運航しています。先日、清水港ならではの特別なクルーズが運航され、大勢の人が乗船しました。どんなクルーズだったのでしょうか?(取材・文=三浦徹)
8月13日に運航されたのは「ちきゅう鑑賞クルーズ」。清水港に停泊中の「地球深部探査船ちきゅう」を海から見ようというクルーズです。
地球深部探査船ちきゅうは、清水港を母港とする船で、国際深海科学掘削計画の主力船として、「巨大地震発生の仕組み」や「将来の地球規模の環境変動」の解明など、重要なミッションを担っています。
世界最高レベルとなる海底下7000メートルの掘削能力を持ち、2月には、南鳥島沖でのレアアース泥の採取でも注目されました。
今回、特別に運航された「ちきゅう鑑賞クルーズ」。どんなクルーズなのでしょうか?
●富士山清水港クルーズ 営業本部 稲垣忠明本部長(取締役)
「清水港の景色と一緒に、停泊中のちきゅうをより間近でご覧いただくようなクルーズです。去年初めて実施したところ好評で、今回が3回目になります。静岡県内だけではなく、県外のお客さんもいます。ちきゅうの注目度が高いのか、定員150人ほどのクルーズですが、毎回ほぼ満席となっています」
清水港が母港のちきゅうは、興津埠頭に停泊していることが多いそうです。埠頭の中に入ることはできませんが、静岡市民なら、国道1号バイパスなどから、停泊しているちきゅうの姿を見たことがあるという人も多いでしょう。
●富士山清水港クルーズ 営業本部 稲垣忠明本部長
「静岡ではバイパスから、夜にきらきら光っているちきゅうをご覧いただけると思うんですけど、海上に浮いているところを近くでご覧いただく機会はないので、そこに皆さん興味を持っていただいているんじゃないかと思います。ちきゅうに詳しいガイドも同行しているので、解説を聞きながら見ることができます」
ちなみに、このようなツアーがあることは、ちきゅうを管理する海洋研究開発機構にも伝えているそうですが、コラボレーションしたり、連携したりしているわけではありません。
言い方は少し悪いですが、あくまでも「勝手に」海から見ているだけです。
「ちきゅう鑑賞クルーズ」だけに、ちきゅうが停泊していなければ、ツアーそのものが成り立たないというリスクもあります。
●富士山清水港クルーズ 営業本部 稲垣忠明本部長
「事前に停泊していることを確認はしていますが、当然、急に出港するケースもあります。その場合はツアーを延期するということで、お客さんには事前に了解していただいています」
ちきゅうにカメラを向ける乗客たち
午後5時、船は清水港を出港。暑さを考慮し、比較的涼しくなるこの時間帯のスタートとしたそうです。この日は、クルーズの目玉の一つである富士山は雲が多く、残念ながら見えませんでした。ほぼ満員というだけあって、船内には大勢の人の姿が。夏休みということもあり、親子連れも多くいました。
船は三保半島の先端を目指して進んでいきます。そして10分後には、早くも興津埠頭に停泊するちきゅうの姿が見えてきました。
興津埠頭の先には、清水港特有の青いガントリークレーンが並ぶコンテナターミナルが見えます。通常の遊覧船でも人気のスポットです。
その10分後、船はちきゅうにさらに接近。乗客にはちきゅうを紹介する資料が配られ、乗船していたガイドが、ミッションや船の大きさについて解説しました。
解説を聞きながら、乗客は一斉にちきゅうにカメラを向けていました。ここが、このクルーズのハイライト。確かに道路から見るよりも近く、船の大きさをより実感できます。船に乗って海側から、埠頭に停泊している船を見るというのも、不思議な気分です。
しばらくその場で停泊したあと、船は方向を変え、一路、清水港へ。
野生のイルカが登場のサプライズ
あとは港に帰るだけだと思っていましたが、ここでサプライズがありました。船の周りに野生のイルカの姿が…。帰り支度をしていた乗客は大興奮。クルーズの主役は、ちきゅうから一転、イルカに。
この日は、ほかのクルーズではイルカを見ることができなかったということで、ちきゅうに加えてイルカまで見られる、お得なクルーズとなりました。
●参加者
・女性(50代・静岡市)
「過去のツアーの評判が良かったので参加しました。説明が分かりやすくて面白かったです。ちきゅうは、乗れるものなら実際に乗ってみたいけど……」
・女性(60代・静岡市)
「いつもは通りから見ていて、埠頭に写真を撮りに行ったこともあります。海から間近で見てみたいと思って参加しました。ちきゅうがレアアースを取りに行ったニュースをテレビで見ましたが、その時までちきゅうのことは知りませんでした。そんな船が清水に停泊していることにびっくりしました」
Q.外から見るだけですが?
「本当は、船を地元向けに公開していないかなと思って探しましたが、そういうものがなかったので、外から見るこのツアーに参加しました」
・男性(20代・静岡市)
「普段、よく停まっているところを見ていますが、海から見るチャンスはなかったので興味がありました。レアアースの採掘をニュースでやっていましたが、いつも見ている船が重要な役割を担っているのは、地元民として誇らしいです。小さいころ、ちきゅうに乗船したことはありますが、よく覚えていません」
・女性(30代・静岡市)
「クルーズ船が好きで、よく乗っています。LNGタンクやガントリークレーンも好きです。今回はちきゅうについて解説もあるので楽しみです。船内で船員がどんなことをしているのか、興味があります。実際にちきゅうの中に入れたら面白いのに」
乗客に話を聞いたところ、「いつも停まっているところを遠くから見ているが、もっと近くで見てみたい」と、わざわざ参加したという地元の人が多くいました。
そして、「昔から清水港にちきゅうが停まっているのは知っていたけど、2月にレアアースの採掘に成功したというニュースを見て、『そんなすごい船だったんだ』と改めて認識した」という声も多く聞かれました。
年内にも一般公開あるか?
今回は、ちきゅうを外から見るだけのツアーでしたが、「中はどうなっているの?」「実際に乗ってみたい」という声も多く聞かれました。
実は、過去には静岡市が主催し、一般の人がちきゅうの内部を見学するイベントが2019年まで行われていました。
静岡市によりますと、その時は2日間でおよそ6000人がちきゅうに乗船。船外から見ていた人も含めると、およそ1万人が清水港を訪れたということです。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、2019年を最後にイベントは行われていません。あれから7年。世の中の関心が高まる中、そろそろ、ちきゅうの一般公開が復活してもいいころです。
年内にも一般公開が期待されています。9月ごろに発表があるかもしれません。
※静岡朝日テレビでは、池上彰さんがちきゅうの潜入取材を行った「静岡のチカラ」を9月9日午後6時57分から放送します。