徳川慶喜公の屋敷跡でビアガーデン! 「敷居が高い」イメージを覆す静岡・浮月楼の夏の楽しみ方

夏の風物詩・ビアガーデン。ビアガーデンというと、実際にはデパートやビルの屋上というイメージが一般的です。しかし、静岡市には正真正銘の「庭園(ガーデン)」で楽しむビアガーデンがあります。しかも、そこは徳川慶喜公の屋敷跡という意外な場所です。(取材・文=三浦徹)

徳川慶喜公の屋敷跡でビアガーデン! 「敷居が高い」イメージを覆す静岡・浮月楼の夏の楽しみ方

静岡駅にほど近い料亭「浮月楼」。1891年に静岡の迎賓館・料亭「浮月亭」として開業し、現在は「浮月楼」として、料亭や結婚式場、催事場、レストラン、バーなどとして利用されています。

静岡駅近くの「浮月楼」
静岡駅近くの「浮月楼」

徳川慶喜公が居住した「浮月楼」

この浮月楼は、江戸幕府の15代将軍・徳川慶喜公が大政奉還後の1869年から1888年まで居住した屋敷跡として知られています。

徳川慶喜公が居住
徳川慶喜公が居住

庭園は国の登録記念物です。庭園の北側に立つ「明輝館」は国登録有形文化財に登録され、毎年、将棋のA級順位戦最終局(名人戦の挑戦者を決める対局)が行われています。過去には名人戦も開催され、藤井聡太名人も何度もここを訪れています。

藤井聡太さんも何度も浮月楼を訪れている(2023年)
藤井聡太さんも何度も浮月楼を訪れている(2023年)

なぜビアガーデンを始めたのか

そんな浮月楼で、2025年から始まったのが庭園のビアガーデンです。(期間は9月30日まで)

入場は無料で、予約も不要です。(ただし池の上に設けられたステージ席は人気のため、予約がおすすめだということです)

では、なぜ歴史ある浮月楼がビアガーデンを始めたのでしょうか?

●浮月楼レセプション課ビアガーデン担当 沓澤良太さん
「昨年9月からビアガーデンを始め、毎日ほぼ満席でお客様に好評だったので、今年は6月から本格的に開始することにしました」

――なぜビアガーデンを?
「『浮月楼』の名前は知っているけれど、中に入ったことはないとおっしゃる方はまだまだいらっしゃいます。やはり歴史がある場所というイメージがあるので、敷居が高いと思っている方も多いようです。私たちは浮月楼を多くの方々に知っていただき、実際に来ていただきたいと思っています。ビアガーデンがそのきっかけになればと思って始めました」

看板を見てふらっと訪れる人も
看板を見てふらっと訪れる人も

「敷居が高い」イメージも

浮月楼では、料亭やレストラン、宴会などで食事を楽しむことができますが、静岡市民にとっては「特別な日に訪れる場所」というイメージもあり、価格もそれなりです。

しかし、多くの人に来てもらいたいと始めたビアガーデンでは、その点も考慮されています。

●浮月楼レセプション課ビアガーデン担当 沓澤良太さん
「ビアガーデンはレストランに比べてご利用しやすい価格にしています。枝豆や冷やしトマトなど、今まで浮月楼では扱ってこなかった親しみやすいおつまみメニューがあるのも特徴です。やはり皆さんに知ってもらいたいという思いが強いです」

一方で、「ブランドイメージが下がる」という意見はなかったのでしょうか?

●浮月楼レセプション課ビアガーデン担当 沓澤良太さん
「ビアガーデンを始める前は、社内にそういう声はありました。でも、まずは来ていただかないと始まらないということで決断しました。お客様の声を聴くと好意的なご意見が多く、口コミサイトでも好評です。『日本一きれいなビアガーデン』という声もいただきました」

ビアガーデンは午後4時にオープン。早い時間から利用するお客さんの姿も見られます。

まだ早い時間にもかかわらず多くの利用客が
まだ早い時間にもかかわらず多くの利用客が

静かに楽しむビアガーデン

あたりが暗くなってくるにつれ、客席も埋まり、提灯や行灯が灯ります。月が昇ると、さらに風情が感じられます。

やはり通常のビアガーデンに比べると、年齢層は比較的高めで、団体客も少なく、落ち着いた雰囲気です。

ビアガーデンといえば、みんなでわいわい騒ぐイメージがありますが、騒いでもよいのでしょうか?

●浮月楼レセプション課ビアガーデン担当 沓澤良太さん
「もちろん大丈夫です(笑)。こちらからお客様に『騒がないでください』と言ったことはありませんが、会場が騒ぐような雰囲気ではないので、皆さん静かに楽しんでいるようです。年齢層は通常のビアガーデンより高めですが、若い人にも楽しくご利用いただいています」

日が落ち、暗くなってくると、落ち着いた庭園に爽やかな風が吹いてきます。あたりには虫の声も。確かに、騒ぐような雰囲気ではありません。

徳川慶喜公の屋敷時代の趣を残す池泉回遊式庭園は、浮月楼を象徴するスポット。大きな池が特徴です。2025年には国の登録記念物に登録されました。

通常、庭園のみの拝観は実施しておらず、見ることができるのは浮月楼のレストランなどを利用する人に限られます。しかし現在は、ビアガーデンの開催時間に限り、一般に開放しています。

実際に庭園だけを見学したいという人もいたそうですが、見学した後、皆が楽しんでいる様子を見て、ビアガーデンのチケットを購入した人もいたということです。

団体客の利用も
団体客の利用も

「浮月楼」にしては手ごろな値段

料理は、浮月楼ではここだけという枝豆などのおつまみメニューから、天刺丼などのご飯ものまで。枝豆は300円、冷やしトマトは500円と、確かに手軽な値段です。

また、その場で焼いてくれる炭火焼きメニューも名物で、9月からは宮崎地鶏もメニューに加わるということです。

その場で焼いてくれる炭火焼も人気
その場で焼いてくれる炭火焼も人気

会場にはうちわと虫よけスプレー

やはり屋外ということで、虫もいます。会場にはうちわと合わせて虫よけスプレーも置かれています。蚊取り線香も置かれていて、その匂いが「夏」を感じさせます。

会場にはうちわと虫よけスプレーも
会場にはうちわと虫よけスプレーも

ビアガーデンがあったから来れた

●お客さん(3人・50代・静岡市・同じ職場の仲間)
「浮月楼に素敵なお庭があるのは知っていて、行ってみたいと思っていました。食事もおいしそうだし。実際に来てみたら、暑くなくて雰囲気がとてもよかった。芝生と池があって気持ちいい。虫よけスプレーもあるし(笑)。こういうところでお食事する機会はなかなかない。値段もめちゃくちゃ高くはない」

●お客さん(60代・静岡市・夫婦)
「浮月楼に初めて来ました。前を通ったときに一度入ってみたいと思っていましたが、ようやく来ることができました。ビアガーデンがあって入りやすくてよかった」

――来てみていかがですか?
「落ち着いた感じがいい。お料理もおいしい。浮月楼のレストランと比べれば手軽な価格ということですが、一般的なビアガーデンと同じくらいかな。東京にも庭園の同じようなビアガーデンがありますが、値段がとても高い。浮月楼は雰囲気込みの値段としてはリーズナブルだと思います」

●女性(2人・20代・静岡市・職場の友達)
「『値段が高い』というイメージもあって、今まで浮月楼に来たことはありません。他のビアガーデンも考えましたが、浮月楼に一度行ってみたいと思って、ここに決めました。庭の雰囲気がとても素敵です。騒ぐような雰囲気ではありませんが、もともと騒ぐつもりもなかったので、ちょうどいい。落ち着いた雰囲気です」

池の上のステージ席は人気
池の上のステージ席は人気

冬にも実施予定?

屋外なので雨が心配ですが、雨天時は館内のビアホールやバーなど、室内に移動して楽しむこともできるということです。

ビアガーデンは9月30日までですが、浮月楼では12月に「冬のガーデンダイニング&ビアホール」も検討しているということです。名称や企画内容は現在、検討中だということです。

雨天時は館内のビアホールやバーなど室内に移動して楽しむこともできる
雨天時は館内のビアホールやバーなど室内に移動して楽しむこともできる