畳に身を預け、打ちたてのそばと田舎料理に憩う 静岡市「三右ヱ門」

 食事を終えた客が、畳の心地よさに誘われて昼寝をする。そんな話が不思議に聞こえない。静岡市葵区日向、中心街から車で約45分のオクシズにある「手打そば・民宿 三右ヱ門」は、2003年から営む予約制のそば処と民宿。山里の穏やかな景色の中で、時間をかけて昼を味わう場所だ。
 用意されるのは「頑固おやじのこだわり手打ちそばとおふくろの田舎料理フルコース」。細打ちのそばを中心に、玄米ごはん、山菜や野菜の天ぷら、小鉢が食卓を満たす。料理を担うのは、そばを打つ85歳の佐藤勝美さんと妻の眞弓さん。そばが主役であることは揺るがないが、地元の野菜と山菜を使った料理までそろって、三右ヱ門の昼が完成する。

里山の旬がつまったコース
里山の旬がつまったコース

 そばは北海道産のそば粉を基本にした二八。来店客に出す分を、その日の朝に打つ。細めに切られた麺をすすると、そばの香りが鼻へ抜ける。つゆには3種類のカツオ節と昆布、シイタケを使用。だしをしっかり効かせながら、味はきりりと締めてある。もともとそばを出していなかったが、周囲からの助言を受けて始めたという。今ではコースの名を飾る看板となった。

朝、丹精を込めてうたれたそば
朝、丹精を込めてうたれたそば

 季節を映すのが、眞弓さんの天ぷら。この日はカボチャ、オクラ、ミョウガ、シイタケに加え、お茶の芽とお茶の花も揚げる。お茶の芽はかき揚げ風。色が深くなった芽は風味も強いという。白い花の天ぷらには、かすかなほろ苦さがある。日頃は飲み物として親しむ茶を、山里の季節を伝える料理として皿にのせる。

天ぷらはさくっと軽やかな歯ごたえだ
天ぷらはさくっと軽やかな歯ごたえだ

 玄米ごはんを囲む小鉢にも、土地の日常が息づく。ミョウガは湯通しして酢みそあえに。モロヘイヤはお浸し、ゴーヤは苦みを抑えた甘い佃煮にする。ブロッコリーの白あえは、作り方を尋ねた客が家庭で再現し、次の来店時に報告してくれたこともあるという。凝った技を誇るのではなく、素材の味が分かるよう調味を控える。それが眞弓さんの料理だ。

小鉢料理も豊富だ
小鉢料理も豊富だ

 食事の時間が長くなるのは、品数が多いからだけではないだろう。そばをすすり、玄米をかみしめ、小鉢を少しずつつまむ。窓の外にはオクシズの景色があり、足元には畳の感触がある。昼寝をしたくなるほど気持ちが緩む昼ごはんは、街中ではなかなか見つからない。予約を入れるところから、山里へ向かう休日が始まる。

畳に身を預け、打ちたてのそばと田舎料理に憩う 静岡市「三右ヱ門」

手打そば・民宿 三右エ門(さんえもん)
住所:静岡市葵区日向718
電話番号:054-291-2515
定休日:なし
営業時間:11:30- ※要予約 宿泊は(ひとり)9000円~ 1日1組限定・予約制
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