新米の方が古米より安い!? コメ売り場で起きた異変…『令和のコメ騒動』は何だったの 歓喜のおむすび店、悲鳴の農家
伊地健治アナウンサー:「収穫の時期を迎えた田んぼが私の前に広がっています。しかし去年のコメ騒動の影響は今も生産現場に広がっています」
11日に発表された全国のスーパーで販売されるコメの平均価格は、最新のデータで5キロあたり3003円。2000円台が目前に迫るなか、今スーパーではこんな現象が起きています。
新米を5キロ2430円で販売する関東のスーパー。同じようなランクの去年収穫された古米は3014円で新米の方が、およそ600円安くなっています。他のスーパーでも新米の方がおよそ3割安い“逆転現象”が起きていました。
コメ販売店では
そうした実態は静岡のコメ販売店でも…。
伊地アナ:「すごいですね。入ると店頭にずらりとお米が並んでいるんですね。確かに新米と書かれたことがありますよね。手前のこちらは新米ではない、去年産?」
小田米穀 小田礼吾さん:「東北の米とかはまだ古米、令和7年産。あちらは新米の8年産」
伊地アナ:「あきたこまち去年のものが5キロで3250円。ひとめぼれも同じく3250円」
小田さん:「もともとはもう4000円以上だったんですけどね。もうちょっと前は」
伊地アナ:「こちらは富山のコシヒカリ5キロ3480円、さらに新潟や魚沼といくともう4900円とか5000円台」
小田さん:「仕入れが秋の契約でやっているので下げようがないという感じですね」
一方、新米は…。
伊地アナ:「これに対して、新米が茨城のあきたこまちで5キロ2680円。安いですね」
小田さん:「これは本当にきのう入ったばかりなんですね」
伊地アナ:「静岡県産のコシヒカリ、5キロ2,780円、これも県産森町。こっちが2,980円と。確かに去年のお米よりも新米の方が安くなっている」
小田さん:「5kg単位だと安いですね」
去年生活に大きな影響を与えた“令和の米騒動”。その頃農家と密な連携をしていたからこそ、今年は悩ましい実情が。
小田さん:「去年の今頃だと(コメが)もう出てこないんじゃないかぐらいの勢いだったんで、僕も農家さん回ってたり、卸さんに行ったり、農協さんに行ったりして、お米結構集めたんです。そうすると今年、やっぱりその方にもお世話になっているので、やっぱりあまり安くは買えないなとは思うんですけれど…。ちょっと世の中的にあまりにも値段が下がっているので、すごくみんな大変じゃないかなと思う。コメ関係者はみんな大変だと思う」
お米が安くなっても物価高続き おにぎり屋さん10円値下げ
一方、県内にはコメ価格の値下がりで、恩恵を受けたところも…。
去年2月にオープンした静岡市葵区のおむすび専門店「ふじ亭」。
伊地アナ:「こちらでは何種類ぐらいのおむすびを販売されているんですか」
ふじ亭 金子店長:「期間限定のものも含めて15種類ほどあります」
伊地アナ:「ちょっとオリジナリティーのあるおむすびもあるんですね」
おススメメニューの「サクラエビ」はもちろん由比産。静岡県産の食材にこだわる「ふじ亭」は、森町産のお米「にこまる」を使用。
金子店長:「お待たせいたしました」
伊地アナ:「おいしそうなおむすびですね。いただきます。ご飯がやはりおいしい、粒が少し大きめで甘みがあって噛みごたえもありますね」
実は「ふじ亭」、おむすびを全品“10円値下げ”しました。
伊地アナ:「値下げの理由というのはどういうところなんですか?」
金子店長:「新米の価格が今は下がってきている状況なので、それに伴っての値下がりになります」
1日24合、およそ3.6kgのコメを使うという「ふじ亭」。オープンした去年2月といえば、政府が備蓄米を放出した時期ですが。
伊地アナ:「その時の値段と比べるとどのぐらい安くなりましたか? 仕入れ値が」
金子店長:「1キロあたり150円ぐらいですかね」
伊地アナ:「というと、5キロで750円ぐらい、10キロだと1500円ぐらい安くなった。結構大きいですよね」
ただ、物価高の影響は続いているそうです。
金子店長:「お米以外のものは全体的に値上がりしている状況ではあるんですけど…」
伊地アナ:「やはり海苔も、いろいろな具材も?」
金子店長:「ただ、やっぱり皆さんにもっと楽しんでいただきたいという思いで頑張って値下げします」
農家の現場は
伊地アナ:「袋井市に来ています。今年5月に番組で取材したこちらのコメ農家でも、新米の時期、収穫が始まっています。
袋井市のコメ農家「溝口商店」。およそ80ヘクタール=東京ドーム17個分もの広大な田んぼでコメを栽培。この日までに、およそ30ヘクタール分を収穫したそうです。
伊地アナ:「大きなコンバインですね。3台ですか。これ3台全部フル稼働させてコメを収穫?」
溝口商店取締役 溝口洋さん:「どうしても適期で刈りたい。そうなると今回の長雨なんかもそうですけど、長雨になって品質低下を招く前に、刈れる時に一度に買ってしまって処理をしていくというのがうちのやり方です。少しでもいいものを、品質のいいものを出荷したいという形で運営をさせてもらっております」
こちらは、収穫を直前に控えた田んぼ。品種は「にじのきらめき」で、出来は上々のようです。
溝口さん:「私どもは大体平年並みは確保できていると今のところ思っています」
伊地アナ:「品質はいかがですか?」
溝口さん:「品質はそれなりにやはり努力はさせてもらってますので、物的には悪いものではないと思ってます」
去年作ったコメは全て出荷することができたという溝口さん。
伊地アナ:「これは新米ですか?」
溝口さん:「新米です」
伊地アナ:「もうこれだけ刈り取っているということですね」
溝口さん:「出荷自体でいうと、1300俵ぐらいは出荷しております」
伊地アナ:「開けていただきました」
溝口さん:「これが今年の新米。私どもは玄米出荷と言う形でもみを取って出荷している」
伊地アナ:「綺麗ですね」
去年とうって変わって「米余り」が叫ばれる中、農家は現状をどう感じているのでしょうか。
溝口商店取締役 溝口洋さん:「昨年、異常なほど金額が上がって消費が落ち込んでいるのは間違いないでしょうし、それで金額が今度は大幅に下がった。米を買わなくて食べなくてもいい人たちが増えてしまったことによって、消費量が落ちてしまっている。これは一つの原因であろうと。
急激なコメ価格の下落となる中、目安となる農家への前払い金「概算金」も前年より低くなっています。
伊地アナ:「今年の概算金という、いわゆる買い取り価格がだいぶ去年に比べて下がったということで、それで農家の方も大変だという話になってますけど、具体的にはどんな感じなんでしょう?」
溝口さん:「米穀機構が発表したコスト指標と呼ばれてますけれども、あれが2万535円。これが4月の頭に発表されて、それぐらいなら私どもも何とかなるであろうというふうに思っていたんですが、(今期の)静岡県の概算金は1万4000円台。どうしても問屋さんや私どもが売っているものに関しても、やはり金額的にはもう去年の半分以下まで下がってしまった」
伊地アナ:「農家の皆さん、利益が出るんでしょうかね」
溝口さん:「もう厳しいとしか言いようがない。もう利益をここで出す米を販売して利益を出すっていうのはほぼ不可能だと私は思ってます」
新米シーズンではあるものの、すでに来期に向けた懸念材料が目立ちはじめているといいます。
溝口さん:「中東情勢の影響を受けてコストが上がってきてることもあって、早めに資材の手配をさせてもらった。もうそのベースたるや、去年の水準から今年の水準で資材を手配してますから、来年また下がってしまうとまた赤字になってしまうと」
伊地アナ:「本当に作っても作ってもどんどん赤字の赤字が増えていく」
溝口さん:「生き残れない。私ども生活がありますので、正直なところ、もう少しやはり将来が見渡しやすいものにしていただければ。担い手の問題であったり、新規参入であったり、新たな形になってくるかなというふうには期待はしてます。期待ばかりではいけないんですけれども、とにかく目先のことでいうと、安定的な生産ができるような価格であったり、流通であったり、情報であったりを開示してもらえると非常にありがたいなと私どもは思っています」