旬の天ぷらと香り高い手打ちそば、和の時間をゆっくりと 静岡市「蕎麦屋 慶徳」
旬の野菜をからりと揚げた天ぷらに、艶のある手打ちそば。静岡市清水区の「蕎麦屋 慶徳」で、まず味わいたいのが「野菜天種せいろ」だ。サツマイモ、レンコン、ナス、シシトウ、ミョウガ、マイタケの6種類を盛り合わせる。衣はサクサクと軽く、野菜が持つ甘みや旨みを閉じ込めている。庭や花、店構えにも和の趣を取り入れた空間で、ゆっくりとそばを楽しめる。
せいろには本わさびが付き、食べる直前に自分ですりおろす。まずはそばをそのまま。続いて爽やかな辛みを少し添えて。天ぷらと交互に味わえば、香ばしい衣の後に、そばの風味がすっと戻ってくる。完成した料理を前にした時から、すりたてのわさびまで、ひとつの食事として楽しませるメニューだ。
香りの決め手は、店内で行う自家製粉にある。黒い殻が付いたままの「玄そば」を石臼で挽き、野趣のある力強い香りを引き出す。粉から作った生地を一本ずつ丁寧に切り、湯でじっくりとゆでた後、冷水でしっかり締める。歯触りのよいそばをかむと、穀物らしい風味が現れる。専門的な製法を見せるためではなく、一枚のせいろをより香り豊かにするための仕事だ。
肌寒くなる頃には、季節限定の「きんぴらそば」が恋しくなる。温かなそばに、ピリ辛に味付けしたきんぴらを合わせ、キノコも加える。キノコから出た旨みがだしへ移り、根菜の歯触りと辛みがほどよい刺激を添える。せいろとは異なる温かな食べ方で、秋の深まりを感じられる。
そば屋の定番を、野菜たっぷりに仕立てた「野菜鴨せいろ」もある。鴨せいろのつけ汁へ、素揚げや煮物にした6種類の野菜を加える。鴨のコクに野菜の甘みや旨みが溶け込み、だしには豊かな厚みが生まれる。冷たい手打ちそばを温かな汁へくぐらせれば、そばの甘み、鴨の脂、野菜の味が一緒に届く。ごろごろと入った野菜の食べ応えも十分だ。
しっかり腹を満たしたい日には「雑煮そば」。温かなそばへ自家製の餅を2個入れ、鶏肉と野菜も盛り込む。やわらかな餅がだしを含み、かむほどに米の甘みを感じさせる。そばだけでも、雑煮だけでもない。2つを一つの丼で味わえる量感があり、寒さが増す時季には心強い。
慶徳が届けたいのは、そばの味だけではないという。庭や花を眺め、和の店内で落ち着いて食事をする。その時間まで心に残れば、「清水のそば屋といえば慶徳」と思い出す人も増えていくはずだ。旬の天ぷらが替わり、温かなそばが恋しくなるたび、季節を確かめに訪れたい。
蕎麦屋 慶徳
住所:静岡市清水区七ツ新屋2-1-63
電話番号:054-348-6052
定休日:年中無休 (臨時休業あり)
営業時間:11:00-21:00 (L.O.20:45)
Pあり