名店の記憶を残し、揚げたての軽さで再出発 島田市「TenPura 天花」
長く親しまれた味を残しながら、新しい暖簾を掲げる。島田市総合医療センター前の「TenPura 天花」は、名店「そばの花」が2025年に閉店した後、2026年に天ぷらを主役とする店へ生まれ変わった。そば処時代の料理や食材も受け継ぎつつ、一品ごとの揚げ頃を見極めた軽やかな天ぷらで再出発を切っている。
定番の「天ぷらご膳」は、季節によって内容を替える。この日は甘長唐辛子、ミニトマト、ナス、サツマイモ、川根産シイタケなどが並んだ。野菜は「島田まんさいかん」などから仕入れ、できる限り地元産を選ぶ。揚げ油は、竹本油脂のマルホン太白胡麻油と太香胡麻油。ゴマ油特有の強い香りを抑えながら、からりと軽い衣に仕上げる。油の温度、衣の水分、粉の状態をそろえたうえで、素材ごとに違う食べ頃を狙う。すべてを同じ時間で揚げないところに、天ぷら専門店の仕事がある。
川根産シイタケは、小ぶりで肉厚なものを使用。衣を破れば、内側に蓄えた水分があふれ、ジューシーな食感を楽しめる。サツマイモはあらかじめ火を入れ、中をほくほくにしてから油へ。ミニトマトは熱によって果汁が膨らみ、口の中で酸味と甘みが弾ける。梅干しまで天ぷらにするのも面白い。きりりとした酸っぱさが衣の油を切り、ご飯のおかずとして存在感を示す。
丼で楽しむなら「天花丼」。ブラジルピンクという種類のエビをはじめ、レンコンやナスなどを盛り、だしの利いたたれを後からかける。エビにはプリッとした歯応えと甘みがあり、レンコンはしゃきしゃき。ナスは油を含んでやわらかくなる。後がけにすることで衣の食感を残しながら、好みの濃さで食べられる。薬味には、大根おろしやショウガではなくネギを添える。かつてそば処だったことを忘れてほしくないという思いが込められ、途中でみそ汁に入れてもいい。
「鴨ロースト丼」も、そばの花時代から扱ってきた鴨を生かす料理だ。しっとりやわらかな鴨肉に、独自に開発した少し甘めのたれを合わせる。添えるネギは鴨油で焼き、肉の旨みを吸わせる。鴨とネギというそばでなじみ深い取り合わせを、丼に移して食べさせる一品だ。
前の店をなかったことにせず、ネギや鴨などに面影を残す。その記憶を新しい看板の下でどう育てるか。天花の歩みは、揚げたての一品とともに始まったばかりだ。
TenPura 天花(てんか)
住所:島田市野田1224-2
電話番号:0547-35-5078
定休日:水曜日、第2・4木曜日
営業時間:11:00-15:00 / 17:30-20:30 ※夜は土曜日のみ
Pあり