復旧どうする 家康ゆかりの清見寺 城マニアに人気の小島陣屋跡 爪痕は国指定の名勝、史跡にも…
国の名勝庭園が土砂で…
静岡市清水区の清見寺(せいけんじ)。その始まりは1300年ごろと云われ、徳川家康公ゆかりの寺として有名です。中でも美しい中庭は鑑賞用として非常に価値が高く、国の名勝庭園にも指定されています。ところが…。
林輝彦アナ:「足元がかなりやわらかい」
清見寺
一條文昭 住職:「まだずいぶん水を含んでいる」
林アナ:「これは全部土砂?」
一條文昭 住職:「山から流れ込んできた土砂です。この奥はずっと山です。山の奥で崩落があったようで、大雨で全部うちの庭に…」
裏山から大量の土砂や木が流れ込み、美しい庭園が一夜にして泥まみれになってしまいました。きれいに並べられていた小石も今は泥に埋もれています。
一條文昭 住職:「ちょっと想像を絶するような…。ある程度の覚悟はしていたが、ここまで土砂が流れ込んでしまったのかと。最初見た時は一面池の形もわからないようなプール状態でした」
Q:水位は当時どのあたりまで?
一條住職:「向こうの石の上くらいまであった、私が見たときは」
Q:下から約40~50cmはあった?
一條住職:「そうですね。ここの池は半分ぐらいが(土砂で)埋まってしまった」
かつてはひょうたん型の池が2つ並んでいましたが、片方は半分ほどが土砂に埋まってしまい、住んでいた魚もいなくなってしまいました。
市の指定文化財の建物も被害に
清見寺
一條文昭 住職:「こちらのほうはかなり大きな岩も。ここから庭園に(土砂が)入ってきましたので。床下の縦格子を突き破って、これは書院という建物ですけど中に土砂が流れ込んでいる」
市の指定文化財に登録されている建物も被害に遭いました。
一條文昭 住職:「(建立は)江戸時代の終わりくらい。そのままの状態で200年くらいでしょうかね/私が来てからは一番ひどい被害」
住職の経験の中ではこれまで2度ほど大雨による被害を受けたといいますが、
庭園が原型をなくすほど大規模なものは、今回が初めてだといいます。
一條文昭 住職:「清見寺の庭を楽しみに見に来てくれる人もいるので、こういう土砂まみれの庭になってしまったので/言葉を失ったというか… さすがに気落ちしました」
被害にあった庭園や建物は今も手つかずの状態。住職は復旧の難しさを感じています。
一條文昭 住職:「まず勝手にできない、指定の文化財なので。やはり指示をもらわなければ手をつけられない。国の指導・補助をもらいながら復旧に努めていくということですね」
こちらは国指定の史跡…
一方こちらは、静岡市清水区の小島陣屋跡(おじまじんやあと)。2006年に国指定の史跡になりました。ところが…
林輝彦アナウンサー:「国の指定史跡に登録されているこの場所でも土砂が崩れました。目の前には住宅街が広がっているんですが、ブルーシートに覆われているこの「のり面」が崩れ、住宅に土砂が流れ込んだ。トタンが剥がれかかっていることがわかりますし、その隣の建物は土砂のようなものの跡が残っていて窓の格子も外れかかっている」
大雨の影響で陣屋跡の「のり面の」一部が崩れ、下の民家に土砂が押し寄せました。市によると、およそ400立方メートルの土砂が崩落したということです。土砂が家の1階部分を突き破るなど、民家3棟が壊滅的な被害を受けましたが、奇跡的に全員が無事でした。
住民は命からがら…
今回、被害にあった家の住民に話を聞くことができました。
Q:ここはどういう部屋だった?
被害にあった住民:「ここは台所です。ここに冷蔵庫があったりして、食器を洗う場所があって(午前)3時20分ごろ、すごい雨だった。その時にドカーンと音がしたので雷が落ちたと思って窓を開けたら、ずっとここまで土砂が来て。新車がここに1台置いてあったけど、その新車もダメ。犬を外に飼っていたけど、その犬も命からがらに息子が(犬小屋の)屋根を外して助け出した」
当時、住民の女性は、キッチンの奥の部屋で寝ていました。運よく土砂がその手前で止まったため、九死に一生をえましたが、土砂が崩れてくるとは夢にも思わなかったといいます。
Q:これまで石垣やのり面が崩れたことは?
被害にあった住民:「ないです。ここはない。私は大丈夫だここはと思っていた。ところが…ねえ。びっくり本当に。雷落ちたかと思ったらとんでもない。まさかこれが崩れるとは思わなかった」
今は市の補助を受け、同居する息子と一緒に近くのアパートで暮らしています。他の被害を受けた2棟の住民も同様に、一時的に別の場所で暮らしているということです。
被害にあった住民:「あれま、こんなことってあるのかなと思ってさ。さみしいけどしょうがない。運命、やっぱり。命あってのあれかなと思って」
市は2022年度中にも崩れたのり面の地盤調査を行う方針だということです。