朝と昼、2度の市場通い 「目利き」一代で築いた浜松の55年 「大船」
浜松市中央区半田町の海鮮料理店「大船」の大将、森益男氏の1日は、魚の鮮度と向き合う仕入れのルーティンから始まる。55年にわたり、この地で「鮨・うなぎ・割烹」の暖簾を守り続けてきたこの店は、大将自らの「目利き」こそが看板なのだ。1日に2度市場に出向くその揺るぎない品質へのこだわりが、創業当時から通い続ける客だけでなく、その子供や孫世代までを魅了し続けている。
その日の最高の獲物が集結するのが、店の顔とも言える豪華な「船盛」だ。器いっぱいに盛り付けられたメバチマグロ、カンパチ、マダイ、ホタテ、サーモンといった魚介類は、どれも肉厚に切られている。特にこだわりのメバチマグロは、ねっとりとした食感と濃厚な旨味が際立ち、鮮度への妥協がないことを物語る。
職人としての歴史を感じさせるのが「特選にぎり」だ。中トロ、カンパチ、コハダ、赤貝など12貫が並ぶその姿は、まさに海の宝石箱。特筆すべきは、コハダの締め方や穴子の炊き上げ方など、全てのネタに施された繊細な仕事。シャリとネタが口の中でほろりと解ける感覚は、熟練の技を持つ鮨職人だからこそ成し得る妙技である。
ランチなら評判の「桜海老のかき揚げ定食」は外せない。釜揚げされた桜海老を惜しみなく使い、豪快に3枚も揚げられたかき揚げは、サクサクとした食感と、海老の香ばしさ、凝縮された甘みが口いっぱいに広がる。
魚を知り尽くした大将が提供する「金目鯛の煮つけ」も絶品だ。伊豆半島沖で揚がった上質な金目鯛を1尾丸ごと、濃いめの煮汁でしっかりと煮込む。箸を入れるとホロホロと身が解れ、骨の髄まで旨味が染み込んだその滋味深さは、白飯を呼ぶ最高の贅沢である。
「真面目にやることですかね」と、55年の秘訣を静かに語る大将の森氏。今日も大船は、変わらぬ「本物」の味を届け続けている。
大船
浜松市中央区半田町182-1
電話番号:053-435-3751
定休日:木曜日
営業時間:11:00-14:30 L.O.14:00/17:00-22:00 L.O.21:00
Pあり

