切り分けて味わう一貫 清水港で出会う“巨大マグロ寿司” 「海山」
箸ではなくヘラで切り分ける。そんな一貫から、この店の物語は始まる。JR清水駅から歩いてほど近い、河岸の市まぐろ館の一角にある「清水港 海山」。窓の向こうに広がる海を眺めながら、港で揚がったばかりの魚を味わう時間が流れている。
まず目を奪うのが、名物の巨大マグロ寿司だ。使われるのは、その時々で選ばれるキハダマグロ。脂は控えめだが、鮮やかな赤身の色合いが際立つ。切り身を幾重にも重ね、長さはおよそ30センチ。一般的な握りとは別次元のサイズだが、ただ大きいだけではない。口に運ぶと、さっぱりとした甘みが広がり、噛むごとに繊維がほどけていく。
この一貫の下には、さらに楽しみが潜んでいる。ネギトロ、生シラス、イクラが重なり、層ごとに異なる旨味が顔を出す。生シラスは時期によって釜揚げに替わることもあるが、その柔らかな食感が全体をまとめる役割を担う。食べ進めるほどに味の重なりが増していく構成だ。
対照的な軽やかさを見せるのが、桜えびのかき揚げとミニちらしがセットとなった「花ちらし」。細かく刻んだ桜えびと万能ネギを合わせ、揚げ時間はわずか20秒ほど。高く立ち上がる形状のまま、一気に火を通すことで、外側はサクッと軽く、中はふんわりと空気を含む。噛んだ瞬間、桜えびの甘みと香ばしさが一斉に広がる。
そこに添えられるミニちらしも抜かりない。マグロ、イカ、サーモン、ネギトロと具材が重なり、ひと口ごとに異なる組み合わせが楽しめる。さらに甘エビの旨味をしっかり引き出した味噌汁が寄り添い、食事全体に奥行きを加える。
もう一皿、時間の積み重ねを感じさせるのがマグロのかま煮だ。醤油、砂糖、みりんをベースに、継ぎ足しながら使われるタレ。そこにマグロの旨味が溶け込み、深みのある味わいをつくる。身は箸を入れるとほろりと崩れ、繊維の中までしっかりと味が染みている。
「清水港 海山」は、豪快さと繊細さが同居する店だ。視覚で驚かせ、口に運んで納得させる。その振れ幅が、食べる側の記憶に深く残る。海を眺めながら、その一貫をどう切り分けるか。そんなささやかな選択さえ、この場所では特別な体験になる。
清水港 海山
静岡市清水区島崎町149まぐろ館2階
電話番号:054-351-1223
定休日: なし
営業時間:10:00-20:00 L.O.
Pあり