最初のひと口は麺と澄んだ鯛だしだけで 磐田市「鯛そば のり」
丼の中には、澄んだスープと麺だけ。具は別の皿に盛られている。磐田市小島の「鯛そば のり」が、まず味わってほしいと考えるのは、国産鯛から引いた繊細なだしだ。先代は同じ場所で寿司店を40年間営業。2020年の代替わりを機に「すし天やまだ」として新装し、2023年からラーメン店の営業も始めた。
看板メニューは「鯛そば はじめ(壱) 塩」。国産鯛の頭と骨を弱火にかけ、臭みを出さないよう時間をかけてだしを取る。透き通ったスープには自家製の鯛油を加え、鯛の香りと旨みにコクを補う。麺は京都の製麺所「麺屋棣鄂」の細いストレート麺。北海道産小麦「キタホナミ」を使い、もっちりした歯応えを持たせながら、小麦の香りが繊細なスープを覆わないよう選んでいる。まずは具を加えず、麺とだしだけですする。途中で液体柚子こしょうを2、3滴。爽やかな香りと辛みが加わり、塩味の穏やかなスープがきりりと締まる。
トッピングを別皿にする理由も明快だ。具の味をスープへ移さず、鯛の味を直接感じてもらうため。自家製の鯛しんじょは、凝縮した鯛の旨みとふわふわした食感が特徴で、好みのタイミングで丼へ加えられる。あらかじめ全部を盛り付けるのではなく、客が食べ進めながら鯛そばを完成させていく。
麺を食べ終えたら、「お焦げ茶漬け」へ。焼きおにぎりに、ゴマだれで和えた鯛の身をのせた締めの品だ。残ったスープは、土瓶に入れた焼き石で再び熱くする。ジュッと温度を戻した鯛だしをお焦げへ注げば、焼いた米の香ばしさと魚の風味が重なる。店によれば、鯛そば以上に鯛の風味を感じられるという。スープを余さず味わうための、もうひとつの主役である。
濃厚な味を求めるなら「鯛そば かすみ(霞) 塩」。こちらは鯛の頭と骨に酒粕を加え、強火で3~5時間煮込む。白濁したスープをハンドブレンダーで攪拌し、乳化させることでクリーミーに仕上げる。澄んだ「はじめ」と原料は同じでも、火の強さと時間によって表情は一変。中太ちぢれ麺が、とろみを帯びたスープをしっかり運ぶ。
もう少し食べたい時には「燻鯛和え玉」。燻製した鯛の身を入れた替え玉で、混ぜそばのようによく混ぜて味わう。澄んだだしで始まった食事の最後に、燻香のある麺を加える趣向が面白い。
金土日の夜だけ「すし天やまだ」も同時営業している。寿司店として魚に向き合ってきた場所で、鯛は澄んだ一杯にも、白濁した一杯にもなる。どちらを選んでも、鯛の味を曖昧にしない点は変わらない。最初は何も足さずにすする。その店のすすめに従うことが、鯛そばを知る一番の近道だ。
鯛そば のり
住所:磐田市小島779
電話番号:0538-32-5359
定休日:月曜日
営業時間:火曜~木曜 11:00ー14:15/17:45ー20:30 / 金曜 11:00ー14:15/17:00ー21:00 / 土曜・日曜 7:00ー 9:15/11:00ー14:15/17:00
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