【記者解説】誘拐・自殺ほう助で猶予付き判決のポイントは?

争点は、「誘拐」の事実が認定されるか否か

石田和外アナ:「ここからは取材した斉藤記者です。裁判の争点は何だったのか?」

画像: 争点は、「誘拐」の事実が認定されるか否か

斉藤慎一朗記者:「未成年者誘拐罪の成立が争点となっていました。もともと、今回の事件では被告と匂坂さん、もう1人のSNSで知り合った未成年者と集団自殺を計画していました」

「弁護側は被告がSNSで知り合った2人に『怖くなったら、いつでもやめていいよ』などとSNSでメッセージを送っていたと主張していました。ただ被害者に強い自殺の意思があり、主導したのは匂坂さんで誘拐は成立しないと訴えていました」

「一方、検察は『練炭自殺を実行するためには、車で現場に向かうなど、自殺に協力してくれる大人が必要。被害者に自分が車を運転できることを伝えたことや、練炭や睡眠薬を用意した一連の行動は誘惑に値する』と主張していました」

「そして今回の判決では、検察側の主張が認められ誘拐の事実は認定されました」

判決のポイントは2つ

石田アナ:「今回の判決のポイントは?」

斉藤記者:「2つあります。1つは誘拐が認定されたこと。2つ目は、その一方で執行猶予が付いた判決になったことです」

「まず誘拐については、被告が用意した七輪や睡眠薬、これが15歳の少女1人では用意できるものではないと指摘。また、未成年者が行方不明になれば親が警察に相談し、捜査が始まってしまう可能性があるため、発覚防止のためメッセージアプリの履歴の削除をルールに決めるなど、社会経験の差を踏まえて提案したとしています」

 「このような一連の言動で、被害者は被告を信頼するようになった、つまり判断を誤らせて誘拐したと認定しています」

石田アナ:「判決では誘拐は認定されましたが、執行猶予付きの判決になりました」

斉藤記者:「この判断には事件当日の動きも大きく関わっています。もともとは被告、匂坂さん、もう1人の未成年者と3人で集団自殺を計画していましたが、この別の未成年者については、事件当日に警察官が自殺計画を知り、計画から離脱しています。その際に被告はこの計画事態の中止を提案していました」

「一方で、被害者が強い自殺願望を訴えたため、犯行に及んだため、この点は酌むべきであると判断されました」

背景にあった学校のいじめ「問題解決の道はまったく開けていない」

石田アナ:「事件の背景には、匂坂さんが学校で受けた『いじめ』も関わっています」

斉藤記者:「匂坂さんの両親は、いじめが発覚した際の学校側の対応に問題がなかったか調べるため、当時の第三者委員会の資料の開示を求めてきました。一部、公開されたもの、黒塗りの部分が多く、『問題解決の道はまったく開けていない』と判決後にコメントしています」

「両親は事件後に匂坂さん自身の情報提供に踏み切り、実名報道をすることで、同様の事件が少しでも防げればと願っています。遺族は今後、学校側に更なる情報の開示、または学校側を相手取った損害賠償請求についても検討しています」