元園長ら起訴内容を認める 父親が直接元園長に質問を「千奈が一人で亡くなったときの気持ちを考えたことがあるか」

幼い命が奪われた事件。注目の初公判です。おととし牧之原市の認定こども園で通園バスに置き去りにされた河本千奈ちゃんが死亡した事件で、業務上過失致死の罪に問われている元園長と元担任が起訴内容を認めました。きょうの裁判で初めて明かされた事実も。 

 おととし、牧之原市の認定こども園で当時3歳の河本千奈ちゃんが送迎バスにおよそ5時間置き去りにされ、重度の熱中症で死亡した事件。

 幼い命はなぜ奪われなければならなかったのか。

 静岡地裁で開かれた注目の初公判には、28の傍聴席に対して67人が訪れました。

傍聴希望者:
「全国的にもニュースになっているので、それで興味があって両親の発言や被告人の発言に興味がある。どんなふうに言うか」

 23日朝、裁判所に入った当時の園長の被告(74)。

 元園長は運転していた送迎バスの車内確認を怠ったとして、また、当時のクラス担任の被告(48)は、保護者に確認の連絡をしなかったとして、いずれも業務上過失致死の罪に問われています。

 23日の初公判で2人はいずれも「間違いありません」などと、起訴内容を認めました。

法廷内イラスト

 事件があったおととし9月5日、牧之原市の最高気温は30.5℃。

 検察の実験では、千奈ちゃんが発見された午後2時7分までに
車内の温度は44.9℃まで上昇したといいます。

 千奈ちゃんは上半身の服を脱いだ状態で見つかり、朝母親に入れてもらった水筒いっぱいの麦茶が空になって落ちていました。

こども園 元園長(おととし):
「本当に苦しい思いをさせて申し訳なかったな、と今は感じております。暑い中、よくあんな中でいて、本当にかわいそうだったなと感じています。僕もいつもはやっていなかったので、運転をするというのが不慣れだったというのが、一つの原因だと思います」

 園は事件から1カ月後に再開。

 遺族に「廃園」を約束したものの、反故にした状態が続いています。

河本千奈ちゃんの父親 去年8月:
「娘に対する大切な思いというのはずっと変わらずありますし、(園に対する)怒りとかそういったものは事件当初よりもさらに強くなっています」

河本千奈ちゃん

 23日の冒頭陳述で検察側は、車内に残った千奈ちゃんが他のバスを見て声を出していたにも関わらず、元園長の被告がそれに気付かずにバスを施錠したと指摘。

 千奈ちゃんの声がバスのドライブレコーダーに残っていたことを明かしました。

 一方、弁護側の被告人質問で増田被告は事件について、「腹立たしく思った。してはいけないことをしてしまった」と振り返り、遺族に対して謝罪した上で、賠償する意向を示しました。

栗田麻理アナウンサー:
「被告人質問では、質問と答えが噛み合わないことが多く、また元園長は廃園に関する質問は全て「申し訳ありませんが私の口からは言えません」と答えていました。」

検察官:
「当日バスの運転をすることになった。どんな子なのか確認したのか」

元園長の被告:
「していません」

検察官:
「子どもの安全のため確認しなければいけないことがあるという意識はなかったのか?」

元園長の被告:
「…そうは思いません」

 また、被害者参加制度で裁判に参加した千奈ちゃんの父親が質問する場面も。

千奈ちゃんの父親:
「千奈がバスの中で一人で亡くなったときの気持ちを考えたことがあるか」

元園長の被告:
「はい。苦しい思いをしていたろうと思う」

千奈ちゃんの父親
「廃園にすると約束したのではないか」

元園長の被告:
「私の言葉からは言えません。」

 次回の公判は5月15日、元担任の被告への被告人質問が行われます。

法廷内イラスト