「完全責任能力があった」と認定 浜松市で親族3人を殺害した罪に問われた被告の男に懲役30年の判決 静岡地裁浜松支部
3年前浜松市で親族3人を殺害した罪に問われた元警察官に対し、地裁浜松支部は懲役30年の判決を言い渡しました。
元警察官の男性被告(25)。2022年3月、浜松市の自宅で同居する祖父ら親族3人の頭をハンマーなどで複数回殴り殺害した罪に問われています。
2024年10月に開かれた初公判で被告は起訴内容を否認。
さらに…
◆被告「別人格のボウイが殺したと思う」
ボウイとは被告が持つとする別人格だといいます。過去に家庭内で受けた虐待の影響で、自分自身の中に複数の別人格が存在すると説明。その中のボウイという別人格が犯行に及んだと証言したのです。
◆検察官:
「ボウイには人をコントロールしようとする特性がありましたか?」
◆被告:「ありました。威圧的で命令的になる部分があって逆らえません」
検察も被告の別人格の存在は認め、「責任能力の有無」が大きな争点となっていました。
検察は論告で被告は3人の殺害に続けて、及んでいることから「被告が主張する人格の入れ替わりはなかった」と指摘。凶器を準備したことや血の付いた犯行着衣を洗って証拠隠滅を図ったことを踏まえ、「完全責任能力を有している」として無期懲役を求刑しました。
一方、弁護側は「別人格のボウイによる犯行で行動をコントロールできない状態だった」と無罪を主張。
検察側と弁護側の主張は真向から対立しました。
「完全責任能力があった」と認定
●梅田航平記者:
「犯行は別人格によるものなのか。被告の責任能力はどう判断されるのか。注目の判決公判が間もなく開廷します」
そして15日午後1時半…。
◆裁判長:「主文・被告人を懲役30年に処する」
地裁浜松支部の来司直美裁判長は「被告は怨恨や憤怒から強い殺意を持っていて殺害する動機があった」と指摘。第三者による犯行の可能性がないこと、被告人が証拠隠滅を図ろうとしたこと、取り調べ時に「ボウイ」の状態で自白したことなどから、犯人は被告で間違いないとしました。
そして最大の争点となっていた被告の責任能力については「完全責任能力があった」と認定。
さらに被告の別人格については、別の個人ではなく、いわゆる主人格にも怒りや攻撃的な感情があると判断しました。
一方で犯行時は「ボウイ」の状態で行動制御能力が低下していたとして、減刑の理由を説明しました。