基準の220倍のPFAS(1) 難波市長「非常に大問題」 広範囲で基準超えて検出 静岡市
伊地健治アナウンサー:「静岡市の上下水道局が管理する雨水ポンプ場です。市の追加調査で、この施設の排水からは桁違いの濃度の化学物質が検出されました。静岡市の難波市長はこの施設の道を挟んで、化学工場の化学物質の濃度の非常に高い地下水が何らかの理由で、雨水幹線に入り込んだのではないかとみています。さらに雨水ポンプ場を経た水は、このような水路を通って海に排出されています」
「PFAS」が検出されたのは静岡市の三保半島。住宅や農地が広がる中に大きな化学工場があります。静岡市清水区にある三井・ケマーズ フロロプロダクツ清水工場では、「PFAS」と呼ばれる有機フッ素化合物の一種で、発がん性などが指摘される「PFOA」を2013年まで使用していました。
難波市長「非常に大問題」
この日も静岡市の担当者が工場周辺の水を、検査するために採取する姿が見られました。
11月、静岡市は会見を開き、この工場の周辺の水路や井戸から、高濃度の「PFAS」が検出されたことを明らかにしました。市は検査結果の信頼性を確かめるため、市の研究所以外にも別の機関に検査を依頼、また、調査範囲を三保地区以外にも広げるなどして水質検査を行なってきました。
そして12日火曜日。
静岡市 難波喬司市長(12日):「当初、我々はこの工場からの排水を問題にしていましたが、静岡市の雨水ポンプ場から出ている濃度が非常に高いということがわかりました。これは非常に大問題であるというふうに思っております」
化学工場の向かいにある、市の雨水ポンプ場から国の暫定目標値の220倍という、とても高い濃度の「PFAS」が検出されたのです。
「PFAS」は「テフロン加工」のフライパンやはっ水加工のあるレインコートなど身近なものに広く使われてきました。しかし、その一部である、PFOSやPFOAといった物質には発がん性などが指摘されたことから、日本では10年前、使用や輸入が禁止されました。
難波市長「しっかりと情報提供する」「井戸水を飲むのは避けて」
今回、高濃度の「PFAS」が検出されたことについて、静岡市の難波市長は…。
静岡市 難波喬司市長(12日)
「水道水を飲んでいる限りは、健康への影響はないと思われますので、過度なご心配はいただかなくてよいと思いますけれども、やはり、そうはいいながら不安がおありになると思います。したがって、しっかりとした情報を提供してまいります」
一方、PFASが検出された井戸水については…。
静岡市 難波喬司市長:「飲むのは避けた方がいいですが、それ以外でですね。例えば、散水に使ったり、何か洗浄に使ったりするというところは特に問題はないレベルだと思います。データとしては、そのようなものになります」
三保地区の農家は…
井戸水を飲用以外に利用することには特に問題がないとしています。三保地区で20年以上、専業農家をしている宮城島さん。作っているトマトはJAに出荷したり、無人販売しています。この時期、ビニールハウスの中ではキュウリを育てているそうです。育てるのに使っているのは井戸水。
伊地アナ:「今回の化学工場のPFASの問題ですけれどね。連日報道されてますけど、そのニュース受けてどんな風に感じてらっしゃいますかね?」
農家男性:「やっぱりショックでしたね、最初は。ウチも市の職員の方が地下水検査したいとみえました。結果がつい4、5日前に届けに来たんですよ。飲料水ではちょっとまずいけど、そんなにレベル的には悪いレベルが高いわけじゃないという結果だったもんですからね」
伊地アナ:「国の暫定目標値1リットルあたり50ナノグラムという、それは上回る?」
農家男性:「それはなかったですね。同じ三保でも地域によって違いがあると思うんですけども」
検査を行ったという井戸水を見せていただきました。
農家男性:「検査はこれが井戸水ですね」
伊地アナ:これをポンプで引きあげてるんですか?
農家男性:「ポンプです。各温室の水やりも、(地面の)下にパイプが通ってまして、それで水やりは行っています」
井戸水はこの黒いタンクへ溜められた後、細い管を通ってキュウリの苗のポットにいきわたる仕組みです。
伊地アナ:「水だけで使うケースもあるし、ここへ肥料とかも混ぜて薬剤とかですね」
農家男性:「もう命ですね。水がないと。もうどうしようもないですね」
伊地アナ:「もし、井戸水が使えないとなったら他に選択肢あるんですか?」
農家男性:「考えたことないですね。とりあえず水道、莫大な量使いますからね、その時は考えますけど、廃業可能性も、なきにしもあらずですよね」
伊地アナ「やっぱり水道に変えるといくらかかるか分からない」
農家男性:「もう極端でしょうね、違いは」
さらに地形などの関係からPFAS濃度が低いとされていた工場から数キロ離れた折戸や駒越地区の井戸水でも暫定目標値の50ngを上回る場所がありました。
市の調査によると、三保地区の井戸11カ所で1リットル当たり100~1700ng、折戸地区の井戸2カ所で170~360ng、駒越地区の井戸3カ所で150~210ngのPFASが検出されたといいます。
折戸、駒越地区に住む人は…
新たに高濃度のPFASが検出された、折戸、駒越地区に住む人は…
駒越地区周辺住人
「ちょっとびっくり、そういった話を聞くと。テレビとか報道では三保の方で(PFAS)があったというのは聞いていたが、駒越であったというのはきょう初めて聞いた。自分よりも若い人、子どもとか赤ちゃんとか、そういう人は困りますよね」
折戸地区周辺住人
「やはり怖い。いざ、これ(井戸水)を使ってくださいと言われた時に、私は多分使えない。今後5年、10年先を考えた時に、それ(PFAS)をどういう風に薄められるのか、綺麗にできるのか、自然に戻せるのであれば、そういったことを考えて(市は)努力していく必要があるのでは」