【特集】災害時に避難所に行けない子どもはどうしたらいい? 静岡・富士市で保護者達が意見交換会

災害時に避難所に行けない!

 地震など、大規模災害時には多くの場合、小中学校が避難所として開設されます。しかし、最近は様々な理由で、避難所の生活になじめない子どもたちの避難が深刻な問題となっています。静岡県富士市ではそのような子どもを抱える保護者らが、意見交換を行う会が開かれました。(取材・文=三浦徹)

 3月1日に富士市役所で行われた会には、自閉症やADHD等の子どもをもつ保護者や、子どもの居場所づくりにかかわる人など35人が参加しました。富士市がこのような会を開くのは今回が初めてです。なぜこのような会を開いたのでしょうか?

●富士市 防災危機管理課 統括主幹 太田智久さん:
「能登半島地震の際に、自閉症などの子どもを抱える家族が避難所に行けなかったというニュースが報じられました。それを見て、『自分の子どもも避難所にいけないかも』という危機感を持ったお母さんたちから、市でもこの問題を考えてほしいという要望があり、今回初めてこの会を開きました」

Qこれまで富士市ではそういう事態を想定していましたか?
「お年寄りや赤ちゃんなどの対策はありましたが、富士市ではこのような事態を今まで想定していませんでした」

 会では富士市で子どもや母子家庭の支援活動などを行っているNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」の渡部達也さんが、実際に避難所で起こった事例について報告しました。渡部さんは2011年の東日本大震災の際にボランティアとして、宮城県など被災地を19回訪れたということです。

 渡部さんは、緊急速報の音にパニックになるASDの子どもや、みんなが集まっていることにはしゃいでしまうADHDの子などを持つ家族が、冷たい視線に耐えられず避難所を出て、車で過ごした事例などを説明しました。東日本大震災の時にも、避難所の生活になじめない子供たちの避難は大きな問題となったといいます。

富士市役所
富士市役所

「学校」という場所に抵抗がある子どもも

●NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん:
Q発達障害の子どもを抱えた家族が避難所にいけないという事例は多いのですか?

「災害が起きて、ようやくみなさん避難所に来て、やれやれと思ってるところに、奇声をあげたり走り回っている子どもがいると『勘弁してよ』って空気になります。そんな空気を感じて、そっと半日で避難所を出ましたという話は聞きました」

 避難所を出た人たちは不安を抱えながら、家や車で過ごすケースが多かったということですが、避難所にいないと食料が手に入らないという問題もありました。また、食料に関しては発達障害の子ども特有の問題も…。

●NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん:
「発達障害の子は偏食の課題を抱えている子も少なくありません。被災地で配られる支援物資はおにぎりとかパンとかすぐに食べられるものが多いのですが、それらを食べられないという子もいるでしょう。そうした子への配慮も求められます」

 また、ひきこもりや不登校など「学校」という場所に抵抗がある子ども達もいたということです。

●NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん:
「不登校の原因となった、顔も見たくない同級生、先輩、先生がいて、みんな学校に避難していたら、そこにはいきたくないと思いますよね。またそういうこととは別に、校舎や体育館など、学校を象徴するような建物に足が向かない子もいるでしょう。『非常時だから』とそこを割り切れるくらいだったら、その子たちはそもそも不登校になっていないと思います。そうしたことへの対策も考えたいですよね」

NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん
NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん

公助だけじゃ回らない!

 このあと参加者たちはグループに分かれ、避難について感じていることを話し合いました。参加者の多くが実際に子どもを抱えています。

 1時間を超えるフリートークでは、「避難所の運営ではどうしても高齢者に目が行きがちだが、子どもにも目を向けなくてはいけないと感じた」「学校にいけない。大人数が苦手な子はどこにいけばいいのか」「災害時は大人も子ども普段通りの行動は難しい。普段の防災訓練が大事」などといった声が聞かれました。やはり避難に不安を感じる保護者は多いようです。

●NPO法人「ゆめ・まち・ねっと」 渡部達也さん:
「一番強く思ったのが、公助だけじゃ回らない、行政だけでは被災者の支援に手がまわらないと感じました。『自閉所の子も入れる避難所を作れ』とか『不登校児も入れる避難所を作れ』ってやっても限界がある。平時から不登校児の親の会を作って、子どもたちが集う場所を作っておく。そうすれば、小学校の体育館には行けないけれど、きのうまで遊んでいた場所なら行くことができる。そういう所もあるというのを市にも認識してもらい、そこを『みなし避難所』として物資など公の支援もする。行政とそういう連携ができればべストかな」

●富士市 防災危機管理課 統括主幹 太田智久さん:
「みなさんがどんな不安を持っているかということは、行政として理解する必要があります。今回の会でそういうことが分かったのは大きな成果だと思います。それにどう対応していくかというのは行政だけでできないことも多い。学校ですごしにくい子どもたちについては、渡部さんのように普段から接してる人たちに災害時にも協力を求める必要がある。そのためにどんなバックアップができるのかを行政として考えていきたい」

東日本大震災の時には被災地を19回訪れた(提供:渡部さん)
東日本大震災の時には被災地を19回訪れた(提供:渡部さん)