膠着の静岡大・浜松医大再編に新たな動き 浜松市中心に期成同盟会 静岡市長「いかがなものか」 静岡大学長「困惑を覚える」
「1法人2大学」で合意も静大静岡キャンパスから反対の声
静岡大学 石井潔学長(当時・2018年):「静岡大学と浜松医科大学を1つの法人の傘下に置いて、東西2大学案で連携協議を進めていこうと」
少子化を背景に文部科学省が大学の統合や連携を促していたこともあり、両大学は統合・再編に向けた連携協議会を設置。浜松医大と静大浜松キャンパスの工学部と情報学部を統合して1つの大学をつくり、静大静岡キャンパスの学部で1つの大学とするいわゆる「1法人2大学」構想がここからスタートします。
浜松医科大学 今野弘之学長(2018年):「医学と工学・情報に精通した人材の育成や地域の企業と一体となり産学官連携により、新たな産業創出というものも十分に考えられる」
その翌年には運営法人を統合し、2つの大学を設立することで両大学が合意書を締結。一方で、静大の静岡キャンパスからは根強い反対の声が…。
静岡大学理学部 坂本健吉教授(2019年):「1つの大きな総合大学が、小さいながらも知の拠点としてあったものが分断されてしまうと、浜松ではたった3学部、静岡ではたった4学部の小さな大学になってしまう」
反対の静大と推進の浜松医大の溝が埋まらず…計画は延期に
その後、2020年に行われた静大の学長選では、再編に慎重な立場を取る日詰一幸教授が選出されます。
静岡大学 日詰一幸教授(2020年):「反対意見もあれば賛成意見もあるわけだから、その双方の合意点を導き出せないものだろうかと思っている」
統合・再編に反対の立場の静大側と、推進の立場の浜松医大。互いの溝が埋まることはなく、2021年1月には計画の延期が発表されます。
浜松市が中心となり期成同盟会立ち上げ…静岡市長「いかがなものか」
膠着状態に陥った計画を前に進めるために、今回浜松市が中心となって立ち上げたのが期成同盟会です。浜松市は県内21の市や町に参加を呼び掛け、県西部のすべての市や町、それに県東部の御殿場市や富士宮市なども参加することに。経済界や各市町の議会にも賛同が広がっています。立ち上げにあたっては浜松市の鈴木康友市長と浜松医科大学の今野弘之学長がそろって自治体を訪問し、期成同盟会の趣旨を説明したこともあったといいます。
浜松側の動きに、静岡市の田辺市長は…。
静岡市 田辺信宏市長(1日):「これは大学自治の問題でありますので、期成同盟会を作ることはいかがなものかなと私は思います。静岡大学が今後どうあるべきかという日詰学長の考え方を、私たちは下支えをするということであります。どうも期成同盟会は浜松ありきと、私には思われます。そうではない。こんなことで地域対立してはいけない」
浜松市による期成同盟会の立ち上げに対し、静岡大学の日詰学長も会見を開き、“大学の主体性”を強調します。
静岡大学 日詰一幸学長(9日)
「このような動きが出てきていることに驚くと同時に困惑を覚えているというのが、正直なところです。大学としても、大学のことは大学が主体的に決めるべきではないかと考えている」
突然浮上「1法人1大学」案
その上で、こんな提案も…。
静岡大学 日詰一幸学長:「2つの大学を1つの大学にしていくことがひとつの選択肢、あるいは最善の選択肢としてあるのではないか。2つの大学が1つになれば、大学の壁とか、あるいは地域の壁というものもなくなり、教育研究、あるいは地域貢献においても真の融合が生まれ、さらにその成果が静岡県全体へと波及しているのではないかと、このように受け止めています。しかしながら、浜松医科大学並びに浜松市になかなか理解をいただけていない」
個人的な考えとした上で、2019年に両大学が合意した「1法人2大学」ではなく、「1法人1大学」も選択肢との認識を示しました。急浮上した格好の「1法人1大学」案。この案について、浜松医大の今野弘之学長は―
浜松医科大学 今野弘之学長(23日):「正直大変驚き困惑しました。浜松医大としては当初から単純な大学統合は選択肢に全くないということを申し上げ、ご理解いただいていると思っていたから。単に学部を増やすということだけで競争に打ち勝つのは、なかなか難しいのではないかと思っている」
「1法人2大学」を目指す理由については…。
浜松医科大学 今野弘之学長:「地域特性を生かした先鋭的な2つの大学に再編して、その2つの大学が法人統合することにより経営力が強化され、高い付加価値を持つ特色ある法人が誕生する。そして2つの大学がそれぞれの地域に拠点を置くことにより、迅速な意思決定が可能となり、機動性が飛躍的に高まる。結果的にこの2大学の連携によって、法人全体が県東部も含む全県に対する貢献が増していくものと考えている」
今野学長は統合・再編を加速させ、早ければ2024年度から学生を受け入れる準備を始めたいと話します。
一連の動きについて、川勝知事は…。
静岡県 川勝平太知事(16日):「今、日詰私案というのが出されて、従来の合意とは違う案ですね。ですから、それは合意した者としては、どうなっているんですか? というのは当然でしょう。ぜひ学長としては、ここは自らが学長になった公約通り、この問題を解決するために強いリーダーシップを発揮していただきたいと思う」