建築費高騰→入札参加業者ゼロ→あてにしていた国の交付金は100億円減 /どうなる静岡 県立中央図書館(前)

伊地健治アナウンサー:「JR東静岡駅の南側にある、こちらの広い駐車場、ここが、新たな県立中央図書館の建設予定地です。しかし、現状では着工はおろか、完成の時期も見通せない状況となっています」
これまでの、県立中央図書館に変わり、2028年、新たに開館予定だった新・県立中央図書館。
入札に参加する業者ゼロ
しかし…
静岡県教委担当者「入札不調という取り扱いになりました」
2024年実施した工事の入札に、1社も名乗りがなかったのに続き、今度は、あてにしていた国からの交付金が、大幅に減額されることが明らかに。県の負担増加は避けられない状況となっているんです。
その負担増加額は、なんと100億円あまり。総事業費298億円のうち、136億円を国の交付金でまかなう予定だったのが、34億円程度にとどまることがわかったんです。
なぜこのような事態になってしまったのか。私たちは、この県立中央図書館の建設計画を取り仕切る、県教育委員会を直撃。
静岡県教育委員会 山下英作理事:「今年の初めぐらいですけれども、国土交通省の方から『静岡県が希望しているような金額を満額交付するのは難しい』と。驚いたっていうのが、率直な感想になります。

県立中央図書館利用者「今のままでも…」
県立中央図書館建設のために要望した交付金は136億円。それに対し、実際の交付額が34億円と大幅に減ることがわかりました。
伊地健治アナウンサー:「日本平の裾野に位置するこの場所。坂を上がってきますと、木々に囲まれた、とてもいい環境の中にあるのがこちら。県立中央図書館です」
図書館の利用者は…
利用者「使いやすいです。自習室も色々場所があって。今のままでもいいんじゃないかなっていうのはあります」
利用者「静かな感じと、あと自然ですかね。美術館も一緒にあるので、とりあえず気が向いた時に散歩ができる。立地的にはいいところなので、新しく建て直すのもいいんですけど、修繕をしながら、この立地を生かした形でやっていただきたいなという思いはあります」

老朽化やスペース不足が悩み
しかし、この県立中央図書館。完成が1969年と古く、老朽化が進んでいます。
山崎琢也記者:「図書館1階の書庫に来ています。天井を見てみますと無数のひび割れが走っています」
スペース不足も深刻です。
蔵書は、開館時のおよそ2倍となる95万冊まで増え、20万冊ほどは、閲覧できない状態での保管を余儀なくされています。

移転案は川勝前知事の時代
県立図書館に移転話が持ち上がったのは、川勝前知事の時代。「文化力の拠点づくり」の一環としてJR東静岡駅前の、県有地への移転が決まります。
川勝平太前知事:「様々な選択肢を検討した結果、県立中央図書館の機能を全て東静岡に移転し、整備することが最善との結論に至りました」
新県立図書館は9階建てで、延べ床面積はおよそ2万平方メートルと現県立図書館の倍以上。蔵書可能数もおよそ200万冊と現在の2倍以上となり、公立の図書館としては国内最大級です。県産木材をふんだんに使う独創的な造りで、1階と2階には「交流の場」として、多目的ホールやカフェなどが併設されます。
川勝平太前知事:「旧来の図書館とイメージが違ってくるのではないか。あの辺(東静岡)は若者の街に変貌できればいいかなと希望している」
しかし、その後は、順調とは程遠い道のりを辿っていました。当初、192億円と試算していた事業費は、資材価格や人件費の高騰によって、100億円余り増加し、298億円まで膨らみます。県は総事業費298億円のうち、136億円を国の交付金で賄う計画でした。
