「くまモン」「広島東洋カープ」 全国に広がる自動車の「図柄ナンバープレート」 導入には自治体で温度差 静岡県は「富士山ナンバー」のみ
10月から11月にかけて東京ビッグサイトで行われた「Japan Mobility Show 2025」。最新技術の車など注目された展示が目白押しの中、会場には地味ながら注目されるブースがありました。そのブースでは車には欠かせないあるものが展示されていました。(取材・文=三浦徹)
東京ビックサイトで行われた「Japan Mobility Show 2025」。11月9日に閉幕し、会場にはのべおよそ101万人が訪れました。
大手自動車メーカーが、最新技術を披露した大型のブースは大勢の人で混雑しました。
一方、隣のホールに設けられていたのが、全国自動車標板協議会が出展した「ナンバープレート展」です。自動車にかかせないナンバープレートの歴史などがわかる展示です。
今回の目玉が、全ての図柄ナンバープレートの展示です。「地方版」と呼ばれる全国各地の73種類など、現在国内で交付されている全ての図柄ナンバープレートが一堂に集められています。訪れた人は自分のゆかりのナンバーを見つけて、写真に収めていました。
自動車のナンバープレートは、通常、無地のプレートに数字が書かれていますが、プレートに様々な図柄が描かれているのが「図柄ナンバープレート」(以下図柄ナンバー)です。
国土交通省によりますと、「走る広告塔」として2017年に「ラグビーワールドカップ」と「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の特別仕様の図柄ナンバーが初めて導入されました
また2018年からは地域振興・観光振興に貢献するため、地域の魅力ある風景や観光資源を図柄にした、図柄ナンバープレート(地方版)の交付が開始されました。現在(2025年11月)73地域で交付されています。
地方版の図柄ナンバーは、その地域の観光資源が描かれています。例えば「滋賀」ナンバーは「琵琶湖」、「広島」ナンバーは「広島東洋カープ」が描かれていて、「熊本」ナンバーはマスコットキャラクター「くまモン」が描かれています。
全国的に広がる図柄ナンバーですがあまり縁がない地域もあります。
記者は正直、図柄ナンバーについて、今回展示を見るまで意識したことがありませんでした。(不勉強で申し訳ありません)。なぜなら静岡県内で図柄ナンバーを見る機会があまりなかったからです。
静岡県には5つのナンバーがありますが、図柄ナンバーが導入されているのはご当地ナンバーの「富士山ナンバー」のみ。「富士山ナンバー」の登録者が全員「図柄ナンバー」を選ぶわけではなく、今まで通りの無地のナンバーを選ぶ人も多いといいます。
国土交通省によれば、2025年3月末時点の「富士山ナンバー」の保有台数は43万250台。そのうち図柄ナンバー(地方版)の車両数はおよそ3.86%の1万6605台。静岡県全体でみるとその割合は0.6%にすぎず、静岡県内で図柄ナンバーを見る確率は少ないと思われます。(数字は「富士山ナンバー」の静岡県分のみ。軽自動車含む。)
なぜ静岡県は図柄ナンバーが少ないのでしょうか? 観光に力を入れている静岡県なので、導入してもいい気もします。
国土交通省に尋ねたところ「静岡県の自治体から導入したいという声がないのでは」とのことでした。
確かに「図柄ナンバー」の導入手続きは、「地域を構成する全ての市町村が合意した上で、国土交通省に申し込む」となっています。
実際に導入を検討している自治体では、地元で様々な活動をしています。
岡山県は「岡山県みんなでつくる図柄ナンバー会議(仮称)」を開き、現在、導入に向け議論しています。
記者は長年、静岡県庁で取材をしてきましたが、図柄ナンバーについて協議された記憶はありません。
この件で、国土交通省中部運輸局を通じて静岡県に取材を打診したところ「現状では県として図柄ナンバープレートの導入の機運がないため取材対応ができない」との回答がありました。
全国に広がる図柄ナンバーですが課題もあります。
国土交通省の「図柄入りナンバープレート等に関する検討会」の参考資料によれば、2025年3月末時点の図柄ナンバー(地方版)の普及率(保有台数の中で図柄ナンバーを取り付けた台数の割合)は一番高い奈良県の「飛鳥」ナンバーで8.86%。、2年前に導入された大阪府の「堺」ナンバーは0.43%しかありません。
図柄ナンバーが導入された地域でも、「あまり見たことがない」というと感じる人は多いのではないでしょうか?
「図柄入りナンバープレート等に関する検討会」の中間とりまとめでも、「制度持続性の観点では、図柄ナンバープレートの種類の多寡だけでなく、それぞれの交付件数を増やすことが重要である」とされています。
なぜ、図柄ナンバーの普及率が低いのでしょうか?
要因のひとつに考えられるのは交付手数料です。ナンバープレートの交付業務などを行っている静岡県自動車会議所によれば、富士山ナンバーで、通常のナンバープレートを取得するには中型で1980円の交付手数料かかりますが、「図柄ナンバー」にすると、交付手数料は9820円かかります。(フルカラーにするとさらに1000円以上の寄付が必要)
最後に、自分の地域にないという人も、期間限定ですが、図柄ナンバーをつけることは可能です。「全国版」と呼ばれる、47都道府県の花をモチーフとした図柄ナンバーは、全国どこに住んでいる人でもつけることができ、希望する人は年々増えているそうです。また、横浜市で開催される「2027年国際園芸博覧会」の特別仕様の図柄ナンバーも、どの地域の人でもつけることができます。
自動車のナンバーで、他車との差別化を図りたいと考えている人は「図柄ナンバー」を検討してはいかがでしょうか?
