川勝前知事「リニアはいらない」発言から9年…静岡工区着工に大きく前進 それでも開業は早くて10年後 県関係者「前知事は…」
リニア工事着工に向けて大きく前進しました。26日開かれたリニアに関する県の専門部会。課題とされていた28項目の対話が完了しました。
静岡県専門部会 岸本部会長:「この対話の完了をもってすべてが終わりではなくて、今後も県とJRがちゃんと対話して、そこに専門家も関わっていくということについては変わりなく続いていくのかなと考えている」
長年続いてきたリニア新幹線の工事をめぐる専門部会。水問題を筆頭に注目されてきた静岡問題は1つの節目を迎えました。
久須美舞記者:「これから開かれる会議では、生物多様性に関する議論が行われます。JR東海の提案に対する委員らの了承が出れば静岡工区の着工に向け大きく前進することとなります」
長年議論がつづいてきたリニア新幹線の工事をめぐるいわゆる「静岡問題」。この問題が大きな節目を迎えました。およそ8.9キロにわたって南アルプスにトンネルを掘る「静岡工区」。県はこの工事の許可の条件として「水資源」「生物多様性」「トンネル発生土」という3つの分野28項目の課題解決を上げています。残るは「生物への影響」を議論する8項目。26日、これを専門家やJR東海らが話し合いました。
JR東海担当者:「導水路トンネルの出口となる椹島において、河川本流に接続するまでの区間にトンネル湧水を活用した湧水生態系を創出し自然環境を創出することに取り組んでいく」
具体的な代償措置について説明したJR東海。この他にも高山植物の食害対策として防鹿柵を設置することや発生土置き場に苗木を植樹することなどを挙げました。
JR東海担当者:「工事により損なわれた自然環境を上回ることを目標に、順応的に取り組みの見直しや追加を行っていく」
これに委員たちからは…。
増沢武弘委員:「在来植生で単なる緑化ではなくて、南アルプスの植生を学べる教育の場になるように計画する。ここはネイチャーポジティブ(自然再興)につながる」
竹門康弘委員:「現場を見ながら順応的に進める必要があるし、長時間かけて確認しないと絵に描いた餅で終わる可能性もあるので、どんな時間スケールで進めるのかを検討いただきたい」
そして、午後4時…。
岸本年郎部会長:「今回議題とした8項目について対話完了となりました」
専門部会で承認された生物多様性への対策。これで残っていた8項目の対話が完了し、「静岡問題」に関する対話は終結しました。およそ10年の時を経て前進することになるリニア工事。
「リニア新幹線など静岡県にはいらない」
静岡県 川勝平太知事(当時 2017年10月):「何のメリットもないリニア新幹線など、静岡県にはいらない」
遡ること9年前。リニア問題が膠着状態となったのは、川勝前知事による突然の反対表明からでした。背景にあったのはトンネル工事によって大井川の流量が最大で毎秒2トン減るというJR東海による試算です。南アルプスを視察した際には…。
静岡県 川勝平太知事(当時 2020年7月21日):「静岡県が遅らせていると言っているのは誰か。(国交省の)水嶋ですか!江口ですか!藤田ですか!それともJR東海の社長・副社長ですか!」
2027年開業に間に合わせる“最後のタイミング”として開かれたJR東海金子前社長とのトップ会談でも…。
川勝知事(当時)×金子社長(当時)(2020年)
金子社長:「水の問題を疎かにするつもりはないとか、なし崩しでトンネル掘削を始めるつもりはないことを約束したい」
川勝知事:「これはですね、大井川の水で作られた牧之原台地のお茶で…」
鈴木知事「スピード感をもって事を対処していきたい」
文字通りお茶を濁したような会談に終わり、事態の打開には至りませんでした。ところが、鈴木知事の就任により、潮目が変わります。
静岡県 鈴木康友知事(2024年6月):「スピード感をもって事を対処していきたい」
言葉通り、2025年6月には「一番の課題」とされていた水問題の議論が終了。24日の会見では、静岡工区着工のタイミングについて言及しました。
静岡県 鈴木康友知事(24日):「地域の皆さんにJR東海としての説明をしていただかなければいけないと思うし、そうした周辺環境も含めて、そういうものが整った時点で私自身の(着工の)判断をしたいと思う」
JR社長は
県庁で専門部会が開かれている時間帯、JR東海は今年度最後となる社長会見を開きました。
JR東海 丹羽俊介社長:「工事の着手に当たって地域の皆様のご理解が大変重要であると考えている。静岡県・静岡市そして大井川流域市町の方々とも意見交換を重ねて、地域の皆様のご理解、ご協力を得られるように真摯に取り組んでまいりたい」
静岡県関係者「前知事は1つ1つにいちゃもん」
長年議論が続いてきたリニア問題。静岡県側の関係者からはこんな声が…。
県の関係者A:「対話が終わったのは1つの節目だが、これからが大事。モニタリング体制についてしっかりチェックしていかなければいけない」
県の関係者B:「川勝前知事は整理された1つ1つにいちゃもんをつけていてスピード感はなかった。鈴木知事は科学的知見を重視して進めていた。今後は県民や流域市町の理解を得るためにJR側の説明が重要になるだろう」
品川~名古屋間の工事の中で最難関とされる南アルプス。静岡工区は着工から少なくとも10年かかるとされていて、今年中に工事が始まったとしても開業は早くて2036年となる見通しです。
静岡県 平木省副知事:「28項目の対話が終了したが、専門部会での議論は約10年かかったので、全てにおいて議論が結論に達したことについては大きな節目だし、非常に感慨深い」
JR東海静岡工事事務所 永長隆昭所長:「ひとつの節目になると考えていて、双方向のコミュニケーションを深めていく中で、静岡工区の着手についても一日でも早くできるように努めていきたい」
着工時期について、平木副知事は…。
静岡県・平木副知事:「諸条件がクリアされるのであれば年内もありえる」
全国から注目されてきたリニアをめぐる静岡県の動向。県の着工判断のタイミングとJR東海の対応が今後注目されていきそうです。