月額6000円でタクシー“乗り放題”…その安さの秘密は? 業界も運転手不足対策に期待 静岡・藤枝市で実証実験
“静岡県内初”となる“新たな交通サービス”。11月からその実証実験が藤枝市でスタートしました。その名も、「ふじえだmobi(もび)」。地域の課題を解決するかもしれない“相乗りタクシー”です。
静岡・藤枝市 北村正平市長:「本市の市民生活の課題解決に資する取り組みで大きな期待を寄せている。市としても、この民間事業者主導の大きな挑戦に対して強力にバックアップを行ってまいりたい」
『相乗りタクシー』月額6000円で“乗り放題” 1回500円での利用も
藤枝市長も期待を寄せる“相乗りタクシー”の利用時間は午前7時から午後10時までです。その最大の特徴は、大人は月額6000円で“乗り放題”だということ。また、「乗り放題」プランでなくても、距離に関係なく1回あたり500円で利用することもできます。実は“安さ”の背景には普通のタクシーとは違う点があります。この「乗り放題タクシー」は、どこでも乗り降り自由なわけではなく、JR藤枝駅から半径2km以内に設けられた273カ所の乗降地点を行き来する形となります。長距離移動の手段としてではなく、“ちょっとそこまで”の移動を主な目的としたサービス。
運転手不足対策の『新たな一手』
運転手不足に頭を抱えるタクシー業界にとっても“新たな一手”になるといいます。
静鉄タクシー取締役営業部長 森田陸(あつし)さん:「タクシーの供給不足で、お客様に大変ご迷惑をおかけしているので、たくさんある需要を束ねて、地域交通のあり方を再編したい。(通常のタクシーは)高齢の方の利用が多いが、我々の狙いとしては、高齢者以外の大学生や子育て世代のお父さん・お母さんなど、通常タクシーを気軽に利用していない方々をターゲットとしている」
「乗り放題タクシー」の運行をする静鉄タクシーでは、県中部にある4つの営業所で毎日200件近くの配車依頼を断っていて、タクシーの供給不足が課題となっています。そこで、近距離の移動を“相乗り化”することで、タクシーに乗りたいという客の需要に応える狙いがあるのです。
客が9人乗れるワンボックスカーを2台運用し、予約はスマートフォンの専用アプリで行います。アプリを開くと、無数に表示されるMのマーク。これが全て乗り降りできる場所です。JR藤枝駅を中心に市役所や病院、スーパーやコンビニまで細かく場所が指定されていて、この範囲内であれば、どこへ行っても乗り降り自由です。
利用者に密着
では、実際どのように運行するのでしょうか。初めて「ふじえだmobi」を利用する市内在住の石川さんに密着しました。
藤枝mobiを初利用 石川ゆう子さん:「タクシーって言うと敷居が高いイメージがあったが、気軽にアプリで呼べるということで、あとは中学生や高校生の子どもがいて、習い事をしていて送迎が(大変)。夫婦共に働いているので、送迎がすごく大変で、そういうときにも使えるよと友達に聞いて、今回使ってみようと思った」
家族が月額6000円の大人乗り放題プランに加入していれば、同居の家族は1人500円で30日間乗り放題になる特典もあります。日常使いを検討する石川さん。早速、アプリで配車を頼んでみると…。
藤枝mobiを初利用 石川ゆう子さん:「もうわりと近くまで来てます。すごくわかりやすいですねこれ」
ディレクター「タクシーの位置がリアルタイムでわかる」
石川さん「すごいですよね」
数分でタクシーが到着しました。
Q.これからどこに向かう?
石川さん:「これから実家に行くんですけど、その前に実家の近くにある子どもの時から行きつけのおいしい大判焼き屋さんがあるので、そこで買い物をしていきたい」
Q.タクシーを使って実家に戻ってみる?
石川さん:「実家にお土産持って」
大判焼きサービス
たまたま石川さんの実家に近い馴染みのお店が乗り降りのポイントになっていたため、今回は目的地をそこに設定。大判焼きが看板メニューの甘味処です。
実は藤枝市で始まったタクシーの実証実験、「乗り放題」以外にこんなお得なサービスも…。
石川ゆう子さん:「あんこはあと何個ぐらいありますか?」
店員:「4個ですね」
石川さん:「あとすいません。今、藤枝mobiで来たんですけど、これ使えますかね?」
店員:「はい大丈夫です。あんこ1つサービスさせてもらいます」
実は、利用者の特典として、降車後の画面を提示すれば、対象の店舗でお得なクーポンが利用できます。このお店では、「大判焼き」のあんこかクリーム、どちらかが1個無料に。
石川さんの6歳になる男の子も、さっそく大判焼きをほおばりました。
石川さん「おいしい?」
男の子「うん」
石川さん「よかった」
店主も期待
地元の飲食店とも連携したサービスに、店のご主人も期待を寄せます。
まるか村松商店 村松優光さん:「当店を利用したついでに、他の店にも行ってもらって、(地域を)回遊してもらうきっかけが生まれればありがたい」
目的地で買い物をした石川さんは、お土産を手に実家に向かいました。
ちなみに、石川さんが乗車中にもし他の利用者が相乗りした場合、人工知能=AIが最適なルートを計算。客を降ろす順番などを表示してくれるシステムも導入しています。
静鉄タクシー 取締役営業部長 森田陸さん:「当社だけでも毎日200件近くの配車を断っていることを考えると、近距離の需要を「藤枝mobi」ができれば、本業のタクシーの稼働増加につながるので、タクシーの利用自体をもう少し利便性を高めて、どう利用を増やすかに注力していきたい」
藤枝市では年内いっぱい実証実験を行い、その結果を踏まえて来年度以降、本格運行するか検討するということです。