災害の備えは…防災士の自宅拝見(後) 簡易トイレ20日分…それでも「ちょっと足りない」 玄関にはバールも

 電気や水道といったライフラインが復旧するまで、どのように過ごせばいいのか。普段からできる準備について、防災士の波多野友美さんに聞きました。

玄関には「緊急持ち出し用」の防災用品…救助を求める笛も

 波多野家で、もっとも大事にしている備えが実は玄関にあるそうです。

伊地健治アナウンサー「緊急持ち出し用と書いてますね」
波多野さん「家族の人数分。ひとり1個」

 現在、夫と2人暮らしの波多野家では2つのリュックを常に置いています。ヘルメットにゴーグル、救助を求める笛、パニックで忘れがちという靴など、防災グッズのほかに、こんなものも…

緊急持ち出し用リュック

波多野さん「家族にメモを残せるようにメモ、筆記用具、あとは車のカギ、お金、お札と小銭が入ってます」

伊地アナ「現金とは考えたことがなかった」

お金、お札と小銭も

簡易トイレは4人家族で400回分 それでも…「ちょっと足りないかな」

 そして、気になったのが、ゴミ箱。実はこれが、波多野家ならではの備えなんです。開けてみると…

伊地アナ「簡易トイレのキットが入ってる。トイレは一人1日5回、何回分の備蓄?」

波多野さん「およそ400回分。それでもちょっと足りないかな」

簡易トイレのキット

 4人で使えば約20日分の備蓄だといいますが…

波多野さん「今年1月1日に地震、現時点(1月18日)でトイレの回収ができていない。断水、下水の修理もできていない。もうちょっと備蓄を増やしていきたい」

伊地アナ「みんな種類が違うんですね」
波多野さん「いろんな種類を集めて実験している。それぞれの商品によって入っている内容が違う。これはおしりを拭く紙が入ってない」

伊地アナ(左)と波多野さん

 いざ使う時が初めてだと、使いこなせない場合もある緊急用トイレ。買って終わりにしないのがポイントなんだとか。

 さらに、「出したもの」の、その後についても…

波多野さん「災害時用のトイレを使った時に、多少でも匂いがもれてしまうので、匂い漏れ防止ゴミ箱に入れて回収が来るまで自宅で保管する」

伊地アナ「なぜ玄関に置いてある?」
波多野さん「玄関が我が家で一番広かったというのがあるが、外で使うものは外により近い場所に置くというのが片付けの鉄則ですから」

波多野さん

 外ですぐ使えるよう、他に置かれていたのは、モバイルバッテリーを兼ねたランタン。そして、傘立てには…

伊地アナ「立っていたのはバール。これも防災目的?」
波多野さん「そうですね、救助の多少でも助けになれば」

 「驚き」が止まらない、波多野家の玄関。さらに、玄関横の納戸には備蓄品があるそうです。

傘立てにバールも

水は「1カ月分必要」

伊地アナ「おお、びっしり物が詰まっている」

 自転車1台分ぐらいの広さの納戸。まず目についたのは「水」です。

伊地アナ「波多野家の備蓄した水は何リットル?」
波多野さん「180リットル15ケース以上ある」

水は1カ月分

 計算すると4人で10日分以上の量。さらに…

波多野さん「感覚として1か月分あると安心。賞味期限が切れた水も飲めるように浄水器…フィルターが中に入ってまして、プールの水とか川の水とか、賞味期限が切れた水も飲むことができる」

賞味期限切れの水も飲めるよう浄水器も

停電でも暖をとれるストーブも

 次にみつけた、こちらの防災グッズ。ただのストーブではありません。

伊地アナ「あ!ここにカセットを入れるんだ」

 高さ36センチ。重さ約4キロ。1本のガスで約2時間半、温かさを保てるそう。

伊地アナ「ガス 電気がストップしても暖をとれるものになっている。こういう商品もあるんですね」

停電しても暖がとれる

伊地アナ「気になるのはこの丸いものはなんですか」
波多野さん「一人用のテントです。外でトイレする時にこの中で恥ずかしくないように、着替え、あと授乳する方に貸してあげることも」
伊地アナ「プライバシーを守ることができない状況がある」

プライバシーを守るため

便座も…「災害時でもストレスが溜まらないように」

 さらに、面白いものが…

伊地アナ「これ面白い。イスだと思ったら便座。ここにビニール袋をセットすればトイレができる」

 普段と一緒の姿勢だから、災害時でもストレスが溜まらない。折りたたみできるので、持ち運びも簡単です。

便座になるいす

 波多野さんがすごいのは、備蓄したものを管理していた点です。

伊地アナ「全部テープでこれが何と貼っているので、一目瞭然」
波多野さん「私が留守中に家族が被災する場合もある 。家族が見てもすぐわかるように」

 最後にこんな質問をしてみました。

伊地アナ「4人分の備蓄用品、これだけの量を揃えている。なぜそこまで?」

波多野さん「みなさん被災すると避難所に行くと考えている方が多いと思うが、そもそも避難所の収容人数が限られている 全員が行けるわけではない。自宅の耐震と家具の固定をしっかりして自宅で避難生活ができるように心掛けています。ひょっとしたら数カ月なにも助けが来ない状況もありえる。それぐらい備蓄できればいいと思う。かなり金額もかかってくるので 一度に揃えることはなかなか難しい。普段の暮らしをしながら徐々に徐々に増やしていくといい」

波多野さん