「入館料を決めるのはあなた」…タダでもいいの? 水族館がこの試みを始めた切実なワケ 静岡市
静岡市の水族館であるユニークな試みが行われ、注目を集めています。背景にはシビアな消費者の考え方があります。
来館者
「子ども連れでまた来たいと思いました」
「イベント自体が楽しい」
「大成功じゃないかな」
静岡市の水族館で行われている業界初の“ある試み”。お客さんが心躍らせる、その理由とは!?
栗田麻理アナウンサー:「こちらの水族館では今月からある取り組みが始まりました。それがこちら。“入館料を決めるのはあなた”どういった取り組みなんでしょうか」
スマートアクアリウム静岡飼育課 小坂直也課長:「普段入館料を定めてお客さんに前払い制でいただくが、今回は入るときにお金を払っていただかずに、出ていく時にお客様にいくらの価値があったかというのを決めていただいてお支払いいただく」
静岡市葵区のスマートアクアリウム静岡で行われているのは、来館者が満足度に応じて支払額を決める“ポストプライシング”というもの(2/1~3/29 平日限定)。水族館でこのシステムが導入されるのは全国初です。通常、入館料は1400円ですが、もし内容に満足しなければ、極端な話、料金は支払わなくてもいいということになります。
この試みを始めたワケは
栗田麻理アナウンサー:いくらからでも決められるんですか?
A.「はい、こちら0円からでも大丈夫です。」
赤字覚悟で臨む今回の試み。その背景には切実な事情があるようです。
スマートアクアリウム静岡飼育課 小坂直也課長:「一番大きいのは話題作り。入館者数が冬の時期の水族館は落ち着く。平日のお客様の入りがあまりふるっていないという状況が続いていた」
来館者が納得する価格は…
この水族館がオープンしたのは、まだ新型コロナが猛威を振るっていたおととし4月。水槽が49基、およそ150種類の生き物を展示していて、オープン当初は“百貨店の中にある水族館”として話題を呼んでいましたが、来館者からはこんな声も…。
Aさん:「ワンフロアで1400円は高い」
Bさん:「デパートの水族館だから、あまり期待していない」
施設側に届いた厳しい声。来館者の“期待”に応えるためには何が必要なのか? 来館者が“納得”する価格はどの程度なのか? そこでひらめいたのが、今回の「ポストプライシング」という企画でした。有料施設にも関わらず始まった、一風変わった取り組み。狙い通り、客からの注目を集めたようです。
静岡市内30代:「テレビで見たけど、すごいと思って、じゃあ一回行ってみようと思った」
愛知県民:「きょうは愛知県から」
Q.このために静岡に来た?
A.「そうです。平日じゃないと、(ポストプライシングが)やっていないっていうから」
取材したこの日は、子ども連れの家族を中心に多くの客足が…。去年冬の平日と比べて、来館者数はおよそ4倍となったそうです。
子どもたち
「おさかないた」
「のりたい」
「ごめんね」
訪れた子供たちも大満足の様子。水族館の出口にはこんなものも…。
スマートアクアリウム静岡飼育課 小坂直也課長
Q.これは?
A.「館内を見ていただいた後に、皆さんがどう感じたかを知るために作ったシールアンケート」
Q.(価値が)高いとやや高いが大半を占めていますね
A.「非常にありがたい。我々からしてもかなりドキドキする内容。右側(価値が低い評価)が多かったらどうしようかと思うが…」
来館者の『本音』は
訪れたお客さんからは高評価を得られているこちらの水族館。この日は午前中だけで100人を超える来館者があったと言います。一方で、やはり気になるのは、お客さんが“いくら払うのか”です。お客さんの“本音”を聞きました。
静岡市80代:「500円支払おうと思っていたけど、これ(ノベルティ)をもらえるっていうから、1000円に
した」
愛知県:「1000円ずつ。払いやすい金額ということもあったが、初めてこういうところに来て、デパートあるのも楽しいなと思って」
静岡市30代:「1000円でおつりが来たら嬉しいなと思って900円。1400円だと市内からこう身近に来られるという金額ではないのかなと思った。1000円だったら来られるかなと思った」
取材時に多かったのは1000円ほど。多くのお客さんの“評価”は、施設側が設定している1400円に届きませんでした。来館者からは寄せられたシビアな意見。担当者は現状を受け入れて今後に繋げたいと話します。
スマートアクアリウム静岡飼育課 小坂直也課長:「もちろんいくらでも払えるため、最低金額は0円の方もいる。一番払っていただいた方は2000円。(平均して)1000円付近が多いかなという印象。今この水族館に何が足りないのか見えてきている状態。更新していき、さらにお客様が満足できる展示をしていきたい」
魚のエサや施設の維持管理費など、莫大な金額がかかる水族館運営。「お客様の声」を取り入れつつ、魅力的な施設にしていくことが、今の時代の水族館に求められているのかもしれません。