引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

 進学や就職など4月からの新生活を前に今からピークを迎えるのが、引っ越しです。ところが今、引っ越しをしたくても思うように引っ越しができない人が増えているといいます。いったい今、何が起きているのか? 引っ越し業界の最前線を追跡しました。

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

近距離の引っ越しでも予約に苦労

 こちらは、静岡市内の引越し業者。

新静岡引越センター業務部 成澤祐亮主任:「きょうはこちらの1件のみ担当させていただいている。単身の引っ越しだと、1日MAXうちの場合は3件程度やることがある」

 3日前に行われた引越し作業。この日の依頼主は4世代の大家族です。荷物も多いため2トントラック2台が出動、1日がかりの作業になります。

 今の時期は引っ越し業者にとって書き入れ時。スタッフ4人が限られた時間内で作業をしないといけないため、走って移動し次々とトラックに荷物を積み込みます。

 2階のベランダからは重たいタンスが慎重に運び出されました。今回業者に依頼したのは新築の家を建て、仮住まいから引っ越すという家族。静岡市内から静岡市内への引っ越しです。近い距離での引越しでも、予約には苦戦したようです。

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

小笠原さん一家:「4世代ということで荷物も多いんですけど、かなりスムーズにやっていただいた。電話した時に繁盛期ということで、(引っ越しの予約が)多かったが、この時期だったらどうにかなるということで、少し早めに頼んだ」

小笠原さん一家
小笠原さん一家

繁忙期はてんてこ舞い

 引っ越しを請け負った業者は静岡市駿河区広野にある創業50年の「新静岡引越センター」。従業員はアルバイトも含め20人、トラックを7台所有している、地元密着の引っ越し業者です。

 3月は繁忙期ということで電話対応に追われていました。

新静岡引越センター
新静岡引越センター

新静岡引越センター営業部 牧野歩部長:「(繁忙期の今は)毎日電話が殺到していて、(電話を)取り切れない時が多い。3月4月は転勤が多いので、3月中に引っ越ししたい方が結構いる。3月の末は、当社としてもできるだけ断わらないようにしているが、どうしても不可能なのは断っている」

牧野歩部長
牧野歩部長

「物流の2024年問題」が拍車

 そもそも、需要が多い3月から4月にかけての引越し。実は今ここに“新たな問題”が加わったことで、今年はさらに人手が足りなくなっているというのです。

 その問題というのが、「物流の2024年問題」です。

新静岡引越センター営業部 牧野歩部長:「当社は県外に行く便がかなり多いので、それ(物流の2024年)によってドライバーの運転時間が限られてくるので、配車を組む業務の方で、ドライバーになるべく負担をかけないような配車だったり、仕事の件数を調整しようと思っている」

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

 トラックドライバーの働き方改革の一環で4月から時間外労働の上限が年間960時間に規制されます。これによって所得にも影響が出るため、業界では今、運送の仕事を離れる人が出てきているといいます。こうした背景もあり、引っ越し業者側は「仕事を受けたくても受けられない」状況となり、依頼者側も「引越ししたくても引越しできない」状況になっています。

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

遠距離の引っ越しする人「20件ぐらい電話した」

 担当者と話をしているのは静岡から石川へ引っ越し予定の女性です。

女性「立ち合いが3月25日なので、家賃は3月31日まで支払うので、それ(退去日)をずらしてもらう連絡はしてみますけど」

引っ越し業者「できれば25日までに出たいということですよね」
引っ越し業者「お届けするのは4月1日なら大丈夫?」
引っ越し業者「3月29日、30日、31日はちょっときついんですよね」

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

 夫の転勤で静岡を離れることとなった女性。夫と子ども2人の4人家族です。2月末に転勤が決まり、転勤先が石川に決まったのは3月になってからだったそうです。

Q.引っ越し業者はすぐ見つかった?

女性:「全然見つからなかった。20件ぐらいは電話したと思う。(引っ越しの)日も迫っていたので、埋まってしまっていて、まず受けてくれるところが少なかった。値段も繁忙期なので通常より2、3倍すると言われて」

 そんな“引越し難民”となってしまった女性ですが、新静岡引越センターで何とか引っ越しを依頼することができました。

 2024年問題によって既に影響が出始めている引越し業界。ただ、単純に従業員を増やせばいいという問題ではないそうです。

新静岡引越センター営業部 牧野歩部長:「人をたくさん入れると、人件費がかさんでくるので、ガソリン代ももちろんそうだし、年々ガソリン代とか資材が高騰しているので、そういったものがかなり影響が出る」

引っ越し難民も?…「予約取るのに20件ぐらい電話した」 繁忙期に拍車かける「物流の2024年問題」

 全日本トラック協会によりますと、今年の引っ越しのピークは先週末から学校の春休みが終わる4月7日までで、希望日に合う業者が見つからない可能性があることから、業界では日付けをずらす「分散引っ越し」も呼びかけられています。