静岡・焼津市の大井川港にクルーズ船の寄港が決定! 乗客のおもてなしはどうする?
静岡県焼津市は、2027年に大井川港にフランスのクルーズ船の寄港が決定したと発表しました。大井川港にクルーズ船が寄港するのは初めてです。(取材・文=三浦徹)
静岡県内のクルーズ船といえばまず浮かぶのが清水港。コロナ禍以降、年々寄港数は増え、2025年度は100隻を超える船が清水港を訪れる予定です。
清水港ほど多くはありませんが、実は静岡県内の他の港にもクルーズ船は訪れています。県港湾振興課によりますと、2024年度までに静岡県内の港を訪れた船はのべ37隻で、6つの港に寄港しています。(清水港除く)
その中で一番多いのが伊東港と熱海港の11隻で、次いで富士市の田子の浦港と御前崎港の6隻となっています。(残りは下田港2隻、初島港1隻)
今年度には新たに松崎港にも寄港する予定で、クルーズ船の寄港は大井川港が県内9番目となります。
大井川港の寄港が決定したのは、フランスのクルーズ会社「ポナン社」が保有する豪華クルーズ船「ル・ジャックカルティエ」で、2027年3月に寄港する予定です。この船はその前日には田子の浦港に寄港することになっています。
●焼津市 商工観光課 田村至係長:
ーー「ル・ジャックカルティエ」はどんな船?
「乗客は少ないですが、1回の航海で2人で150万~500万円くらいの予算感の高級な船です。南極や北極の探検クルーズなどもやっているポナン社は、日本では瀬戸内海や北前船の航路など、産業や文化がある港を選んで寄るようなクルーズをやっています。清水港とは違い、大井川港は大きさが限られた船しか入れません。いろいろな船会社さんとお話をさせていただきましたが、一番関心を持ってもらえました」
「ル・ジャックカルティエ」は総トン数9900t。乗客店員184人の小型のクルーズ船で、ラグジュアリーエクスペディション(探検)クルーズの世界的リーダーとして、大自然のみならず、地域ならではの文化や歴史体験ができる独創的な船旅を提供しているということです。

しかし現在の大井川港を見ると、クルーズ船が寄港する姿が想像できません。2024年に開港60周年を迎えた大井川港は、静岡県内唯一の市営の港(焼津市営)で、現在利用する主な船は、ばら積み貨物船やタンカー船です。扱っている主な品目は石油類、LPG(液化天然ガス)、セメント化学製品などで、県中部地域の物流拠点となっています。また、漁業の拠点としての機能も持ち、サクラエビやシラスなどが水揚げされることで知られています。
さまざまな産業に重要な役割を果たしていますが、高級なクルーズ船とは結び付かない印象です。焼津市にはほかに焼津港や小川港もありますが、なぜ大井川港に誘致したのでしょうか?
●焼津市 商工観光課 田村至係長:
「焼津港や小川港は漁船の利用が多い港です。大井川港も物流港なので、決していつでも空いているわけではありませんが、焼津市営の港なので、調整しやすいというところが大きいと思います。また焼津市は大井川港を物流とにぎわいの拠点と位置付けています。ここを中心に焼津市、あるいは近隣地域のにぎわいを作ってく場所ということもあり、今回大井川港に誘致しました」
クルーズ船の寄港といえば、重要なのが寄港した後の乗客の時間の過ごし方。清水港の場合は、乗客は観光バスで三保松原や日本平を訪れることが多いといいます。大井川港の場合、乗客はどこへいくのでしょうか?
●焼津市 商工観光課 田村至係長:
「この船は、寄港地ごとにメインテーマがあり、1日の前半はみなさんでそれを体験していただくことになっています。そのあとはフリーな時間というのが基本です。船に戻ってくつろぐお客さんもいますが、外出したいお客さん向けにオプショナルツアーを用意したり、港まわりなどを楽しむ人向けにモデルコースのようなものも用意するつもりです」
ーー大井川港のメインテーマは?
「焼津市には駿河湾があって、近海の魚やサクラエビなど豊かな漁業資源があり、それを生業にしている漁師さんや魚屋さん、水産加工の方などが集まっています。魚がとれるところから口に入るところまで、お客さんが一体で体験できるプランを考えています」
ーー新たな体験施設ををつくるのですか?
「新たな施設をつくるわけではありません。今ある港だったり、事業者さんなど、実際に働いてる場所を見ていただいて、こういう人たちがこういう所で働いて、こんないいものを作っているんだ、というのを少しでも見て知っていただきたい」
ーー「大井川港ならでは」というものがもとめられますね。
「昔ながらの漁師町だったりとか、歴史ある街並みだったりとか地域性みたいなものを非常に大事にしている船なので、焼津についてもそういったものをしっかり見て体験できるようにしていきたい。今は工場も中をみるのが難かしかったりするので、そういったところを整えていく。大井川港ならではのメリット、そういったところをこれから作りこんでいきたいです」
初めての寄港となるクルーズ船。この寄港により「焼津ブランド」がさらに広まることも期待されています。
●焼津市 商工観光課 田村至係長:
「今回焼津が評価されたのは食の部分だと思います。『ふるさと納税』や過去のイベントなどでも『食』がお客さんに一番喜ばれています。改めて焼津は『魚があって食のブランドがあるまち』なんだということを、この寄港をきっかけにしっかりPRしていきたい。海外の方に注目してもらい、日本の人には『焼津が世界で注目されている』ということを知っていただきたい」

ーー今後のクルーズ船の寄港については?
「船は1回来てそれで終わりというものではありません。今回、評価していただければ、2回目も3回目もあるでしょうし、他の船会社さんも来ていただけるかもしれない。またこれをモデルケースとして、船で来るだけじゃなく、海外の方に焼津を旅行先として選んでいただけるようになってほしいと思います」
焼津市では、現時点ではクルーズ船の寄港に向けた、大井川港の大規模なハード整備等は考えていないということですが、入出港時の歓迎やお見送りについては、検討しているということです。また寄港に合わせて乗客だけでなく、市民も楽しめるイベント等も実施したいとしています。
