自治体が「ふるさと納税」増にあの手この手…静岡市は3年で6倍に 県内最下位の長泉町も反転攻勢 静岡

静岡市 寄付額3年で6倍に

伊地健治アナウンサー:「ふるさと納税に力を入れている自治体の1つ、静岡市です。寄付額はここ3年で、なんと6倍に増えているんです」

 静岡市のふるさと納税による寄付額は、2021年度のおよそ4億円から、2024年度はおよそ26億円と6倍以上に。県内のランキングでも、18位から6位にジャンプアップし、上位の常連・浜松市に肉薄するまでになっているんです。

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 ふるさと納税による寄付が急増しているその秘密を知るため、静岡市の担当部署を訪ねました。

伊地アナ「色々な返礼品がありますけれども、きょう、ここにあるものはどういう基準で?」

静岡市財政課 塚本六三四さん「左から順に、人気が高い返礼品をご用意いたしました」

 静岡市の返礼品で人気ナンバー1、清水港で水揚げされたマグロを使ったネギトロは、1万円の寄付で、15パックがもらえます。

 そのお味は…
伊地アナ:「おいしいですね、これは! マグロが濃いってかんじですね。油も…すごく甘みがあるんですけど、さっぱりしたかんじで全然しつこくないですね。人気ナンバー1の理由がよくわかります」

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1番人気の「ネギトロ」の工場では

 静岡市のふるさと納税返礼品、昨年度、人気第1位のネギトロを出荷する工場にお邪魔しました。案内してくれたのは、ネギトロを返礼品にと考案した六鹿(むつが)さん。

Q.こちらが、出荷する返礼品のネギトロですね!結構、詰まってるかんじですね。何ケース?
トライ産業商品本部 六鹿比斗志さん:「250ケースです。実際の中身がこういうかんじで、中に15パックのネギトロが入っています」

Q.返礼品としてどのくらいの量出荷?
六鹿さん:「だいたい今、1日500ケースくらい出荷しておりまして、月だいたい6千ケースくらい出荷します」

Q.きょうはいつもより少ない
六鹿さん:「そうですね、きょうはちょっと少ないんですけども」

Q.ポイント付与が9月で終了、駆け込み需要は?
六鹿さん:「2万ケースくらい。年末と同じぐらいの受注数を見込んで、今在庫を作っている」

 こちらの工場では、9月の駆け込み需要を見越し、1日あたりの製造量を増やすなどして、対応にあたっています。

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静岡市の寄付額が急増したのは

 静岡市の人気返礼品の紹介に戻りましょう。人気ナンバー2は、レンジで1分温めるだけの、野菜たっぷりスープ。その手軽さと、ボリュームたっぷりの具で人気を集めています。

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 その他、最上級の材料を使って作られたツナ缶や全国でも知られているペットフードなどが返礼品人気ランキング上位に名を連ねます。

Q.ここ数年の寄付額の急増なぜ
静岡市財政課 大竹透担当課長:「地元の事業者さんに協力いただいて、返礼品を追加してこれた。それが大きいと思っています。魅力的な返礼品をどれだけご用意できるか。それが寄付額の増加につながるものだと思っています」

 寄付額が増えた大きな要因が返礼品のラインアップの拡充。静岡市では、21年度から返礼品の公募を開始。開始当時、400ほどだった品目は、いまや2900品目にまで増えているんです。

静岡市財政課 大竹透担当課長
静岡市財政課 大竹透担当課長

伊地アナ「これ、ここに並んでるのは、プラモデルとRCカーですね」
塚本さん「はい、そうです」

Q.これは最近返礼品に加わった
塚本さん「はい、サイトに掲載しているのは40種類くらい。RCだと車の種類がそれぞれありますし、戦車、もちろん車のプラモデルも数多くございます」

伊地アナ「静岡ってプラモデルの街ですもんね。ここへ来て品目を増やす中で、せっかくだから、こういった模型もどんどん増やしていこうと」
塚本さん「はい」

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力を入れるのは「返礼品の新規開拓」

 ラインナップのさらなる拡大のため、静岡市が今力を入れているのが返礼品の新規開拓。

静岡市財政課 大竹透担当課長:「地域活性化企業人という制度を使いまして、株式会社JTBから1名職員を派遣していただいています。その方を中心に、市内事業者さんに(ふるさと納税への)参加を呼びかけておりまして、これも非常に効果が大きかった」

 ”地域活性化企業人”とは、企業の社員を、地方自治体に派遣。その知識や経験を元に、地域活性化に貢献する制度。静岡市にやってきた大手旅行代理店の社員を中心に、返礼品の開拓に取り組んだ結果、ここ1年で返礼品がさらに1000品目増えたといいます。

Q.今後の目標
静岡市財政課 大竹透担当課長:「昨年の時点で、やはり流出の方がまだ多い状態なものですから。今年は33億6000万円ほど流出がございます。目標としては35億円を寄付額として集めようとしてますので、目標が達成できれば逆転できると考えてます」

長泉町は返礼品を一気に拡大

 一方、今年に入り、ふるさと納税への本格参加を表明したのが長泉町。

伊地アナ「長泉町にやってきました。県内で最も豊かな自治体と言われる長泉町。なぜふるさと納税に、本腰を入れはじめたのでしょうか」

 人口およそ4万3000人。平均所得、そして財政の自立度をあらわす「財政力指数」。いずれも県内1位の豊かな町、長泉町。そんな長泉町は6月、それまで6品目しかなかったふるさと納税の返礼品を16品目33種類へ一気に拡大したんです。

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特産・四ツ溝柿

 新たに返礼品となった、長泉町の特産・四ツ溝(よつみぞ)柿を栽培する農園を訪ねました。

 50年以上の歴史を持つ下山農園の、2代目の下山祐一さんに案内して頂きます。

伊地アナ「これ全部柿の木ですか?」
下山さん「そうです」
伊地アナ「すごいたくさんありますね」

伊地アナ「実がだいぶついてますね。今後もっと大きくなって、赤くなってくるわけですよね」
下山さん「そうです、そうです」

伊地アナ「どうして”四ツ溝”柿?」
下山さん「4つ溝があって、四角くなる。マンゴーに似たような、そんな柿なので」
伊地アナ「マンゴーに似てる? 相当甘いってことですね」

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 11月から収穫期を迎える愛鷹山麓原産の四ツ溝柿。その由来は、表面についた4本の溝。糖度が18から20度と高いのも特徴です。

 収穫はもう少し先ということで、冷凍保存していたという、こちらも新たに返礼品となる四ツ溝柿の干し柿をいただくことに。そのお味は…

伊地アナ「いただきます。…うーん。結構実がぎっしり詰まってるかんじですね、果肉が多いというか。甘さがしつこくなくて、すごく素朴な甘さなんですね。うーん、これはおいしい。止まらないおいしさです」

 海抜250メートルと、やや高地にあるこちらの柿農園。高地にあることで、昼と夜の寒暖差が生まれ、より甘みが強くなるといいます。また、寒暖の差を大きくするため、秋口になると、柿の木の下に反射シートを敷き、昼間の温度を上げる工夫も。こうした手間暇を惜しまないことで、糖度が高く甘みの強い四ツ溝柿が育つんです。

 長泉町では、生の四ツ溝柿と四ツ溝柿で作った干し柿を、返礼品のラインナップに加えています。

下山さん「色んな方に(ふるさと納税で)認知して頂ければうちとしてもありがたい」

伊地アナ
伊地アナ

地元在住の彫刻家の作品も

 長泉町には他にどんな返礼品があるのでしょうか?

伊地アナ「これは…何ですか?これ」
長泉町企画財政課 市川峻さん「文鎮としてもお使いいただけるような、ネコになってるんですけども、町に彫刻家さんがいらっしゃいまして、全国でも名が知られている、堤先生とおっしゃるんですけども。その方におつくりいただいた作品になります」

伊地アナ「芸術家の方が住んでいて、その方の作品、というのはちょっとビックリしました」

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伊地アナ「これはお菓子のようで…?」
市川さん「長泉ブランド認定品の詰め合わせになってまして…」
伊地アナ「ブルーベリーのジャムですね」

 長泉ブランド認定品の詰め合わせには、長泉でとれたブルーベリーを使ったジャムや長泉町産のやまといもを使用した焼きドーナツ。そして…

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市川さん「あしたか牛のカレー、あしたか牛が町の特産品となってますので、それを使ったカレーになります」

 高級牛肉として知られるあしたか牛は、この詰め合わせに入っているカレー以外にも、単独の返礼品として新たに用意。そして特産の長泉メロンも、新たに返礼品に。

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24年度は県内自治体で最下位

 今年になって、長泉町がふるさと納税に本腰を入れ始めた理由は?

市川さん「当町は年々、流出額が増えておりまして、今年でいうと2億5000万円。この額というのは、これから財政運営を考えていく中で影響がないとは言えない金額になってきてしまった。これが理由です」

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 長泉町ではふるさと納税による流出額が年々増え、今年度は2億5千万円が流出。一方で、ふるさと納税で長泉町に寄付された金額は2024年度1500万円。これは県内35の自治体中、最下位の数字。

 こうした状況を受け、長泉町は、ふるさと納税に消極的だった姿勢を転換したんです。

Q.ふるさと納税額今後の目標
市川さん「7000万円を今年度は目標としております」
伊地アナ「どうでしょう。7000万円越えられそうな手応えはありますか?」

市川さん「そうですね。年末に向けて今、どんどん拡充を進めてますので、頑張っていきたいと思います」