「夢のつり橋」渡れない SLも動いていない… 紅葉シーズン前に苦境の川根本町 寸又峡温泉の打った一手とは
千頭駅周辺はひっそりと…
紅葉シーズンに多くの観光客が訪れる川根本町。全国旅行支援も始まり、これからまさに最盛期を迎えようとしていますが、町の玄関口の千頭駅周辺はにぎわいとは程遠い状況です。
川根本町まちづくり観光協会
戸塚崇 次長:「少し少ないというのは実感としてある」
観光客が見えなくなった理由が…。
伊地健治アナウンサー(島田市・9月25日):「採石場の跡地から土砂が下に流れ下って川沿いを走っている国道を完全に寸断してしまっています。崩れたその先を見てみますと、この下には大井川鉄道の線路が走っているんです。その線路も土砂によって完全に埋まってしまっています」
土砂が流れ込んだのは、島田市福用を走る大井川鉄道の線路でした。線路を埋め尽くす大量の土砂。大井川本線は現在も全線で運休が続いていて、復旧のめどは立っていません。
交通手段であり、観光資源でもある鉄道の復旧が見込めない中で迎える紅葉シーズン。観光業に携わる人からはため息が聞こえてきます。
川根物産
植田浩 代表:「鉄道も止まってしまって本当に今は全然お客様が来てくれていない。これから紅葉シーズンに向かって団体客も増えてくる予定だったが、それも見当外れになってしまった。本当に大変」
運休中の大井川鉄道
運休が続く大井川鉄道も、厳しい経営状況に直面しています。
大井川鉄道 広報
加冷英鵬さん:「紅葉のピークのシーズンで列車の運転ができないという状況になってしまったので、SLの運転もできなければ、レトロな電車にご乗車いただくこともできないというところで本当に厳しいとしか言えない」
大井川本線では大規模な土砂崩れ現場を含む20カ所が被災。復旧作業を進めていますが、最も早く部分開通できる見通しとなっている金谷-家山間の運行も12月上旬の予定です。
大井川鉄道 広報
加冷英鵬さん:「にぎわいあっての観光鉄道というところもあるので、一個人としては非常に寂しいというか。まずは金谷-家山までの区間の復旧に尽力している。それ以降の区間については関係機関と緊密な協議を続けながら復旧の計画を策定していく」
「夢のつり橋」が渡れない…
川根本町の観光にとって、大きな被害を受けた場所はほかにも…。紅葉シーズンには行列ができるほどの人気スポット「夢のつり橋」です。この観光の目玉も、土砂崩れの影響で渡れなくなっています。
「夢のつり橋」からほど近い、寸又峡温泉街。紅葉の見ごろは近づいていますが、この場所を訪れる観光客の姿はほとんどありません。温泉街にあるこちらの宿では…。
湯屋 飛龍の宿
望月静馬 代表:「きのう(17日)からあす(19日)まで約3日間はもう完全に休業している。夢の吊り橋が渡れないということで。私どもは予約を伺っているが、なかなか予約に結びつかないというのが現状で、思い切ってそういう状況ならと休業している」
代表の望月さんを除いて、スタッフは全員休みに。そのため館内は物音がせず、16室ある客室も全て静まり返っていました。
湯屋 飛龍の宿
望月静馬 代表:「通常10月であれば、稼働率で言えば6割ぐらい。16室でも10部屋とか、それぐらいは使って営業するし、土日だとほぼ満室の状態というのが例年の10月」
Q:シーンとした状況は通常考えられない?
望月静馬 代表:「考えられません。10月11月でこういう状況というのはありません」
寸又峡温泉の協同組合のサービスも行政頼みに
台風の被害が出る前までは、11月の予約は8割ほど埋まっていたそうですが、現在はそのほとんどがキャンセルに。こちらの宿では紅葉の時期だけで年間の売り上げのおよそ4分の1を占めるといい、
その影響は深刻です。
望月静馬 代表:「夢のつり橋に行けない。SLも列車も動いてないというので、(川根本町が)選択肢から外されているのではないかと思う。なので、もう旅行支援があろうがなかろうが以前の問題になっている。これだけお客様がお越しになれない状態が長く続けば、ほぼ売り上げが無いので、自分たちの体力も余力もなくなれば、そういう状況(閉館)も起こりうるかもしれない。そういうところまで来ている」
寸又峡温泉の協同組合では11月1日からレンタカーで訪れた観光客にガソリン代のキャッシュバックを計画するなど、鉄道が使えない中で観光客を呼び込もうと知恵を絞っています。
厳しい現状に直面する中、観光関係者が今最も望んでいるのは行政の対応です。
湯屋 飛龍の宿
望月静馬 代表:「夢のつり橋が通れないのは商売からするとライフラインなんです。これが私たちの生きる糧、商売で生計を立てているので。いつ通れるのか、どんな形で再開するのかが示されていないので、お客様からの問い合わせにも答えられない状況。行政の方には一日も早く夢の吊り橋を通行できるように、お客様が安心してお越しになっていただける状態を早く作ってもらいたいというのが願い」