夜の動物園 暗視スコープでのぞいた動物たちの意外な姿! 「KEEP OUT(立ち入り禁止)」のテープをくぐって園内へ…
愛知県豊橋市の動物園で、夜の動物園を巡るあるツアーが初めて企画されました。その名も「KEEP OUT(立ち入り禁止)」。各地の動物園で行われている「夜の動物園」とは一線を画す、ちょっと危険な香りがする企画です。筆者も参加してみました。(取材・文=三浦徹)
愛知県豊橋市にある豊橋総合動植物公園「のんほいパーク」。動物園のほか、遊園地や植物園、自然史博物館も備えた総合施設です。
この動物園で初めて企画されたのが「KEEP OUT」。営業終了後の動物園を見学するツアーです。なぜ、このイベントを企画したのでしょうか。
●豊橋総合動植物公園 管理グループ 大場駿一さん:
「当園には全国からいろいろな方がいらっしゃいます。もっと特別な体験をしてファンになってもらいたい、コンテンツを増やしたいと思っていました。高価格帯のサービスも企画したいと考え、今回実現しました」
動物園には夜行性の動物もいて、昼間とは行動が異なることはよく知られています。このため、夜の動物園を観察するツアーは全国各地で行われています。のんほいパークでも、夏季に「ナイトZOO」を実施していました。
「ナイトZOO」とどこが違う?
●豊橋総合動植物公園 管理グループ 大場駿一さん:
「ナイトZOOにはたくさんの人に来ていただきました。しかし、夜の動物園でもっとディープな体験ができないかと職員が企画を持ち寄ったところ、『暗視スコープで観察してみたら面白いのではないか』というアイデアが出ました。今は自然史博物館のイベントで開園期間が延長になっています。やるなら今だということで実現しました」
――ナイトZOOとはどう違うのでしょうか。
「ナイトZOOでは、来園者の足元が暗いので、動物を見やすいようにイベント用の照明をたいています。もちろん、動物に配慮しながらですが……。今回のイベントでは、本当の閉園後の動物園を見ていただきたいので、照明はたきません。暗視スコープを1人1台貸し出し、来園者がいなくなった夜の動物園で、動物たちがこの時間に何をしているのかを観察できます。普段は入れない場所に足を踏み入れられること自体がプレミアムです。ガイドとして獣医師も同行しますので、どんどん質問できます」
「KEEP OUT」の料金は3000円。通常の入園料600円、「ナイトZOO」の1600円と比べると高額です。それでも、今回の企画には104件、計238人の応募がありました(1件で複数人の申し込みが可能)。
参加者は抽選で選ばれた10人
10月17日(土)の参加者は抽選で選ばれた10人。内訳は愛知県在住者が9人、静岡県在住者が1人でした。やはり愛知県からの応募が多かったようです。それにしても、参加者10人というのはかなり少ない気もしますが……。
●豊橋総合動植物公園 管理グループ 大場駿一さん:
「今回の企画では、照明がない中で本来の動物の姿を見られることに加え、獣医師がガイドとして同行することもポイントです。専門家にいろいろ聞いてみたいと思っても、なかなか話しかけづらかったり、大人数のツアーだとコミュニケーションが取りづらかったりします。気兼ねなく質問でき、コミュニケーションが取れる人数ということで、10人にしました」
今回巡るのは、「郷土の動物エリア」(ヤクシカ、ニホンザル、ニホンカモシカ)、「オーストラリアエリア」(クロカンガルー)、そして「アジアゾウ舎&バックヤード」(アジアゾウ)です。
安全に観察でき、動物への影響がなさそうな動物を選択
意外と地味な顔ぶれのような気もしますが、なぜこの動物たちを選んだのでしょうか。
●豊橋総合動植物公園 管理グループ 大場駿一さん:
「夜の環境でも安全に観察でき、動物への影響が無さそうな動物を選びました。アジアゾウやニホンザルなど、見やすい場所を選んでいます。鳥はストレスがかかるので、夜の観察には向きません。ライオンはバックヤードが狭く、真っ暗になると見えない場所もあるため危険です。動物への配慮とお客さんの安全、そして見やすさを考えて、今回のコースを決めました」
参加者にも話を聞きました。
●参加者:
・豊橋市から(女性・50代)
「暗闇の中の動物を見られる機会はなかなかないので、見てみようと思いました。ガイドさんがいろいろ説明してくれるというので楽しみです」
・岡崎市から(女性・30代)
「ナイトZOOに来て楽しかったので、今回はそれよりさらに暗いということで興味があります。ゾウのバックヤードに入れるのも楽しみです」
・湖西市から(男性・20代)
「ナイトZOOに行ったことがありますが、そのときは肉眼で動物を見る形でした。今回は暗視スコープを使って観察できるのが楽しみです」
いよいよ立ち入り禁止エリアへ
筆者もこのイベントに参加しました。集合は午後6時。園内はすっかり暗くなっています。
この時間には立ち入り禁止となる動物園エリアに、いよいよ足を踏み入れます。「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープ(事件現場で警察が張る、あのテープです)をくぐると、気分は警視庁捜査一課。
本当に真っ暗で前が見えない
職員の案内で、一行は動物園エリアへ。驚いたのは、本当に真っ暗なことです。当たり前ですが、街灯などありません。はぐれたら、そのまま行方不明になりそう。必死に前の人についていきます。
参加者が10人というのは、行方不明者を出さないためでは……とさえ思えてきます。人数が多ければ、誰かがいなくなっても気づかれないのでは? 怖い……。
暗闇での動物の様子は?
最初に訪れたのは「郷土の動物エリア」。ヤクシカやニホンカモシカを観察します。参加者は一斉に暗視スコープをのぞき込みますが、なかなか動物の姿を見つけられません。ときどき「見えた!」という声が上がります。
ようやく見つけた動物たち。しかし、正直なところ、何か特別な行動をしているわけでもなく、「たたずんでいる」というのが率直な印象です。
続いて訪れたオーストラリアエリアも、同じような感じ。カンガルーも暗闇の中でたたずんでいました。
そんな一行が盛り上がったのが、ニホンザルの獣舎です。肉眼でも動いているのが分かります。暗視スコープを使うと、さらに盛り上がりました。やはり、動いている動物は見つけやすいようです。
本日のクライマックスのゾウ舎
そして、次はいよいよツアーのクライマックス、ゾウです。普段は入れないアジアゾウ舎のビューイングシェルター屋上とバックヤードを見学します。
バックヤードでは、ゾウが「もぐもぐ」と食事中。エサを食べる姿をはっきりと見ることができました。
およそ1時間のツアー。予定されたコースはこれで終了ですが、少し時間があったため、ペンギンの展示場も見学しました。盛りだくさんの内容でしたが、参加者の感想はどうだったのでしょうか。
●参加者(湖西市から・男性・20代):
「暗視スコープではよく見えましたが、あまり動きがなく、なかなか見つけられない動物もいました。ゾウとサルはよく動いていたので見やすかったです」
思っていたものと違っていたが…
今回が初めての実施となったこのイベント。主催者側の手応えはどうだったのでしょうか。ガイドとして同行した獣医師の木谷さんに聞きました。
●豊橋総合動植物公園 獣医師 木谷良平さん:
「私たちも暗視スコープで見る機会はないので、新鮮でした。動物たちがリラックスしている様子を見ることができました。こちらが近寄っても気にせず、エサを食べていたりしていました」
――夜行性の動物は、夜になると動き回るのではないのですか。
●豊橋総合動植物公園 獣医師 木谷良平さん:
「夜行性の動物は本来、暗くなるとエサを探して動き回ることが多いですが、動物園の動物はエサを探す必要がありません。このため、夜行性であっても、この時間はリラックスして過ごしているようです」
思っていたのとは少し違う部分もありましたが、それも含めて貴重な体験でした。
のんほいパークでは、参加者へのアンケートなどを通じて、さらなる新企画も模索しているということです。