平木副知事に聞く『これからの静岡県』 異例の「財政危機」会見から1年…リニア、財政改革、そして静岡の未来とは

 静岡県の財政危機をめぐる”異例の会見”から1年。静岡朝日テレビは、リニア静岡工区の問題など県政の重要な課題を担う、平木省副知事に単独インタビューを行いました。

これからの静岡のあり方は…?(取材・文=髙山優樹)

静岡県・平木省副知事
静岡県・平木省副知事

高市総理の元秘書官が描く県政ビジョン

ーー副知事に就任して1年半経つが?
静岡県・平木省副知事(以下、平木)「静岡のポテンシャルを発揮するベースをつくることができていると思いますね。リニアの問題も一区切りつけることもできたし、AI活用とか、あるいは産業政策、地域未来戦略とか、さまざまな仕込みをしているところなので、これからもう少しポテンシャルを大きく開かせるような、実行段階に行ければいいなと」

 去年4月に静岡県副知事に就任した平木省氏。旧自治省(現在の総務省)に入省後、大臣秘書官を務めていた時の”ボス”は高市総理(当時は総務大臣)でした。

ーー高市総理の印象は?
平木「もう全然変わらないですよね。非常に気配りもされますけれども、やると決めたことはしっかりやると。ご自分でものすごく勉強されますからね」

 地方では岐阜県副知事、鈴木知事が浜松市長の時代には財政部長を務めました。

平木「知事は基本的には企業マインドを持っている人なんですよ。だから、財政健全化についても、要するに財務をしっかり見るってことなんですよね。かつ、これは正しくないとできないという感覚じゃなくて、挑戦しようって感じ。つまらないことはないですね」

リニア工事 着工後問われる県の監視体制

 リニア静岡工区をめぐり7月に鈴木知事がJR東海と、着工の前提となる自然環境保全協定を締結。平木副知事は「対策本部長」として陣頭指揮をとり、30日には工事現場を視察します。

平木「岐阜でもリニアをやってましたけれども、(静岡では)相当程度突っ込んだ対策をJR東海から引き出せたんじゃないかと。あとはこれからが大事で、僕らの仕事は静岡県民の安全と安心を守るということに尽きる。トラブルがあった場合、工事を止めるということは何回も申し上げていますし、モニタリングの体制というのをしっかりとやっていくというのが大切」

ーー国が推進している中で本当に(工事を)止められるのか疑問を抱く県民もいるが?
平木「それはもうしっかりやりますよ、これが僕らの責務なので」

 気になるのは、県とJR東海が7月に結んだ地域振興に関する合意書です。

ーーずばり地域振興とは?
平木「それはやっぱり交流人口だと思いますね。静岡県はかなり立地がいいもんですから、人口流出とかも言われている。一方で、伊豆も含めて(観光客が)足を止めていただいて、消費をしていただくような仕組みを作れるかどうか。ひかり・こだまの効果を最大限発揮し、JR東海と県とか、あるいは流域市町とかが連携して様々なプロジェクトを組んでいくということが非常に大事」

異例の「財政危機」会見から1年 進む行財政改革

 平木副知事が担う、もう1つの課題が県の財政健全化です。

●平木省副知事(2025年10月の発言)「財政危機宣言というレベルまで行っている」

 1年前に行われた”異例の会見”では、4年連続で500億円を超える「財源不足」について副知事自ら説明しました。

平木「行政はわかりにくい言葉で説明することが多いんですよ。基準財政需要額とか実質公債費比率とか…。だから、そういう専門家しかわからない言葉でごまかすんじゃないと。データ・真実は人を傷つけるもので、聞きたくなかったりびっくりしたりすることってあると思うんですけど。色んな反響がありましたし、お叱りもあったけれども、僕としては良かったのではないかなと」

 来年度の当初予算での財源不足は303億円と去年の会見で発表された今年度見込みの640億円と比べると大きく改善される見通しです。

 しかし、こうした改革には痛みも伴います。

 今年度中に予定している190以上の県有施設の見直しでは、県・男女共同参画センター「あざれあ」や各地域の労政会館などの廃止がすでに決まっています。利用者の反発もありますが、思い出されるのは、浜松市にいた時の経験だといいます。

平木「浜松での経験で、とある住民の方が『公民館に暑いからクーラーをつけてくれ』って言うわけです。でも『クーラーつけると1億くらいかかりますよ』と。そういう風に言ったら、住民の方々が『そんな負担を市にはさせられない』と言って、自分たちで扇風機を持ち込んだりとか、いろいろ工夫されだしたんですよ。それって結構重要なことだなと思いまして。コストってあんまり県民の方、利用者の方って意識する機会がないんですよね。それを意識していただいた上で、どういう風にするかということを考えるというのが非常に重要。僕らは行政なので、コストだけではない、『やらなきゃいけない事業』はあるんだけれど、やはり中長期的に見た時に、利用率とか修繕費用とかをトータルで考えた時にどうするかということをしっかりと問わないといけないんですよね。一回我々の考え方を(県民に)お示しして、そしていろんな反応を踏まえて対応していく」

 見直しを行う一方で、県も高市政権の「責任ある積極財政」と同じ姿勢です。

平木「行政って幕の内弁当みたいなもんなんですよ。要するに一定の枠の中に詰めていかなきゃいけないわけですね。総理も『責任ある積極財政』って言っている。それは、市場の信認と積極投資というのを両立させようということなので、我々が言っていることはそんなに変わらないんですよね。海洋DXだとか、空飛ぶ車だとか、市場がないものについてしっかりとこれから投資するべきじゃないかという提案もしている。120億円の未来地域未来基金なんかも作っていますので、そういったことは積極的に投資をしていく」

 国が変わる中で、静岡だからこそできるのは「トライアンドエラー」と言います。

平木「政策立案の中心は国から地方に移ってくる。私も国の役人をやってましたけど、スピード感という意味では現場に近い方が早いんですよね。だから、トライアンドエラーをやるんだったら地方だと。あと、静岡県は非常に大きな県ですし、人口もいて、企業の厚みもある。だから静岡がやることによって世の中を変えられると。そういった中で地方制度がどうなるかっていうと。都道府県・市町村と言って(各地方が)一律じゃないですか。そういうのが柔軟に変わっていくと思うんですよね。だから、日本政府に対しても(静岡県が)提案できるような提案力を発揮していくべきだと思ってますよね」

 地方だからこそできる「トライアンドエラー」は県庁内でもー

平木「国のEBPM(根拠に基づく政策立案)は、後からデータを作っている感じ。私はやっぱりマーケットリサーチをもっとやらなきゃいけないと思います。事前のリサーチですよね。政策を打つ前に、こういうニーズがあるんだという事前のリサーチをするというのは非常に大事だと。だから、外国人政策なんかについても、今調査させてるんですよ。例えばブラジルの方がどこにいて、フィリピンの方がどこにいて、ミャンマー・ベトナムの方が増えているとか…。そういう現実を把握しないで、例えば外国人の日本語教室どうしましょうなんてことは打てないんじゃないのとかね。『(県職員からは)こういうふうに県民のためにしていきたい』と思う熱意というのをすごく感じますし、それは雰囲気としてはかなり明るくなってきているんじゃないかなと」

 未来への投資も欠かさずに行っていきたいとする平木副知事。県では、全国で初めていわゆる「空飛ぶクルマ」の実装に向けた協議会が開かれています。

平木「そうした取り組みというのをしっかりやっていきたいし、やっぱり恐れないでチャレンジするということをやっていければなと」