【リニア】静岡・川勝知事「1合目よりは少し進んだ」「まだ47項目の入り口」 山梨県では沿線初のトンネル貫通も…

 リニア新幹線の建設工事は、静岡県外の沿線各地で着々と進んでいます。一方で県内でリニアを巡る議論の進捗状況について、川勝平太知事は「登山」に例えています。

「1合目よりは少し進んだ」

静岡県 川勝平太知事(10日):「1合目よりは少し進んだかなと」

 リニア中央新幹線の進捗具合を山に例え、こう語った川勝知事。おととし3月の定例会見では、リニア工事をめぐる議論の進捗状況について「とりあえず1合目」と表現していました。国の有識者会議に議論を求めている47項目のうち、水量についてだけ議論していたことが背景にあります。

静岡県 川勝平太知事
静岡県 川勝平太知事

 あれからおよそ2年半。田代ダムの取水抑制案や発生土置き場について本格的な協議が始まっていることに川勝知事は、

静岡県 川勝平太知事(10日):「令和3年3月の定例記者会見から状況は変化している印象を持っている。議論が着実に前に進んでいると受け止めている」

田代ダムの取水抑制案や発生土置き場について本格的協議
田代ダムの取水抑制案や発生土置き場について本格的協議

「まだ47項目の入り口」

 9月には国の有識者会議が開かれ、環境への影響に対する議論をまとめた報告書案が示されています。議論が進んでいるとした川勝知事ですが、川勝知事は一方で、頂上到達には、まだまだ時間がかかることを示唆しました。

静岡県 川勝平太知事(10日):
記者:「(リニア新幹線の進捗は)まだ低い位置にある?」
A.「まだ47項目の入り口という感じ。まだ水の流量の問題がどの程度進んでいるのか、協議されていることは分かっているが、まだ解決されていない。なので、これが解決されれば1合目から前に進んだということになるから、1合目の次は何合目でしょうか?」
記者:「2合目です」
A.「なるほど、そういう認識になるでしょうね」

 依然、静岡県内では大きな進展が無いようにも見えるリニア問題。その一方で、沿線の自治体では様々な動きが出てきています。

国の有識者会議
国の有識者会議

報道関係者向け「試乗会」 山梨県

西尾梓アナウンサー:「こちらはリニア中央新幹線のホームとなる場所です。室内となっているので、暑さや寒さを感じることなく待てるというのがいいですよね」

 連日、走行実験が行われているリニアの山梨実験線。16日、報道陣向けの試乗会が開かれました。

リニアの山梨実験線
リニアの山梨実験線

車内アナウンス「時速500kmに達しました。この後、約1分間時速500kmで走行します」

西尾アナ:「いま時速500kmで走っています。そこまで振動もなく非常に快適です。もっと騒音があるのかなと思っていたが、隣の人と話したとしても声が聞こえるくらい騒音は少ないです」

時速500kmに…
時速500kmに…

沿線で初めて「トンネルが貫通」 山梨県

 同じ山梨県内では…。

 13日、地元関係者や、工事関係者など、およそ160人が見守る中、トンネルの貫通式典が行われました。

JR東海 中央新幹線山梨西工事事務所 渡辺隆所長:「途中300mほど非常に地質がもろい区間があった。その部分は非常に慎重にやった、かなり時間もかけて慎重にやった。安全に無事に掘ることができ、よかった」

「トンネルが貫通」
「トンネルが貫通」

 全長710メートルの「第一南巨摩トンネル」は、実際にリニアが走るトンネルとしては、初めての貫通です。

石上雄基ディレクター:「今いるのはリニア新幹線の品川駅からおよそ123kmの地点です。このトンネルを含め、5つ先のトンネルが南アルプストンネル、静岡との県境までは、およそ17kmです」

石上雄基ディレクター
石上雄基ディレクター

「神奈川県駅」建設現場でコンサート 丹羽社長がトランペット披露

 この翌日。リニア新幹線 「神奈川県駅」の建設現場でコンサートが開かれました。JR東海の音楽クラブや地元の高校の吹奏楽部などが演奏を披露。その中に…。

 トランペットを演奏するのは、JR東海の丹羽社長です。この会場は、地上からの深さおよそ30メートルの場所。駅の建設が進むと、大半が埋め戻されるため、「最初で最後のコンサート」になるといいます。

来場客:「ホールのような感じで、これが実際、将来、土に埋められてしまう場所で、貴重な体験ができたなと思う」

来場客「ここでコンサートをするという発想がすごいなと思いました」

「神奈川県駅」
「神奈川県駅」

 この建設現場では、一般の人が見学できるイベントも行われていました。リニアと住民との”距離の近さ”も静岡県内ではあまり見られない光景です。

JR東海 丹羽俊介社長:「我々のリニアの事業をご理解いただいて、ご支援いただき、そして我々も感謝を申し上げながら、皆様と共に駅を造っていきたい」

JR東海 丹羽俊介社長
JR東海 丹羽俊介社長

 歩調はゆっくりだとしても少しずつ議論が進んでいる静岡県側。ちなみに川勝知事が言及した「登山ルート」を富士山にあてはめると、1合目は裾野市の水ヶ塚公園で、標高およそ1500メートル地点。ただ、水ヶ塚公園を「2合目」と呼ぶケースもあり、富士山においては「1合目」と「2合目」の違いが「あいまい」です。

 リニア新幹線にとっての「10合目」、静岡県での議論が山頂に到着するのは、いつになるのでしょうか。