袴田事件 あす再審初公判 やり直し裁判では何が争われるのか


1966年旧清水市で起きた、いわゆる袴田事件の再審やり直し裁判があす静岡地裁で始まります。事件を振り返るとともに、裁判では何が争われるのか解説します。

 袴田巌さん、87歳。

 1966年、旧清水市のみそ会社専務一家4人を殺害したなどとして、死刑が確定した身です。

 2014年、静岡地裁が袴田さんの再審を認め、袴田さんは48年ぶりに釈放されました。

 一度は再審開始決定が取り消されますが、今年3月東京高裁が
再審を認め、いよいよあす午前11時から静岡地裁で、やり直しの裁判が始まります。

罪状認否は姉のひで子さんが

 袴田さんは長年拘束されていた影響で、精神疾患を患っていて、再審公判への出廷は免除されました。

 代わって姉のひで子さん(90)が罪状認否を行ない、無罪を主張する方針です。

ひで子さん:
「裁判だから、やっているうちにだんだん長くなったりするでしょうけど、1年も延びるようなことはない。来年中には結審すると思う。一番最後の裁判だけは無罪ということを、巌さんに聞かせたいって言ってるけど、本当にそれは聞かせたいと思ってる」

姉のひで子さん

社会部キャップ 難波亮太記者スタジオ解説

石田和外キャスター:
「それでは、社会部キャップの難波記者に裁判のポイントを聞きます。よろしくお願いします。まず初公判はどういう流れで進むのでしょうか。」

難波亮太記者:
「初公判ではまず、事件全体、犯人は袴田さんなのかどうか、検察側、弁護側がそれぞれ主張をぶつけます。その中で罪を認めるのかどうかが聞かれますが、今回、袴田さん本人は出廷を免除されているので、補佐人である姉のひで子さんが無罪を主張する方針です」

石田和外キャスター:
「裁判での争点は何になるのでしょうか」

難波亮太記者:
「再審は袴田さんが有罪なのか無罪なのかの結論を出すものになるのですが、最も大きな争点は犯行着衣と認定された血痕の付いた「5点の衣類」です。この5点の衣類は、事件から1年2カ月後に現場のみそタンクの中から見つかったものです。
発見時には袴田さんはすでに拘束されていたので、5点の衣類は1年以上みそにつかっていたことになりますが、写真で分かる通り、血痕は赤く見えます。
この血痕の色がまさに争点で、
弁護側は「長期間みそにつかったら赤みは消える。ねつ造されたもの」と主張しています。
一方の検察側は「長期間みそにつかっても赤みが残る可能性はある」としていて、再審で弁護側、検察側双方が法医学者の証人尋問を請求しています。

石田和外キャスター:
「色がポイントということなんですね。」

難波亮太記者:
3月の東京高裁決定はこの色について、弁護側の主張通り、
「赤みが消えることは合理的に推測できる」とした上で、
「捜査機関の者が隠した可能性が極めて高い」とまで指摘しています。再審で捜査機関のねつ造まで踏み込むかどうかもポイントです。

石田和外キャスター:
「判決はいつぐらいになりそうでしょうか。」

難波亮太記者:
「当初、年度内の3月27日で審理を終える想定で、12回の期日が示されていました。しかし、弁護団によると証拠調べに時間がかかり、結審は来年4月以降になる見通しだということです。
判決までは結審後、およそ3カ月と言われているので、来年7月ごろに判決言い渡しということになりそうです。」

石田和外キャスター:
「袴田さんもすでに87歳。
年齢を考えると、残された時間も長くないですね。」

難波亮太記者:
「袴田さん以前に死刑囚の再審は戦後4例あり、いずれも検察側が控訴することなく無罪が確定しています。過去の例を見ても袴田さんにも無罪が言い渡される見通しです。姉のひで子さんは、袴田さんに「無罪を聞かせてやりたい」と話しています。裁判所にはひで子さんらの思いに応えるような訴訟指揮を期待したいです。

石田和外キャスター:
難波記者に聞きました。
再審初公判はあす午前11時に開廷します。

難波亮太記者