増える『無縁墓』 連絡つかない親族も…認定までに3年以上 近年人気の『樹木葬』…1年で544区画完売 静岡市のお墓事情
少子高齢化や核家族化が叫ばれる中、今、社会問題となっているのが『無縁墓の増加』です。辞書によると、無縁墓とは、「弔う縁者のない、墓のみがある墓所」、つまり、管理や手入れをする人がいなくなったお墓のことです。
阿隅健一ディレクター:「総務省の調査では、全国の半数以上の自治体で無縁墓が発生しているデータもあります。ここは静岡市が運営している霊園なんですが、この場所にも、このように誰も手入れをしなくなった無縁墓地があります」
総務省の調査によると、公営墓地があると確認できた全国765市町のうち、およそ6割の自治体で無縁墓が発生しています。こうした状況は静岡県内も例外ではありません。静岡市の場合、市営墓地は4カ所あり、区画数は合計で1万を超えています。
その中には…。
静岡市戸籍管理課 飯沼絵理花 主任主事:「無縁墓は2件あり、無縁墓の可能性のある墓については毎年5件ずつほど増えていて、現在は累計で約60件ある」
静岡市の市営墓地でも発生しているという無縁墓。確認ができている2つの墓については今後、市の税金によって撤去作業が行われます。
静岡市戸籍管理課 飯沼絵理花 主任主事
「(無縁墓地は)墓所内の清掃や除草がされずにお墓が荒れてしまうケースがある。こちらは撤去の義務・権利を有する方がいないので市の責任において撤去をする予定」
墓石の撤去に関しては、法律などの規定がなく、管理する自治体にその判断が委ねられています。
ただ、今、静岡市が苦慮しているのは、「撤去の前段階」である「無縁墓の可能性がある墓」への対応です。というのも、使用者が所在不明になってから、墓を撤去するまでにかかる時間は、最短でも3年。「無縁」と認定するまでに、親族の意思確認など、確認事項が膨大にあるというのが現状です。
静岡市戸籍管理課 飯沼絵理花 主任主事:「親族調査というものを行っていて、調査の結果、承継者が存在しない場合は無縁墓として整理をしている。(親族と)連絡が取れない場合もあるし、対象となるすべての承継の意思の確認をしているので時間と労力がかかっている」
Q.どれぐらいの血筋まで調べる?
A.「墓地の利用者と埋蔵されている遺骨から見て3親等以内。両親・祖父母・曽祖父母、そしてその兄弟など、3親等以内の親族、すべての意思を確認するために1年。2年目に、無縁墓として整理する旨を官報公告に1年間掲載し、親族からの申し出がなければ、3年目で墓の撤去となります」
静岡県内でも増えているという跡継ぎのいない“無縁墓地”。日本では一般的に、先祖代々、墓を継承するのが伝統でした。しかし、家族関係の希薄化や、地元を離れて生活する人達も増えるなど、檀家の務めが果たせなくなっている現状があります。
阿隅健一ディレクター:「そうした背景もあり、ここ数年“新しいお墓の形”が選ばれるようになってきています。木の下にお骨を埋める、こちらの『樹木葬』と呼ばれるものです」
静岡市清水区にある日本平メモリアルガーデン。およそ1700区画あるうちの6割が樹木葬だといいます。
日本平メモリアルガーデン 石川衣美さん:「一般のお墓は墓石が立っているが、こちらでは墓石の代わりに小さなプレートを設置して名前がわかるように、どこに眠っているかわかるようになっている。日本の一般のお墓とは違って、洋風のイメージ、公園の中にあるような霊園をコンセプトにしている」
注目集める樹木葬とは?
日本平メモリアルガーデン 石川衣美さん:「お墓業界は数年“樹木葬ブーム”です。特に新しく墓を購入する人にすごく支持されている」
樹木葬とは、シンボルツリーの下に遺骨を埋葬し、「土に還る」「自然に還る」というコンセプトの自然葬です。一代限りで、宗教は不問。この霊園の樹木葬では、夫婦はもちろん、友人同士や兄弟など、1区画に3人まで入ることができます。
日本平メモリアルガーデン 石川衣美さん:「永代使用料や年間の管理料もすべて(料金に)含まれているので、(一般墓のように)後継者に負担がかからないので安心して利用できるのが樹木葬のいいところ」
実際に、国内最大級の墓情報サイトが行った実態調査では、去年1年間で墓を購入した660人のうち、半数以上が樹木葬を選んだという結果が出ています。
購入にかかる費用は、一般の墓の平均価格が152万円なのに対し、樹木葬は67万円と、半分以下に。継承者要らずで価格も安い、「新しい墓の形」が支持されています。
日本平メモリアルガーデン 石川衣美さん:「家族に管理料や寺との付き合いで負担をかけたくないという人も増えている。そういった考えから墓じまいの心配をする必要のないお墓を選ぶ人が増えている」
この霊園におととし完成した樹木葬の544区画は、わずか1年ほどで完売しました。また、現在埋葬されているのは全体の3分の2程度で、残りは、「生前墓地」として事前に購入された分。
「これまでの伝統」か「新たな形か」…。 お墓に対する考えも人それぞれのようです。
富士市出身30代女性:「兄妹がバラバラな所に住んでいるので、これから、(実家の)お墓参りとかしなくなったら手入れもできなくなるからということで、親も樹木葬などを考えていた」
静岡市民60代:「うちは妻と2人で子どもがいないから、うちで終わり。もし、(墓を)建ててもみてくれる人がいないから、今69歳ですけど70になったら考えようと思っている。でもやっぱりね…。難しいな本当に」
静岡市民20代:「自分の親がもしそうなったら、(墓の手入れを)やるんですけど、自分のをやってくれとはあまり思わない。大々的にやりたい人はやればいいし、コンパクトに終わらせたい人は終わらせればいい。自分はコンパクトに」
取材で明らかになった静岡県内のお墓事情。無縁墓地の解決は行政側にとっても少子高齢化時代の課題のひとつになっていきそうです。