新静岡県立中央図書館建設事業 建設工事入札が不調に終わり現図書館の限界が見える中計画が遅れる恐れも
新県立中央図書館に暗雲が立ち込めています。建設工事の入札に参加する業者がおらず、静岡県は再度入札を実施する方針ですが、計画に遅れが出る可能性も出ています。
山﨑琢也記者
「JR東静岡駅前の駐車場として使われているこちらの土地に、新しい県立図書館の建設が予定されています」
JR東静岡駅前の県有地に移転を予定している県立中央図書館。
県の基本設計では、9階建てでおよそ200万冊の蔵書が収められる国内最大級の図書館になります。
1階にはカフェも併設され、地域の交流拠点としても期待されています。
しかし今、その建設に暗雲が立ち込めているのです。
静岡県教育委員会の会見
「入札不調という取り扱いになりました」
県は今年度中の契約を目指して、10月中旬から建設工事への入札を希望する業者を募っていました。
しかし…。
静岡県教育委員会の会見
「建築工事の入札に関する第1報ということで、公告をかけたところ、1社からも手を挙げてもらえなかった」
1社も名乗りを上げなかったことについて県は、建設業界の人手不足などが原因ではないかと見ています。
工事のめどが立たないため、2028年夏完了を予定していた県立図書館の移転も遅れる懸念が出てきました。
現図書館は老朽化が進む
1969年にできた現在の県立図書館を訪ねてみると…
山﨑琢也記者
「図書館1階の書庫に来ています。天井を見てみますと、
無数のひび割れが走っています」
閲覧室に置かれていない本を保存する書庫の天井。
補修はされているもののこんな状態です。
山内小百合副館長:
「このあたりが一番ひび割れのひどい箇所になります。
この上にあります閲覧室の長期的な荷重超過に加えまして、乾燥でしたりとか、経年劣化が原因と調査結果が出てます」
ひび割れが初めて確認されたのは2017年のこと。
これを受けて当時の川勝知事がR東静岡駅に隣接する
県有地への移転を決めたのです。
現在の図書館では移転を前提に、ひび割れの悪化を防ぐため閲覧室の本棚を一部撤去。
読書スペースに作り変えたり、本を間引いたりする苦肉の策を取っています。
山内小百合副館長:
「閲覧室にそれまでは20万冊、本が置いてあったんですけれども、ひび割れが発見されてからこの20万冊を今は10万冊に減らして閲覧室に置いてあります。書架をこう見ていると思わぬ本に出会ったりしますので、そういう機会が減っているということは、大変遺憾に思っています」
老朽化の影響は他にも…
書庫の隅に置かれた除湿器。
空調管理システムが故障しているため、除湿器で本を湿気から守っているというのです。
スペースの問題も
問題は老朽化だけにとどまりません。
山内小百合副館長:
「書庫が13カ所全部であるんですけれども、あまり利用
されていないもの古いものについて、20万冊を段ボール箱につめて、今他の場所で保管をしています」
県立図書館には現在1969年の開館時のおよそ2倍となる95万冊の本が所蔵されています。
館長室を書庫に改修するなどして保管場所を確保してきましたが、それでもスペースは十分ではありません。
蔵書のおよそ2割にあたる20万冊は県の古い施設で保管されていて、県民は見ることができない状況なのです。
蔵書を十分に活用できず、保管場所にすら悩む県立図書館。
今の場所では改善にも限界があります。
山内小百合副館長:
「今のこの建物の状況からして、少しでも早く移転したいなという思いはありますので、なるべく早く完成することを願っています」
県は大手ゼネコンに聞き取りを行い、入札にどこも手を
上げなかった原因をさらに詳しく分析したうえで、再入札に向けた準備を進める方針です。
そして、当初の予定どおり来年2月の県議会に工事契約の議案を提出したいとしています。
ただ、工事を希望する業者は果たして現れるのか。
先行きは不透明です。