県内の小学生は2日間バス乗り放題 静岡県が行った全国初の取り組み
静岡県は12月7日と8日に、県内の小学生を対象とした「バス無料デー」を実施しました。全県レベルでバスを無料にする試みは全国でも初めてだということです。(取材・文=三浦徹)
今回の試みは県や市町、静岡県バス協会などでつくる「ハッピーライド in 静岡プロジェクト実行委員会」が主催して行われました。
静岡県によりますと、対象となるのは、県内の小学校に通う全ての児童、およそ17万3000人です。12月7日、8日の2日間、児童は県内を運行するバスに無料で乗ることができます。
対象となるのは、土日運休となる路線や高速道路を走る路線、空港アクセス線、県境をまたぐ路線を除いた全ての路線です。県内のバス事業者12社の路線バスと27自治体が運営するコミュニティバス、およそ400路線が「乗り放題」です。
市町村やバス事業者などが実施するケースはありましたが、全県レベルでバスを無料にする試みは全国初だということです。なぜこのような試みを実施したのでしょうか?
●静岡県地域交通課 片山広文課長:
「路線バスは利用者の減少や運転手の高齢化などで路線の維持が困難な状況に置かれています。未来にバスを残すためにはバスに乗っていただき、バスの状況を知ってもらうことが大事です」
Q対象を小学生にした理由は
●静岡県地域交通課 片山広文課長:
「将来を担うこどもたちに、バスは地域にとって欠かせないものだと知ってもらって、大人になってもバスを利用してほしい。またこれをきっかけに、普段バスを利用しない大人も子どもと一緒にバスに乗ってもらい、バスの便利さを知ってもらいたいと思って企画しました」
Qバス乗ったことがない子どももいる?
「バスに乗ったことのない子も多いと思う。市町によっては小学校で学習の一環として、バスの乗り方教室が行われているところもありますが、今回をきっかけに多くの子供たちがバスに乗ることを期待しています」
気になるのが今回かかる費用。小学生が使った運賃を県が負担するとなると、かなりの金額が必要になるのでは…。
●静岡県地域交通課 片山広文課長:
「バス事業者のほうから無料でやってみようとご提案がありました。なので小学生が使った運賃を、後で県が負担するということはありません」
この2日間は小学生は対象路線であれば、どこで乗ってもおりても無料。何回でも乗れます。小学生が専用のリーフレットを運転手に見せると、バスに乗ることができます。リーフレットは学校を通じて全ての児童に配布されたということです。リーフレットはA4サイズ、持ち歩くには大きい気もしますが?
●静岡県地域交通課 片山広文課長:
「A4サイズですが、三つ折りできるように印が付いています。3つ折りにすればポケットにいれることもできます。あまり小さくても、なくしてしまう恐れもありますので」
ホームページではあまりバスを利用したことがない人のために、バスで行けるテーマ別のモデルコースも紹介しています。
モデルコースは「ふれあい(動物園、水族館)」「学び(美術館・博物館)」「遊び(遊園地、テーマパーク)」「癒し(温泉など)」の4つのジャンルに分かれ、合計29のプランが紹介されています。
例えば「ふれあい(動物園、水族館)」の中では、目的地を静岡市駿河区の日本平動物園にしたバスのコースが紹介されています。
午前9時20分に「東静岡駅南口」バス停を出発すると、午前9時30分に「日本平動物園」バス停に到着。午後4時15分まで動物園で過ごし、午後4時35分に「日本平動物園」バス停を出発。「東静岡駅南口」バス停には午後4時51分に到着します。
実際にモデルコース通りに旅行する人もいそうです。
また、今回の企画に合わせて、静岡市歴史博物館や浜松市動物園など、静岡県内の40の施設も全面協力。リーフレットを見せるとオリジナルグッズがもらえるなど、さまざまな特典が用意されています。
今回、実際にバスを利用した人に静岡駅前で話を聞いてみました。
●利用客:
・母親(40代)
「用事があって浜松からきました。これからバスで県庁に行きます。バスは普段は乗らないですね。子供の分だけでも無料になれば、親も助かります」
・女の子(小学校3年)
「普段はバスで通学しています。いつも同じバスに乗っているので、今回いつもと違う路線に乗るので緊張しています」
目立ったのが子ども同士で出かけているグループです。
●利用客(女の子3人組 小学校4年):
「友達同士できました。『静岡科学館る・く・る』に行って、これから帰るところです」
Q普段バスにはのる?
「あまり乗りません。バス無料デーだったので乗りました。楽しかったのでまた使ってみたい」
●利用客(男の子と女の子 小学校3年):
「『静岡科学館るくる』にきました。静岡駅では家に帰るバス停の乗り場を確認しました」
「無料だからバスできました。バスに乗るのは久しぶりなので楽しかった。ずっと無料だったらいいのに」
静岡市の街中では、リーフレットをもつ親子連れの姿が見られました。
●静岡県地域交通課 片山広文課長:
「この1回にとどまらず、ふだんからバスにのってもらうような意識啓発が必要です。地方はマイカー利用が多いですが、使えるときはバスも使ってもらえば、温暖化防止の効果もある。ライフスタイルの転換を促したい」
静岡県は、今回のこころみでどういった効果があったかなど、アンケートを通じて分析し今後に役立てたいとしています。