【特集】全国で静岡市にしかない! 「プラモニュメント」って何?

 国内最大規模の模型展示会「静岡ホビーショー」が毎年開催されるなど、静岡市は「プラモデルのまち」として知られています。その静岡市で、注目されているのが「プラモニュメント」です。(取材・文=三浦徹)

 1月10日、日本郵便株式会社東海支社は静岡市の「プラモニュメント」の写真を用いたオリジナルフレーム切手の販売を開始し、静岡市役所では難波喬司市長に切手が贈呈されました。静岡市民にはおなじみの「プラモニュメント」ですが、それ以外の人には耳慣れない言葉です。「プラモニュメント」って何でしょう? 

●静岡市産業振興課 プラモデル振興係 石川直哉係長: 
「静岡市はプラモデルの製造出荷額が日本一です。世界に誇る地場の産業ということで、私たちもプラモデルを推しています。静岡市は、メーカーや行政だけでなく、いろんな方々とプラモデルによって街を活性化させていこうという『プラモデル化計画』を推進していて、そのシンボル的な事業がこの『プラモニュメント』です」

撮影スポット 自分がプラモデルのパーツに(JR静岡駅南口広場)
撮影スポット 自分がプラモデルのパーツに(JR静岡駅南口広場)

静岡市は「プラモデルのまち」

 実は静岡市は、日本全国のプラモデル製造品出荷額の8割以上を占める「プラモデルのまち」。静岡市では「プラモデル」の魅力を発信するとともに、活用した官民一体のシティプロモーションである「静岡市プラモデル化計画」を2020年から進めています。「プラモニュメント」とはプラモデルとモニュメントを掛け合わせた造語で、実は日本全国でこれがあるのは静岡市だけです。

●静岡市産業振興課 プラモデル振興係 石川直哉係長:
「静岡駅を降りても街中にもなかなかシンボル的なものがない。そういう中でもともとあるもの。例えば静岡駅の公衆電話があった場所に、公衆電話をプラモデル風のモニュメントにして設置していく。そうすることによってここはプラモデルの街なんだということを来訪者、観光客に感じていただこうと設置をしていています」

「プラモニュメント」は2021年に、静岡市が初めて4基を設置しました。その後は民間企業などが主体となり、現在設置されている13基のうち、8基は民間企業などによるものです。

 この場合「プラモニュメント」はそれぞれの団体が費用を負担し、デザインから制作、設置までを行います。内容によって異なりますが、費用負担は高いものだと数百万円に上るということです。

 静岡市から補助金も出るということですが、なぜ、費用をかけてまで「プラモニュメント」を制作するのでしょうか?

●静岡市産業振興課 プラモデル振興係 石川直哉係長:
「皆様、『プラモデル化計画』に協力したいという思いとともに、かなりの金額を負担しても、自社のプロモーションとして価値があると判断されているんだと思います」

実際に郵便ポストとして使用(静岡市役所静岡庁舎)
実際に郵便ポストとして使用(静岡市役所静岡庁舎)

「プラモニュメント」をプロモーションに活用

「プラモニュメント」は、製品をプラモデル状に分解し、構造を知らない人が見ても、組み立てると完成形が想像できるパーツ構成になっています。それぞれの団体ならではの工夫を凝らしていて、自分たちのプロモーションとして活用しているということです。

 たとえば、JR静岡駅コンコース内にNTT西日本静岡支店が設置したものは「公衆電話を分解している」イメージで作られています。「プラモニュメント」に組み込まれた2台の公衆電話は実際に使用することができます。もともとここには公衆電話が置かれていました。

 また駿府城公園には、徳川家康が身に着けたとされる甲冑をモチーフにしたプラモニュメントが設置されています。

公衆電話として使える(JR静岡駅コンコース内 NTT西日本静岡支店設置)  
公衆電話として使える(JR静岡駅コンコース内 NTT西日本静岡支店設置)  

デザインには厳しいガイドラインが…

 基本的にプラモニュメントのデザインは各団体にお任せですが、そこには静岡市の設計ガイドラインに沿った厳しいルールがあります。ガイドラインで求められているものは「安全に十分留意した構造」や「容易に破壊できない構造」など一般的なものもありますが、最も重要なのは「プラモデルらしさ」。

 プラモデルを構成する部品「パーツ」。パーツがついている外枠の「ランナー」。ランナーとパーツが繋がる「ゲート」。パーツ番号を示す「ナンバータグ」などが必要になります。業界外の人には高いハードルですが、デザインは事前に静岡市が監修するということです。

徳川家康が身につけた甲冑(駿府城公園 城代橋)
徳川家康が身につけた甲冑(駿府城公園 城代橋)

広告業界でも高い評価

 静岡市の「プラモデル化計画」は広告業界でも高く評価されています。2021年には日本サインデザイン賞金賞、2023年には自治体としては初めて、広告電通賞の「総合賞」を受賞しました。

●静岡市産業振興課 プラモデル振興係 石川直哉係長:
「民間のみなさんにこれだけ金額をかけていただいているので、それなりのメリットがあるようにしたいと思っています。首都圏のメディアを中心に取材も多く受けています。地元の人は慣れているけれど、外から来たお客さんは大体写真をとっていきます。観光資源としても活用したい」

裏には本物の灰皿が(JR静岡駅北口喫煙所 日本たばこ産業設置)
裏には本物の灰皿が(JR静岡駅北口喫煙所 日本たばこ産業設置)

新たな「観光資源」に

 1月現在、市内に13基ある「プラモニュメント」ですが、3月までにあと2つ増える予定です。静岡市では「プラモニュメント」をめぐるスタンプラリーを実施するなど、新たな「観光資源」としても期待されています。

 現在、静岡駅周辺に集中している「プラモニュメント」ですが、静岡市はその数を増やし、ゆくゆくは市の全域に設置したいとしています。

新幹線の「座席」と「行先表示器」(静岡駅ビルパルシェ食彩館前 静岡ターミナル開発設置)
新幹線の「座席」と「行先表示器」(静岡駅ビルパルシェ食彩館前 静岡ターミナル開発設置)