制度のあり方が問われる 新型コロナワクチンによる後遺症に悩む患者を対象とした国の救済制度

新型コロナワクチンを接種した後、体に異変

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 新型コロナワクチンによる後遺症に悩む患者を対象とした、国の救済制度。申請のハードルが高いことなどから、制度のあり方が問われています。ワクチンの接種後、体調が崩れてしまったと訴える女性を取材しました。

 28歳の上田かのん(仮名)さん。2021年7月、2度目の新型コロナワクチンを接種した後、体に異変を感じたと言います。

●上田かのんさん(仮名・28):
「接種した会場でめまいや吐き気に襲われてベッドから起き上がれなくなってしまった倦怠感がひどい日があって、しまいには発熱が起きてしまってそれからずっと不調が続いた」

 数日後から再び症状が現れ、3年半経った今もなお、針を刺した左腕に痛みやしびれが出るなど、体の不調が続き、服薬による治療を続けています。

●上田かのんさん(仮名・28):
「なるべく左手だけに任せないように両手で持ったりとかして落とさないように気を付けています」

 幼いころは空手を習い、活発に過ごしていた上田さん。しかし今は、接種後に現れた「感覚過敏」の症状に配慮し、光の強さや音量を調整しなければならず、趣味を楽しむ時間は短くなってしまったといいます。

●上田かのんさん(仮名・28):
「自分の趣味とか、元々絵を描いたり、ゲームしたり、旅行するのがすごく大好きだったが、趣味を制限しなきゃいけなくなったことで、それに伴った精神的負担などが大きかった…」

 複数の病院で何度も検査をしたものの、異常は見つからず。退職に追い込まれたあと、すがる思いでたどり着いた、後遺症専門外来を設けるクリニックで、「ワクチンによる長期副反応」の診断を受けました。

●上田かのんさん(仮名・28):
「絶望感はずっとあった。ようやく日常生活で気を付けることとか、症状を緩和するための対症療法とかをしてもらえるようになった」

「予防接種健康被害救済制度」の認定に高い壁

 2024年2月、医療費や障害年金などの給付が受けられる国の「予防接種健康被害救済制度」を申請しました。しかし半年後に出た結果は「否認」。接種から発症までの期間が長く、因果関係が認められないことが理由でした。

●上田かのんさん(仮名・28):
「こんな数行の文章では(否認の理由が)到底わからないし、正直、たった数行の説明で済まされてしまうのが納得いかなかった」

 全国ではこれまで、1万3000件あまりの申請に対し、認定されたのはおよそ7割。(※3/7現在:申請件数 13096件、認定件数 8959件)

 専門家は、申請のハードルの高さが課題だと指摘したうえで判断の透明性を高めるべきだと話します。

●名古屋大学 小島勢二名誉教授:
「申請が通るかどうかもわからないのに、それだけの(書類にかかる)高額なお金を出すかと言うと、諦めてしまっている人が多いと思う」「どういったレベルで認定をしているのか、認定するような医学的な根拠がしっかりあるのか/公明性、透明性がどうなっているかということもはっきりさせないといけない」

 こうした負担から一度は申請を諦めた上田さん。救済制度が、今も苦しむ患者に手を差し伸べるものであってほしいと訴えます。

●上田かのんさん(仮名・28):
「頼みの綱である制度に申請しようにも、申請するまでのハードルの高さとか、それに伴った経済面で苦しくなったとか、そういったものが苦しかった。決してワクチンそのものを否定したいわけじゃない。しかし現状これだけ苦しんでいる人も存在するから、起きてしまったことには救済してほしい」

制度のあり方が問われる 新型コロナワクチンによる後遺症に悩む患者を対象とした国の救済制度