漁協「シラスが全くいない」 不漁の原因は…専門家「黒潮が流れる位置も原因か」 一方で好転の兆しも 静岡・富士市
駿河湾を代表する海の幸「シラス」。3月21日に漁が解禁となってから21日に2カ月を迎えました。

静岡県富士市の田子の浦港。こちらでは4月の水揚げ量がおよそ10トンと好調な滑り出しだったものの、5月は一向にシラスが獲れない状況が続いているといいます。
田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「(13日は)全く網を使わないで帰ってきちゃって、獲れないということで、2日間休漁して、きょう2日休ませた海に出る」

この日、シラスの水揚げを期待して調査に出る船に番組も乗せてもらうことに。
田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「2日休ませたから期待。期待でしかない。最近イワシだらけなので、イワシとかサバとか。そういうシラスより大きい魚ばかりなので、海がこの2日間で変わってくれればという期待」

午前5時半、合図とともに漁船が走り出します。海の浅いところから深い場所までシラスがいないか探していきます。魚群探知機に赤く映る2つの群れ。シラスのような小さな魚がいると、右側だけに表示されるといいます。
田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「(水温が)18℃からシラスが好ましい適正水温。だけどいま親(イワシ)になっているから、獲れない。いくら適正温度でも。自然の事だし、シラスだって大きくなるわけだから」

探すこと20分、漁師達は何かを見つけたようです。
田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長
Q.いま何かあった?
A.「いま何か分からないけど、魚が跳ねたからちょっと眺めてた」
Q.結果どうだった?
A.「カツオかマグロの子ども」
Q.シラスではなかった?
A.「シラスではない」
残念ながらシラスではなかったようです。その後も探し続けますが、船が出てからおよそ30分。

田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「僕らは東に来て、シラスが全くいない。西の方の船もいないよということで」
この日もシラスは見つからず、網を使うことなく戻ることに。期待していただけに、現実を突きつけられてしまいました。

田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「海を休ませて期待して行ったけど、イワシだらけの海だから期待していても現実は違った。シラスはいなかった。網も使わず、他の船も網を使わない」
また、海に出ても成果がないことで、“コスト”も不安材料となります。
田子の浦漁協青壮年部 望月敏部長:「捕れなきゃ燃料払えないから。大変ですよね。厳しいですね。このまま続いていったら。シラスが来てくれて、獲った方がいい。安定的に獲れればそれに越したことはない」

漁協食堂では冷凍と釜揚げで
この日は新たにシラスを獲ることができなかった一方で…。
堀優奈アナウンサー:「田子の浦にある食堂では、シラスを求めて県内外から多くの人が訪れています」

田子の浦港漁協食堂では、取れたてのシラスを提供することができない状況のため、冷凍していた生のシラスと釜揚げシラスを使ったハーフ丼などを販売しています。
冷凍していたものと言っても田子の浦で獲れたシラス。その味は折り紙付きです。

三重県から父40代息子6才
Q.味はどう?
息子:「おいしい」
父:「インターネットで調べて、シラスが有名ということでぜひ食べてみたいと」
東京から60代男女
女性:「臭みもなくおいしい」
男性:「祖父が漁師だったので、小さいころから生シラスを食べていたのですごく好き。なので懐かしくきょうはいただきました」

絶賛の声が上がる食堂。それでも取れたての生シラスのどんぶりが復活することを望む声も聞こえてきます。
裾野市70代:「本当は富士山盛り食べたかった。シラスいっぱいの。昔のように子どもの頃のように、(シラスが)たくさん獲れるといいなと思う」
富士市70代:「富士も富士、田子の浦(から来た)」
Q.地元の方にとってシラスはどう?
A.「必ずあるもの。だからシラスが獲れなくなっちゃうと、本当に寂しい」

なぜ シラスが取れない…好転の兆しも
静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋課 岡田裕司上席研究員:「県内の7港のシラスの水揚げ量が、3月下旬から4月30日までで446トンということで、ちょっと低調な出だしになっているかなと思われます」
シラスを研究している県の水産・海洋技術研究所によると、県内7つの漁港では、漁解禁から1カ月間の水揚げ量が去年同時期の6割という結果でした(去年759.7トン/今年446トン)。

なぜ各地で不漁が続いているのでしょうか。
静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋課 岡田裕司上席研究員:「はっきりとはわかってはいないが、一つは黒潮の流れている位置、シラスが好漁になる時の黒潮の流れている位置というのがあるが、今そのルートになっていない」
いっぽうで、気象庁は「2017年8月から過去最長7年9カ月続いていた黒潮大蛇行が終息する兆しがある」と9日に発表しました。それによってシラスも増えてくるのでしょうか?
静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋課 岡田裕司上席研究員:「黒潮がどの位置を流れるかっていうのが非常に大きなルートになってきますので、大蛇行が解消したからといって、すぐにシラスの漁獲が上がると、そういったことはどうかなというふうに今のところは考えている」

一方で、こんな良い兆しもー
静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋課 岡田裕司上席研究員:「駿河湾内で4月にですね、かなり多くの卵が確認されておりまして、去年はほぼ0に近い状態だったのが、今年数1000のレベルで出ています」
去年同時期には確認できていなかったカタクチイワシの卵が、今年は多く確認されているといいます。
静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋課 岡田裕司上席研究員:
Q.卵からシラスになるまでどのくらいの期間を要する?
A.「大体1カ月ぐらいから、もうちょっとぐらいかかるということなので、そう考えますと、5月の下旬ぐらいから上がってきてくれればいいなと今のところは考えている」
来年1月14日まで続くシラス漁。静岡の海の幸をめぐってこの先、明るいニュースは聞こえてくるのでしょうか?
