浜名湖養鰻125年の粋を結晶化 年輪のようなコクに旨さが宿る 浜松市「うなぎの佳川」
浜松市中央区船越町の「うなぎの佳川(かがわ)」は、来年で創業50周年を迎える、まさに“地元の矜持”と呼ぶにふさわしい一軒だ。ここで味わいたいのが、浜名湖養鰻125年の粋を結晶化した「でしこ」。新ブランドとして登場したこのウナギは、身が厚く、脂のりが穏やかで、調理に高度な技術を要求する。焼きに使うのは、遠赤外線効果で内から熱を伝える溶岩石。これが白焼きをふっくら、皮目をパリッと仕上げる秘訣だ。「蒸し」の工程が入るのは関東風の真骨頂。蒸すことで余分な脂を落とし、身をやわらかく整える。完成するのは「でしこ御膳」。ふっくらと焼き上げられた“でしこ”が丸ごと一尾、ごはんとともに。タレは創業時から継ぎ足され続けてきた秘伝のもの。あっさりとした甘さの奥に、年輪のようなコクが宿る。三度、四度とタレにくぐらせて焼き上げるたび、旨味が層のように積み重なる。口にすれば、そのやわらかさにまず驚き、皮の香ばしさに思わず目を閉じる。


この店でしか出合えない逸品が「関東関西食べ比べ重」。蒸してから焼く関東風と、蒸さずにじっくり焼き上げる関西風が一膳に収まる。関西風はたまり醤油の香ばしさが際立ち、身の力強さが引き立つ。関東風はやわらかさと繊細さが命。食べ進めるほどに、ふたつの“文化”が舌の上で交錯していく。

そしてもう一品。蒲焼重に白焼きを添えた「白蒲重」。白焼きは、シンプルに見えて最も奥深い。蒸しで膨らみ、焼きで香り立つ。そこに塩やわさびを添え、酒の盃を傾ける時間は、料理人と客の信頼が作り出す静かな贅沢だ。

締めくくりには、意外性のある「海老サラダ」。ウナギ屋の脇役にして、密かにファンを生む一皿。さっぱりとした口当たりが、ウナギの余韻をさらに引き立てる。

ウナギを知りたいなら、ここを訪れればいい。食べ終えた後の静かな満足が、その証拠になるはずだ。

うなぎの佳川
浜松市中央区船越町53‐4
TEL 053‐464‐5300
営 11:30~15:00(L.O.14:30)/17:00~21:00(L.O.20:30)
休なし
Pあり