本を借りるだけじゃない もっと知りたい! 図書館のウラ側を精巧なジオラマで再現 静岡市立中央図書館

静岡市の図書館では普段見ることができない、図書館のウラ側を知ることができる展示が開催されています。目玉は職員の女性が1カ月をかけて作ったジオラマです。(取材・文=三浦徹)

静岡市葵区の静岡市立中央図書館の玄関ホールに5月から展示されているのは「もっと!しずとしょ!!~図書館のヒミツ大公開~」です。

本の貸し出しだけではない、図書館のお仕事について解説しています。

●静岡市立中央図書館 井柳京子さん:
「今回はもっと図書館のことを知ってもらいたいという思いで企画しました。図書館の仕事といえば、カウンターで本を借りて返して、あとは予約して取り寄せてもらって、そういうイメージがあると思いますが、それはほんの一部の仕事です。私たちは見えない部分でこんなこともやってますというのを知っていただきたいと思います」

本を借りるだけじゃない もっと知りたい! 図書館のウラ側を精巧なジオラマで再現 静岡市立中央図書館

パネルで展示された「仕事のヒミツ」のコーナーでは、「カウンターでの仕事」「バックヤードの仕事」に分けて、職員の様々な仕事について解説。表に見える仕事より、実は裏側の仕事のほうが多いことが分かります。資料を探しやすくする工夫や本が並ぶまでの裏方作業、購入する本の選び方や図書館間の資料輸送などを分かりやすく紹介しています。

ケース内に展示された「書庫のヒミツ」では、「ソノシート」というビニール製のレコードが付いたものや手のひらサイズのミニ本、懐かしい昭和のテレビ雑誌など書庫に眠る珍しい資料が解説入りで展示されています。珍しいものばかりですが、貸出可能なものもあるそうです。

仕事のヒミツ
仕事のヒミツ

また「修理のヒミツ」では知られざる図書館の本の修理について解説。

●静岡市立中央図書館 井柳京子さん:
「やはり図書館の本はいろんな方が利用するので、何か不測の事態があった時に、ちょっとページがとれちゃったりとかどうしても傷んでくる。その本を新しく買いかえる前に、もう少し寿命を延ばしてあげたいという気持ちがあるので、うまくボンドをつけてきれいに貼ったりします。また本の修理にセロハンテープを使うと、1年くらいたつと変色してしまうので、修理専用のテープで修理します。私たちは修理の研修を定期的に受けていますが、やはり慣れた人が専用の道具を使って修理するのがいいと思います」

「蔵書点検のヒミツ」では行方不明の本を捜索する気の長い過程が描かれています。「蔵書点検」とは資料が正しい場所に収まっているか、行方不明の資料がないか、破損し利用できない状態になっていないかを確認し整理する作業です。

●静岡市立中央図書館 井柳京子さん:
「中央図書館では1週間ほど休みをいただきまして、ちょうど蔵書点検が終わったばかりです。蔵書点検とは、1冊1冊資料のバーコードを読み込んで、それが私たちのデータ上利用可能になっているものと同じかどうかをつけあわせる作業です。データはあるけど、本はないというものがすごくたくさんあるので、その本のリストを出してそれを探しに行きます。最終的にみつからないときはデータを『うちでは見れない』という形で修正します。毎年必ずやっています」

ーー結構、行方不明の本はあるのですか?
「ありますね。どうしてそうなってしまったかは分かりません。誰かが持って行ってしまったのかもしれませんし、どこかの本の間に挟まっているのかもしれません。行方不明の本は結構あります」

修理のヒミツ
修理のヒミツ

今回の展示で一番目を引くのが、中央図書館のジオラマです。ガラスケースの中に展示されています。

●静岡市立中央図書館 井柳京子さん:
「地下に書庫があるんですけど、普段利用者さんたちが入れない場所なので、そちらがどんなふうになっているのか、見てわかるように手作りしたジオラマです」

ジオラマは中央図書館の1階と地下の書庫を再現。書棚やカウンターだけでなく、普段立ち入ることができない地下書庫などのバックヤードまで再現しています。

図書館の地下と1階を再現したジオラマ
図書館の地下と1階を再現したジオラマ

このジオラマ、その道のプロが作ったものかと思いきや、実は図書館職員の手作り。司書の清水ひとみさんが設計から組み立てまでを1人で担当しました。

●静岡市立中央図書館 清水ひとみさん:
「近所の小学生がよく生活科の授業で図書館に見学に来ます。館内を案内すると地下の書庫が一番盛り上がります。『今しか入れないよ』と案内するとすごく喜んでくれます。一般のお客様でもその部分に興味のある方はいっぱいいると思います。写真を撮って『こういう風になってます』というよりは立体化してみたら面白いかなと思いました。小さい方とかも『へー』という感じで見てくれるかなと思って作りました」

ーーもともとジオラマは得意だった?
「趣味でドールハウスとか簡単なものは作っていましたが、この規模のジオラマは初めてです」

書棚は発泡スチロールの板に紙をはって作りました。図書館のパソコンで展開図を作って、それを印刷。板に貼って本棚にしあげたということです。

清水さんは本来の業務の傍ら、図書館の作業室で一人こつこつとジオラマを作っていたということです。完成までには1カ月ほどかかりました。

地下の書庫も再現
地下の書庫も再現

●静岡市立中央図書館 清水ひとみさん:
ーーこだわった所は
「書架の色をできるだけ本物に近づけたいと思いました。1階は木、地下の電動書架はベージュ色なので、できるだけその色に近づけたいと思いました。カウンターの木の質感にもこだわりました。本当は2階も作ろうと思いましたが高さ的にガラスケースに入らなかったのであきらめました」

カウンターは木の質感にこだわり
カウンターは木の質感にこだわり

図書館では、清水さんが作ったジオラマの完成度があまりにも高いため、今回の展示が終わっても保存し、様々なイベントで展示したいとしています。

図書館の裏側がよくわかる「もっと!しずとしょ!!~図書館のヒミツ大公開~」は7月13日まで静岡市の中央図書館で展示されています。
(休館日はHPでご確認ください)

普段は入れない地下の書庫
普段は入れない地下の書庫