あっさり、しかし深い 「鈴木商店(仮)」が始める令和ラーメン新章 静岡市
静岡市葵区相生町、静岡鉄道「日吉町駅」から徒歩1分。街の喧騒を少しだけ背にして、ふと顔を上げると現れる「鈴木商店(仮)」という看板。名前の後ろに付く(仮)は、どうやら冗談ではなく正式な店名らしい。暖簾をくぐると、ふんわりと魚介の香りが鼻をくすぐる。まずは1番人気の「Aセット」を注文すべきだろう。九条ネギと花かつおが踊る「かけらーめん」に、香ばしく焼いた豚バラ肉が3枚のる「焼肉丼」が付く、まさに腹と心を同時に満たす構成だ。「かけらーめん」のスープは澄み切っている。魚介系の透明なスープに浮かぶ旨味の輪郭は、繊細でありながら力強い。合わせるのは、まるできしめんのような平打ちの中太麺。モチモチとした食感がスープと好相性。飾り気がないぶん、素材と調和の技が際立つ。そして「焼肉丼」。タレに漬け込んだ豚バラを網で焼き、焦げ目をしっかりとつけることで甘辛ダレの香ばしさを引き立てるのがこの店の流儀だ。濃厚にしてやさしい、そんな丼である。

さらに「あっさりつけめん」も面白い。貝出汁のスープに麺を潜らせて一口。次は別椀の酢を効かせたつけダレにくぐらせる。まるで懐石のような段取りのある一杯。一皿で二度、旨味の濃淡が味わえる設計になっている。

担担麺は、あっさりスープに黒ゴマの濃厚なコクを効かせた味噌ベース。甘辛の挽き肉が、もちもち麺の間にしっかり絡みつく。辛さに旨味を重ねた設計で、余韻が心地よい。

ラーメン屋でチキン南蛮が人気というのも面白い。香ばしく揚げた鶏に自家製タルタルソースをたっぷりとかけ、山盛りの九条ネギをのせる。脇役に見えて、しっかり主役を張れる一皿だ。

大盛りはラーメンもごはんも無料。だが、腹を満たすことだけを目的とする食とは明らかに一線を画している。鈴木商店(仮)は、令和のラーメン新章を小さな駅前で始めている。

鈴木商店(仮)
静岡市葵区相生町7‐18
TEL 054‐297‐5779
営 11:00~14:00/17:30~23:00(L.O.22:30)
休 日曜日・第4月曜日
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